月あかりをくぐって入り込んだ場所、遠慮なしにけむる空気を支配しているウェスのコード、親指からの倍音に反応する孤独な拍手たち

　席について駆けつけ三杯、ロングアイランドなんとかをオーダーオーダーオーダー、素晴らしいやつらは滅茶苦茶なやつらばかりぞ、みな倒れるとはなにごとぞ、と握りしめたレモンがグラスにしたたればたちまち上機嫌になる今夜も孤独が不思議

　月の位置で深まる街の夜、酔うことに酔う、そのような酔いすら飲み干してもっと酔ったとしても決して沈むことのないよう、ウェスのコードの魔法に耳を傾けて律儀に酔う
 
　エモーションを使い果たしてしまったかなしみを、この空っぽの両手で数えるかなしみを、ギャルソンに借りたクレヨンでナフキンに書き殴って書き殴っていきおい叩きつけてもクレヨンはクレヨン

　グラスが汗をかいている、あらたなる酔いを追加する、ふたたび現在と今夜に耳をすます

　ウェスの親指が鳴らすセブンスの阿片にけむりの輪をかけるは今夜のみならず夜たちに、輪舞するは争いなき愉楽の調べ、真夜中をさす針が、とまれなんと美しい