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数学はどこまで「普遍的」か?
昨年12月17日のZEN大学(仮称)(設置認可申請中)・株式会社ゲンロン共同新公開講座第4弾・加藤文元×川上量生×東浩紀「真理とはなにか──数学とアルゴリズムから見た『訂正可能性の哲学』」
では、東さんの『訂正可能性の哲学』を巡って多くのことを議論し、大変有意義な時間でした。
この鼎談は6時間以上にも及ぶ長いものでしたが、その中でももっともホットだった話題の一つに「数学の正しさは絶対的か」とい
このマガジンの名前『数学する精神』について
(このポストは本マガジンの説明として書いたものです。マガジン内の記事ではありますが、どなたでも最後までお読み頂けます。)
確か2007年の1月くらいのことだったと記憶している。とある大手の出版社の編集者さんから、突然、京都の私の研究室に電話があった。聞けば、私の知り合いの配偶者さんのご友人とかで、初めてお話しする方である。内容は仕事の話で、なんと新書の執筆依頼であった。
今でこそ一般向けの数学
空間とは何か(4-1) 非ユークリッド幾何学発見における空間(前半)
非ユークリッド幾何学の発見とは一体何なのか?
ユークリッドの平面幾何学はユークリッド平面、すなわち我々が普段現実のものとして普通に理解している「平らな面」に基づいて展開されている。すなわち、それは我々の視覚的所与としての平面というわかりやすいモデルと、そこで観察される幾何学的現象がもとになっている。ユークリッド『原論』第1巻の定義や公準(第五公準(=平行線公理)も含む)などといった、いわゆる仮定
偽カマンベールチーズと現代数学
「数学でどのような研究をしているのですか?」と質問されることは多い。その度ごとに死ぬる思いだ。
なぜ、現代数学は説明しづらいのか?抽象的すぎるから?確かに。しかし、それ以上に、身近な事物を使って説明できないという事実が決定的だ。抽象的でもそれなりに身の回りのものと少しでも関係があれば、そこから落ち着いて話を紡ぎ出すことができる。しかし、数学ではそれすら難しい。リジッド幾何学の定理なんて、どうやっ
数学における発見のプロセス
「空間とは何か」という連載を進める中で、さまざまな時代のさまざまな人たちによる空間概念について考えている。特に興味深いのは、非ユークリッド幾何学を発見したとされている3人、ガウス、ボヤイ、ロバチェフスキーの空間概念である。後者の2人は実際にその発見を公に宣言したわけだが、その当時は非ユークリッド幾何学の空間モデルはなかった(技術的・思想的に構成できなかった)。それなのに、どうして彼らは非ユークリッ
もっとみる空間とは何か(3) ユークリッド幾何学の空間概念
古代ギリシャにおける明証性の変革
「証明する」というギリシャ語δείκνῡμιの原義は「光のもとにさらけ出す」であるという。古代ギリシャでは、例えばタレスの幾何学5命題にもあるように、その初期の段階から幾何学の事実が命題化されていたが、その論証は視覚的な直観に訴えるものが多かったと考えられる。
(タレスの幾何学5命題の謎については、すでにこのnote有料マガジン内の記事でも扱っていますので、興