プルーストか、プルースト以外か。
「今世で読むべきか、読まざるべきか」と、実は10代から悩んできた本がある。マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」である。
そんな大げさに今世をかけて悩むぐらいなら、さっさと手にとってしまえばよかったものを、一旦手にとればそのまま10年ぐらい他の本が読めなくなりそうな切なさに、若い頃は克てないままに、うじうじと来てしまった。
結果、マドレーヌの香りから邂逅するシーンや、見出された時の下りなど、有名なシーンがもう自分の大切な一部になっているというのに、本編は知らないという