【前編のあらすじ】

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【夜神月(キラ)のもうひとつの診断】

「デスノートと精神医学: 夜神月(キラ)とLの精神医学的診断とIQ(知能指数)について(前編)」では、夜神月(キラ)が自己愛性パーソナリティ障害であるという説を紹介しましたが、小生は違うと感じます。

人格(パーソナリティ)とは、本人の気質(生まれながらの個性)が環境によって陶冶された結果であり、作中のような急激な変化はパーソナリティ障害には該当しないと感じます(器質性パーソナリティ障害や薬物中毒による人格変化は別ですが…)。

そこで、夜神月の急激なキャラ変(性格変化)を説明できるとある”症候群”をご紹介いたします！

それはヒューブリス症候群(Hubris syndrome)です。

この耳慣れない症候群は別名傲慢症候群とも呼ばれており、権力者がだんだん高慢になっていくことを指します（ただし正式な医学用語ではありません）。

ちなみにヒューブリスとは神に対する侮辱や無礼な行いへと導く自尊心や自信を意味する言葉です。

「僕は新世界の神になる」とほざいた夜神月(キラ)にはピッタリの言葉ですよね…。

ヒューブリス症候群はDavid Owenの定義がとてもわかりやすいため、今回の記事ではOwenの診断基準を用いて、夜神月(キラ)を診断したいと思います。

14の行動のうち、5つ(5,6,10,12,13)はDSM-IV(米国精神神経学会の診断基準)のパーソナリティ障害の基準の中に出てこないという意味で「ユニーク特性」と呼ばれています。

Owenによると同症候群と診断するには14の項目中のうち少なくとも3つを満たし、そのうち少なくとも1つがユニーク特性に含まれることを必要としております。

夜神月(キラ)の場合14項目中9項目、ユニーク特性のうち3項目が該当するためヒューブリス症候群にばっちり該当しますね。

夜神月は元々は正義感に溢れ、とても思いやりのあった人間と小生は思います(前編で紹介した”綺麗な夜神月”を見れば明らかですよね？)。

つまり夜神月は”サイコパス”や”自己愛性パーソナリティ障害”とは真逆の性質の持ち主であり、それがデスノートというチートアイテムを手にしたため傲慢(ヒューブリス)症候群に陥った…、というのが小生の診断です。

もう少しわかりやすく説明しましょう。

良くも悪くも夜神月は正義感が強い理想主義者です。

そんな彼が神の力...、否、死神の力を手にしたら、厨二病をこじらせちゃいますよね😅？

"天狗の高転び"という言葉がありますが、まさに夜神月(キラ)は"高転びした厨二"…、と言えるのではないでしょうか？

↓映画版も面白かったですね！

【夜神月(キラ)とLのIQはいくつ？】

さて、ここからは本記事のもうひとつの重要パート、夜神月(キラ)とLのIQについて考察しましょう。

IQとはIntelligence quotient(知能指数)のことを意味し、その人の頭の良さを示す一つのバロメーターです。

もちろんIQは能力の一側面しか表さないため、参考程度の数字ではありますが…、

気になりますよね？キラとLのIQがどれくらいなのか…！

ちなみに歴史上の偉人の推定IQは…

…らしいです(米国の心理学者Catharine Cox Milesによる推定値)。

しかし、IQの分布が正規分布に従った場合、IQ200以上の人が出現する確率は1000億人に一人だそうです…。

人類誕生から現在までの累積人口は1080億人(ちなみに現在の人口は80億人)といわれているため、IQ200を超える人物が4人もいるというのはちょっと考えにくいですよね…😅(話盛っていますね？)

要するにIQ200以上の頭脳は、もはや漫画の中の世界と思ってくださいな＊。

(＊ちなみに上記の推定IQの計算方法が不明であるため、現在主に使用されている偏差値IQとは単純比較できないことを付言しておきます)

