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『いのちの唄』op. 3-3
ぼくのいのちはどこへ向かっていくだろう
ぼくのいのちはどのようにしてここにいるのだろう
ただあるいのち
ずっとこのままかは分からない
動いていく雲は途中まで追えても
いつのまにか姿をくらます
いってらっしゃい、ぼくのいのち
今日はいろいろみせてくれてありがとう
少し休んでいていいよ
ずっとこちらの世界にいては
干からびてしまうよね
ときどき帰って来いって?
そうしないと
ぼくの言葉とかいう生
『いのちの唄』op. 3-2
ぼくはいのちを恐れる
いのちは食い食われる
いのちあるぼくが原っぱへ行けば
雀蜂が飛んできて
森へ足を踏み入れれば
熊と鉢合わせるかもしれない
ぼくが野原のいのちを踏むとき
いのちの餌食となる覚悟はあるか
『いのちの唄』op. 3-1
動きつづける
ぼくがいなくても
夢のなかでも法螺貝に気づくぼくの鼓膜
大きな影に驚くぼくのいのち
銀杏の木に留まったのは鷹か
ぼくたちは同じいのち
いのちのせめぎあい
ぼくの首と蟻の通り道
衿無しでいのちがぶつかる
いのちは一緒にいられる
ぼくの指に蜻蛉が泊まるように
あれこれつまらないことを考え出すと
飛び去ってしまう
ぼくのいのちが他のいのちと一緒にいられるのは一瞬
前奏曲『奥会津』op. 2-3
過去としてしか現れない自分
未来になら生まれようという自分は
果たして生きているのか
裸足で歩けば掃除屋が刺す
いつ終わるか分からない僕の身体
今ここにいる証しを僕は作れない
聴いてもらって初めて僕は碑となる
焚き火の前、ピアノの後ろ、草の裏、土の上で
僕は碑になる
得体の知れないこの有機化合物の塊に
しばし足を留めるもう一つの塊
塊はくっつき、離れ
碑もまた生まれ、朽ちてゆく
前奏曲『奥会津』op. 2-2
いくばくかの時が経ち
こんなことを言う人が現れるかもしれない
ここにかつて炭で遊ぶものがいた
その手には音楽が宿っていた
この碑はいつだか
手が手のもとへ、足の指が土へと還った
その証しだと
『ツリーハウスの唄』op. 1
地上5メートル板のうえ
お日さまわた雲いっしょになって
スポットライトあて回る
きらきら光る松の葉は、お日さまの光まっすぐ浴びて
ひらひら踊る楢の葉は、わたのリズムでステップ踏んで
しんと座るうりはだかえでは、ひとり静かにベース奏でる
地上5メートル板のうえ
ことばの森から葉っぱがひょっこり
あたらしい森つくるため
ページをめくるとあらわれて
耳をすますとやってきて
でもできる森は一瞬かぎ