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#166 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(12月28日〜1月1日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


12月28日(月) 映画館、○割埋まれば収益プラス!?

1895年のこの日、フランス・パリでリュミエール兄弟が発明した世界初の映画であるシネマトグラフで、初の商業公開が行われたことに由来した、「シネマトグラフの日」です。

シネマトグラフってなんだ?という話ですが、世界で最初に複数人で見れる動画を投影できる機械のことです。

映画のものとになる技術としては、1893年にエジソンが「キネトスコープ」を発明しています。これは覗き込む形で1人でしか見ることはできませんでした。

それを大人数で見れるようにしたものが今回の「シネマトグラフ」であり、「映画の誕生」とも言われています。

さて、映画産業については主に興行収入の推移について、以前、12月4日(金)の「E.T.の日」で取り上げておりますのでご興味あればご参照ください。


まず、足元の映画館の状況ですが、経済産業省が毎月発表している
第3次産業活動指数」で「映画館」の指数をみると、

2020年1月:97.2
2020年4月:2.3
2020年5月:1.3
2020年6月:20.2
2020年9月:64.6
2020年10月:105.1

10月急増しているのは、そう、鬼滅公開による効果ですね。すごい…


さて今回は、映画館の収益構造を調べてみました。

まず、全体像から。デロイトトーマツさんのHPの映画業界に関するレポートから「映画ビジネスの3つの機能」のチャートを転載します。

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この興行、というところが映画館に当たるわけです。

収益構造ですが、「消費者行動研究」に分析資料がありました。

それによると、1スクリーン1回上映あたりの固定費は9,836円!変動経費単価は1,008.7円。それに基づく損益分岐点となる座席占有率は7.32%!!

平均的な座席数200の映画館で、15人入ればブレイクイーブンということです。

ちょっと(というかかなり)驚異的な数値でした。

算出根拠を以下に掲載します。

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で、実際どうなのか?ですが、そのデータもありました。
調査に協力した大手シネコンの実際のデータだそうです。

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これによると、最も低い平日の金曜日のデータで、9.8%、最も多い日曜日で、29.9%となっていますので、十分に採算が取れていることが分かります

映画館、結構儲かるんですね。。。

ただ、ご案内の通り、IMAXやMX4D(シートが振動し風などの特殊効果付!)といった新しい技術が次々と開発されている中、競争上、設備投資が重荷になることも考えられます。

→日本でスクリーン数トップはイオンエンターテイメント。そのほかにも、ローソン子会社のローソンHMVエンタテイメントといった小売業の興行網への参入が目立っているが、彼らが参入する理由はなんだろうか?


12月29日(火) 「国境の長いトンネル」は工期9年!?

1929(昭和4)年のこの日、上越線の土樽~土合の清水トンネルが貫通した「清水トンネル貫通記念日」です。
全長9,704mの当時日本最長のトンネルで、7年の歳月とのべ240万人の工事動員を費して完成しました。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」の冒頭の文章が有名な川端康成の「雪国」。この「長いトンネル」こそ、清水トンネルです。

関東地方と北陸地方の地図を思い浮かべていただくと、東京から新潟の間に横たわるのが、谷川連峰です。

東京から新潟へ行く場合、高崎から長野を経由するか、福島を回って会津若松を経由するか、しか方法がありませんでした。

清水トンネルが開通したことにより、それまで11時間かかっていた東京ー新潟間が4時間短縮され7時間になったそうです。

当時は建設技術も未発達でなるべくトンネルを掘る距離を短くする必要があり、そのためにはなるべく高い位置から掘り始めることになります。
当然、高い位置まで列車を登らせる必要がありますが、登れる勾配というのがあります。そこで、線路を螺旋状に敷設することで勾配を緩くする方法(ループ線)がとられました。今でも地図で確認することができます。

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この清水トンネル、9年の歳月と今の金額で150億円相当の建設費がかかったとされていますが、その後、上越新幹線のために掘られた大清水トンネルは複線で距離も22.2kmと約2.3倍となっています。ちなみに総工費は660億円です。

→新幹線開通に伴い、清水トンネルはローカル線の扱いとなり、1日の運行本数も少なく、メインは貨物列車となっている。一方で維持コストは相応にかかっており、全国でこうしたインフラは多くあると思われる。今後どのように扱っていけば良いだろうか?