作中、キラとL二人の「頭の良さ」を物語るエピソードがあります。

それは、キラこと夜神月が東応大学の入学式に参列した時のことです。

東応大学では入試成績がトップの新入生が"新入生代表挨拶"をするのが恒例ですが、なんとこの時の挨拶が異例の「二人同時挨拶」！

その理由は二人（夜神月とL）とも試験で全教科満点だったとのこと…💯

この「東応大学」は「東京大学」をモデルにしていると思いますが、色々調べてみたところ今までに東京大学の二次試験で全教科満点をとった学生はいないそうです。

つまり二人とも今まで東京大学に在学したことのある学生達(ノーベル賞受賞者も含めて)よりも頭がよい可能性があるわけです…(すごい！)。

では、東京大学を卒業した人で最高のIQはいかほど…、と調べてみましたが東京大学出身のガチ天才のIQはわかりませんでした。

代わりに…、と言ってはなんですが「東大王」というTV番組に出演している某タレントのIQは165だそうです。

このタレントも東大二次試験を満点で合格したわけではないので、キラとLいずれもIQは165以上はありそうですね。

しかし、「キラとLはIQ165以上です！」とドヤ顔されても正直皆様も納得しないですよね？

そこで可能な範囲でもう少し深堀したいと思います。

IQの計算方法は現在臨床で用いられているウェクスラー式以外にも生活年齢(実年齢)と精神年齢の比を基準とする比IQという計算方法があります。

作中の二人の精神年齢を推定する方法ですが…、決定的なものはありません。

しかし二人のやっていること…、すなわち「探偵業」を生業にするという点に着目すると、ある程度精神年齢を想定できるかもしれません。

例えばLの出身地であるイギリスでは私立探偵になるのに資格不要ですが、「Security Industry Authority(英国のセキュリティ協会)」は私立探偵の資格取得の要件を「18歳以上」としております。

前述の通りLはノベライズ版では8歳頃「第三次世界大戦を未然に防いだ」という武勇伝を持っております。

つまり、Lは8歳時点では一人前以上の探偵すなわち18歳以上の知能はあったわけです。

この事実から、Lの当時の知能指数(IQ)は…、

知能指数(IQ)=(18/8) x 100 = 225

もちろん、18歳の探偵の多くが「第三次世界大戦を未然に防ぐ」という偉業を達成することは不可能なので、おそらくはそれ以上の精神年齢であったことが推定されます。

8歳時点のLの知能指数は225以上…、まさに漫画の世界ですね。

一方、夜神月(キラ)が探偵のような推理力を発揮したのはLとの接触後…、すなわち17-18歳以降です。

計算すれば、

知能指数(IQ)=(18/17~18) x 100 = 100~106…、

つまり、夜神月(キラ)のIQは100以上(ドヤ😤)！！

… うーん、この計算だと夜神月(キラ)は普通すぎますね…😅

↓話はそれますが、TVドラマでIQ246〜華麗なる事件簿〜というのがあったそうですね。主演の織田裕二の天才っぷり、見てみたいですね！

【鹿冶の考察】

前編後編に分けて人気漫画「DEATH NOTE」の登場人物、夜神月(キラ)とLについて精神医学的診断およびIQについて考察しました。

二人の精神医学的診断については、漫画「DEATH NOTE」を読めば、比較的容易に結論に辿り着くとは思いますが、IQに関してはすみません…、ここまでが小生の考察の限界です😖

従って二人のIQに関する考察では異論を認めます…。

他に夜神月(キラ)とLのIQについて興味深い考察がある方、是非おしえてくださいな😭

<キラとL、どっちが有能？>

さて、しばしばDEATH NOTEファン界隈で議論となりますが、「二人の天才キラとLどっちが有能か？」という問いは、本記事においても避けては通れないテーマです。

先ほどの計算だと(異論はありましょうが)、LのIQは225以上、夜神月(キラ)のIQは100以上ということになると、なんだかLのほうが有能っぽいですよね？

しかし、物語では「キラ vs L」の結末はキラに軍配が上がったので、この意味においてはキラのほうが勝る…と言えるかもしれません。

両者とも神あるいは悪魔の頭脳をもつ天才と言って過言ではありませんが、果たしてどちらが有能なのか…!?

…と、自ら問題提起をして何ですが、はっきりいって「天才の比較ほど意味のないことはない」とお伝えしたい…。

それは一体、何故か…!?

そもそも天才とはさまざまな分野における傑出した人物であり、その性質は一つの物差しで測ることは難しいのです。

例えば天才学の泰斗ヴィルヘルム・ランゲ=アイヒバウムの言葉を借りると、「天才たちに一致点を見出すことは困難」であり、例えば情熱的なゲーテと虚なニュートンを、禁欲家のキルケゴールと放蕩者のオスカー・ワイルドを、快活なモーツアルトと苦労人のベートーベンを同じ物差しで比較することは不可能なのです。

