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超短編戯曲・小説

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超短編戯曲・小説を不定期に書き綴ります。
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記事一覧

【才の祭】クリスマスケーキ(300字)

【才の祭】クリスマスケーキ(300字)

父「誕生日か。息子よ、お前はいくつになったんだ?」

子「5歳だよ、お父さん」

父「もう5歳か。じゃあ、誕生日だからお祝いするか」

子「わーい、じゃあ、クリスマスケーキ食べたい」

父「おい、おい息子よ、誕生日だぞ」

子「あれ? そうだっけ?」

父「ボケてるんじゃないか?」

子「違うよ。誕生日とクリスマスが一緒なんだよ」

父「あれ? そうだっけ?」

子「お父さんこそボケてるんじゃない

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【才の祭】クリスマスプレゼント(300字)

【才の祭】クリスマスプレゼント(300字)

母は悩んでいた。

一度もクリスマスプレゼントをもらった事がない。

今まであげてきたのだから、これからは息子からもらってもいいだろう。

隣の奥さんは、プレゼントにハワイ旅行をもらったというではないか。

今年こそはもらってやる、母はそう決意していた。

クリスマス当日。

母「息子よ、今日何の日?」

息子「土曜日。」

母「他には?」

息子「さぁ?」

母「この親不孝者! お前は一度だって

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【超短編小説】11月11日、雨(300字)

【超短編小説】11月11日、雨(300字)

毎年7月7日しか、織姫と彦星は会えずにいた。

同情した神は11月11日にも会えるよう提案した。

神「お前達も反省したようだから、年に2回会えるようにしてやろう。」

織姫「えっ、マジで?」

織姫(心の声)「デートに来ていく服がない。もうGパンとTシャツでいいかな。でも、レストラン予約してたらどうしよう? ああ、会うのめんどくさい。」

織姫「えっと、彦星さんにお任せします。」

彦星「えっ、

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自己紹介

自己紹介

新しい読者も増えてきましたので、改めて自己紹介いたします。

小川 功治朗

石川県金沢市出身。大学在学中より俳優、演出、舞台監督として関西小劇場を中心に活動。その後上京し、劇団青年座研究所実習科を経て、舞台のみならず、映画、TV、CMなどにも進出し、活動の場を広げる。09年、舞台ユニット「K.W.G.P.」を結成し、劇作・演出をつとめる。劇場公演だけではなく、神社、寺院、BARなどでのシアター外

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【超短編戯曲】文化の日(300字)

【超短編戯曲】文化の日(300字)

文化について考える夫婦がいた。

夫「今日は文化の日だから、文化的なことをしよう」

妻「もうしてるわよ」

夫「何をしてるんだ」

妻「寝転んで、漫画を読んでる」

夫「漫画かよ」

妻「漫画も立派な文化よ」

夫「もっと芸術的なことだよ。美術館とか」

妻「美術館に行ってどうするの?」

夫「絵を見るんだよ」

妻「それから」

夫「何か美味しいものでも食べる」

妻「じゃあ、美味しいもの食べ

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【超短編小説】まつり(300字)

【超短編小説】まつり(300字)

まだこの世に祭が一つしかなかった頃の話。

三度の飯より祭が好きな男がいた。

祭の前日、男は興奮で眠れなかった。

明け方うとうとしてしまい、目が覚めた時には祭は終わっていた。

後の祭、男は途方に暮れた。

一年間楽しみにしていた祭が終わってしまったのだ。

男は発想を変えることにした。

祭は終わったのではなく、まだ始まってはいないのだと。

そこから男は毎日お祭り騒ぎだった。

だが、一年

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【超短編戯曲】少年と海(300字)

【超短編戯曲】少年と海(300字)

少年は海を見たことがなかった
少年は母に尋ねた

少年「ねぇ、母さん海ってどんなもの?」

母「すごく大きいものだよ。」

少年「終わりはないの?」

母「どんなものにも終わりはあるさ。」

少年「他には?」

母「そうだね。しょっぱいものだね。」

少年「おっきいけど終わりがあって、しょっぱいものが海なの?」

母「そうだね。」

少年「なんだ、人生とおんなじだね。」

母「そうかもしれないね。

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【超短編小説】ころがるいし(300字)

【超短編小説】ころがるいし(300字)