12月30日(水) 銀座線は「地下鉄の父」と「強盗慶太」の合作

1927(昭和2)年のこの日、上野~浅草に日本初の地下鉄(現在の東京地下鉄銀座線)が開通した「地下鉄記念日」です。

日本で最初の地下鉄である、銀座線。この成り立ちは、当時の鉄道という最先端の産業をめぐる弱肉強食といっても良い資本主義の当時の厳しさを垣間見ることができる物語でもあります。

登場人物は二人。早川徳次と五島慶太です。

まず、早川徳次。彼は日本で初めての地下鉄を作った人物です。
早稲田大学卒業後、南満州鉄道に入社後鉄道院に転職。その後、東武鉄道の社長である根津嘉一郎に見出され活躍します。そして大正3年に欧州訪問の際、イギリス、ロンドンの地下鉄に感銘を受け、日本でも必要だと考えるようになります。

東京の地盤が軟弱であること、事業性などに不安を示され、私営での建設を決断するものの、資金調達に苦労します。彼は、地層を調査したり、交通量調査を行ったりして技術的にも事業的にも問題がないことを示し、免許を取得、建設を始めます。途中関東大震災に遭うなど大変な苦労をし、開業に漕ぎ着けました。

一方の五島慶太。こちらは東急の生みの親ということで早川より遥かに有名でしょう。数々の伝説(?)がありますが、ここでは、地下鉄に関わるところだけお伝えします。

彼は渋谷に東横百貨店を開業します。ところが当時の渋谷はまだまだ田舎。なんとか一等地に進出したい。そこで、三越の乗っ取りを狙います。それに三井、三菱という財閥が対抗し、資金源を絶たれます。

その後、彼が狙ったのが早川が率いる地下鉄だったのです。渋谷から新橋まで地下鉄を作り、早川の作った浅草から新橋の地下鉄と接続することで都心への足掛かりとすることを狙ったのです。

五島は渋谷から新橋への地下鉄の工事を進める一方で、地下鉄株の過半数を買い占め、早川を追い出してしまいます。

流石に強引なやり方に世間から批判が起こり、「強盗慶太」とあだ名する者もありました。

このように、今の銀座線は浅草から新橋までを早川が、渋谷から新橋までを五島がそれぞれ作ったものなのです。

なお、両者が鍔迫り合いをしている間に五島の路線が新橋まで開通しますが、早川が接続を拒否したため、一度降りて地上に出て乗り換える必要があったそうです。今でも昔の新橋駅が残されているそうです。

いかがでしょう?当時の方が今より資本主義がむき出しだったことが窺えます。

なお、銀座線の成り立ちには、今の「メトロ」と「都営」の二つが分かれてしまった理由にも繋がる経緯があります。そこについては以下が分かりやすいかと思いますのでご紹介します。ご興味があれば。

また、五島慶太については、こちらをご紹介します。

→明治、大正、昭和初期の日本、今に比べてアグレッシブに思えるエピソードが多く見られます。また、今回取り上げた二人ともがいわゆる官僚から民間に転じ、多くの仕事をしています。これにはどのような時代背景があったのだろうか?