作中たしかに二人は頭脳戦を繰り広げますがLは推理で、夜神月(キラ)は謀略で相対したので実は二人の対決は「探偵 vs 策士」という異種格闘技戦と言えます。

しかし、キラとLを「天才」という観点で比較することは無意味…、とは言うものの小生なりに答えがありますのでご紹介いたします。

まず先ほどの推定IQのところでお伝えしたように、キラもLも正常人の水準を遥かに凌駕しております。

そして、二人の頭脳バトルは互角と言えまが、ひょっとすると推理のスピードはLよりも夜神月のほうが若干上かもしれません。

事実本作の「ヨツバグループ事件」ではLよりも夜神月の方が「偽キラ(火口卿介)」に近づくことができましたよね？

この事件は、夜神月が死神の力を放棄した後に発生した為、DEATH NOTE(デスノート)というチートアイテム無しで夜神月はLと推理対決をしました。

しかも当時の夜神月は大学に入学したばかりの18-19歳。一方、Lは作中の正確な年齢は不詳ですが24-25歳と言われております。

この年齢差を加味すると、先ほどの「知能指数(IQ)=(精神年齢/実年齢) x 100」ではありませんが、夜神月のほうが伸び代があるように感じます。

また推理力だけでなく、夜神月(キラ)はコミュニケーション能力に長けており、房中術でも心得ているかの如く女性を虜にします…。

さらに周囲からの人望も厚くカリスマ性が備わっておりますよね(しかもイケメン！)。

何が言いたいかと言うと、夜神月はLにはない”ソーシャルスキル”がとても高く、この点においては圧倒的に夜神月のほうが優れております。

すなわち、総合力という観点ではLよりも夜神月のほうが有能と考えるのが妥当と思います。

↓天才学の泰斗、ランゲ=アイヒバウム Wの翻訳本です！

<DEATH NOTEの社会的影響>

精神医学とは少し話が逸れてしまいますが、DEATH NOTEに関してもうひとつ小生が気になることを紹介いたします。

ご存知の方もいると思いますが、DEATH NOTEは日本だけでなく海外でも人気を博し、最近ではハリウッドで実写映画化されました(評価はいまひとつだったようですが…)！

世界中に「DEATH NOTE」ブームが起きたわけですが、実は海外では社会問題化されたことがあります。

それは、「DEATH NOTEの模倣」です。

日本で類似の事件は報道されておりませんが、なんだか海外(特に米国)では大事(おおごと)になったようですね…。

DEATH NOTEおそるべき！

ところでこれらの事件を見て思ったのですが、DEATH NOTEに名前を書いて処分を受けたのは多くが中学生〜高校生のようですね。

そう考えると、夜神月の精神年齢って中学〜高校生ぐらいでは…、と今更なながら思ってしまいます😅(やっぱり精神年齢は高くないかも?)

↓当時これが米国で発売されていたら、模倣犯が増えていたかも😱？

<キラは正義か？悪か？>

最後に全く精神医学とは関係ありませんが、これまたDEATH NOTEファン界隈でいまだに熱い「キラは正義か？悪か？」論争について小生の考えを述べたいと思います。

本作は端的に言えば「デスノートという恐ろしい力を手に入れた青年が独善的な理想のために人々を殺していく物語」であり、夜神月(キラ)も最後は悪事がバレて惨めな死に方をします。

しかし、作中で…、

と記載されております。

ここだけを見ると、「夜神月(キラ)やるじゃん！」「夜神月(キラ)が正しい！」と思う方も多いようです。

しかし、夜神月(キラ)は自らの理想のために一体何人殺害したのでしょうか…?

"世界殺人件数ランキング"によると、190カ国における平均殺人件数は2440件…。単純計算すると世界で46万件が毎年起こっております。

この他にも凶悪犯罪として強盗、強姦、放火などが含まれましょうから、ひょっとすると夜神月(キラ)は数年間で100万人以上殺しているのかも知れません。

一個人による大量殺人…、これには流石にドン引きします…。

これらを踏まえて、みなさまはキラは正義だと思いますか？それとも悪と思いますか？

小生は精神科医であり、物事の善悪をジャッジする立場ではありませんが、この「キラは正義か？悪か？」という問いについてはひとつ明確な答えを持っております(キリッ)。

【まとめ】

【参考文献】

1.DEATH NOTE. 大場つぐみ, 小畑健, 集英社.

2.American Psychiatric Association. Autism Spectrum Disorder: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM‑5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:50-59.

3.American Psychiatric Association. Narcissistic personality disorder: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM‑5), 5th ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2013:669-672.

4.Malignant Narcissism in Tsugumi Ohba’s Death Note: Should we Empathize with the Criminally Un-Empathic? Srivastava AA & Opler DJ, Academic Psychiatry, 2020

5.Do Private Investigators Need a License in the UK ?

6.Hubris syndrome. Owen D, Clin Med, 2008

7.Early mental traits of three hundred geniuses (genetic studies of genius series). Catharine M Cox, 1926

8.世界・殺人件数ランキング

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