石は転がり続けていた。

雨が振ろうが、風が吹こうが、毎日転がり続けていた。

だが、それは自分で考えての行動ではなく、ただ自然に身をまかせているだけであった。

ある日、石は思った。

「自分は何故転がり続けるのだろう?」

そう思った時、石は再び転がりたいと思える日まで、転がることを止める決心をした。

雨が振ろうが、風が吹こうが、石は微動だにしなかった。

しかし、自然に身をまかせて動かされ

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【猫と帽子の創作】我輩は猫である(300字)

【猫と帽子の創作】我輩は猫である(300字)

吾輩は猫である。名前はまだない。

ずいぶん経ったが、未だに名前はない。

気分転換に、色々試してみることにした。

人間はよくオシャレをする。

最近だと、眼鏡か帽子だろう。

真似をしてみよう。

人間は、吾輩たちの真似をよくする。

こちらも真似をしてもいいだろう。

まず眼鏡。

悪くない。

悪くないが、耳が上にあるせいか、耳に眼鏡をかけられない。

ずっと上を向いていなければいけない。

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【超短編小説】劇作家の苦悩(300字)

【超短編小説】劇作家の苦悩(300字)

劇作家は悩んでいた。

台本がまだ1ページもできていないのである。

逃げようか?

駄目だ。家のローンも残っている。

書くか?

それができればこんなに悩むことはない。

私を苦しめているものはなんだ?

昔はこんなに苦労しなくても書くことができた。

たとえ朝まで飲んでいても、次の稽古までには台本ができた。

そうだ、明日の稽古の読み合わせを延期すればいいではないか。

駄目だ。初日まで

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【超短編戯曲】秋休みくん リターンズ(300字)

【超短編戯曲】秋休みくん リターンズ(300字)

春休み「ああ、毎日まだ暑いのに、夏休みくんはどうして楽しそうなの?」

夏休み「それは、暑いからさ。」

冬休み「いいな、僕なんていつも寒い思いをしてるよ。」

夏休み「もっと季節をエンジョイしちゃいなよ、ウィンターヴァケーション。」

秋休み「休みがあるだけマシだよ。」

夏休み「君たち、そんなことで悩んでないで、もっと輝こうじゃないか。」

秋休み「どうして?」

夏休み「だって、太陽がまぶし

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【超短編戯曲】秋休みくん(300字)

【超短編戯曲】秋休みくん(300字)

春休み「もうすぐ冬休みだね。」

冬休み「楽しみだ。」

秋休み「あの前々から思ってたんですが、休みを少し分けていただけないでしょうか?」

冬休み「秋は過ごしやすいから。」

秋休み「そんなこと言ったら、春休みはどうなるんですか? 私に引けをとらないくらい過ごしやすいじゃないですか?」

春休み「確かに。」

秋休み「でしょ?」

春休み「夏休みくんはどう思う?」

夏休み「いいんじゃん、どっち

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【超短編戯曲】猫の手も借りたい(300字)

【超短編戯曲】猫の手も借りたい(300字)

助手「先生、ついに猫の手を借りる実験に成功しました。」

先生「実験が成功するとは、犬も歩けば棒に当たるだな。」

助手「そんな実験は犬も食わぬと言ってた、犬猿の仲の研究室の奴らいい気味だ。」

先生「そんなもの負け犬の遠吠え。」

助手「これで私も一犬前としてやっていけます。」

先生「この研究室の成果は私の手柄だ。犬が西向きゃ尾は東。尾を振る犬は叩かれずと言う、ここはひとつ。」

助手「私はこ

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【超短編戯曲】魚屋殺人事件 最終章(300字)

【超短編戯曲】魚屋殺人事件 最終章(300字)

魚屋が脱走 追いつめる警部と刑事

刑事「もう網にかかった魚だ。」

魚屋「来るんじゃねえ。雑魚が。」

警部「ゴマメの歯ぎしりだな。」

刑事「ここは僕が。大船に乗ったつもりでいて下さい。」

魚屋「ちくしょう。」

警部「あぶない。」

飛び掛かる魚屋 警部が身代わりとなる

刑事「警部。」

警部「まさかサバ折りを仕掛けてくるとは。」

魚屋「エビでタイを釣るってやつだ。魚屋をなめるな。」

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