12月31日(木) 実は伸びてる?そば業界

毎月最終日は「そばの日」です。

大晦日といえば年越しそば。ということで、そば店について調べました。

まず、そば店が外食業界の中でどのような位置付けにあるか見てみましょう。なお、統計上は「そば・うどん店」で一緒にされていますので、ご容赦ください

一般社団法人日本フードサービス協会による「外食産業市場規模推計」によると、令和元年(2019年)の推計値で、「そば・うどん店」は1兆3,133億円の市場規模を持ち、飲食店カテゴリにおいて7.4%を占めています。

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長期トレンドで見た「そば・うどん店」の市場規模推移がこちら。青い線が「そば・うどん店」なのですが黄色の外食全体が減少傾向にあるのに比べると健闘していることが分かります。

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2017年までのデータでも外食全体と比べて伸びています。

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(出典:社団法人日本フードサービス協会厚生労働省


全体では市場が伸びていることが分かりました。

そば・うどん店の数はどうでしょう?
厚生労働省「飲食店営業(そば・うどん店)の実態と経営改善の方策」(平成26年9月)と、総務省「経済センサス活動調査」(平成30年3月28日)によると、

平成13年 35,086事業所
平成21年 32,992事業所
平成28年 25,347事業所

15年間で3割弱、1万近く減っています。

1事業所あたりの従業員数は、以下の通り。

平成13年 6.0人
平成21年 6.0人
平成28年 6.9人

これは、小規模な家族経営の事業所が減り、チェーン店が増えていることによるものと考えられます。

気になる1店舗あたりの売り上げですが、厚生労働省「平成24年度生活衛生関係営業経営実態」で営業形態別のデータが紹介されていましたので転載します。

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これによると、1日あたりの売り上げが多い順に、

立ち食いそば・うどん店 52,093円
うどん専門店      48,083円
そば・うどん店     47,562円
そば専門店       36,161円

となっており、そば専門店は客数が少ないことから売り上げが少なくなる傾向であることが分かります。

→そば・うどん店、先程の1日の売り上げから年商を推計すると1,000万円から1,900万円ほどです。原価、人件費、賃料などを考慮するとかなり厳しいと思われるが、まちのそば屋さんはどのように経営しているのだろうか?


1月1日(金) 中核市で最も財政が潤っているのは○○市

1959年のこの日、トヨタ自動車本社のある愛知県挙母市が豊田市に改称しました。

豊田市、元々は挙母(ころも)市という名称でした。

名称変更の経緯は、豊田市のHPで説明されております。
ちなみに、旧石器時代から紹介されています。。。

明治に入って発明されたガラ紡機械による製糸業と養蚕で栄えましたが、昭和に入り生糸の需要が減ると挙母町も影響を受けます。

ちょうどこの頃、刈谷の豊田自動織機製作所が自動車製造部のための工場用地を探していることを知った当時の市長が誘致に成功したことが、今の豊田市の繁栄につながります。


ここでは、トヨタ城下町とも言える豊田市の財政を見ていきたいと思います。

令和元年度の収入は約2,024億円。そのうち法人市民税が310.6億円となっています。

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これが多いのか少ないのか判断つかないのですが、同じ程度の収入がある東京都八王子市(収入約2,000億円)の法人市民税は53.8億円と、5分の1以下となっています。

同じ企業城下町として知られる日立市(こちらは元々日立という地名があり日立の創業の地ということで本社はなく比較には適さないかもしれませんが…)は、法人市民税は26.7億円、収入に占める割合は3.4%です。

豊田市では、法人市民税の占める割合は15.3%ですので、金額も割合(依存度)も高いことが分かります。

もちろん、トヨタ自動車だけの法人市民税ではないですが、トヨタを誘致したことにより関連企業が集積したことが寄与していることは間違いありません。

ちなみに、地方公共団体の市町村には、分類があり、指定都市、中核市、施行時特例市、その他の市、そして町村と分かれています。

豊田市は全国で60ある中核市の中で財政の健全性を示す指標のほとんどで1位になっています。

→自動車業界は電動化の大きな流れの中にある。くるまのまち豊田市にはどのような影響があるだろうか?



最後までお読み頂きありがとうございました。
1つでも頭の体操になるネタがあれば嬉しいです。

毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
「へぇ〜」がいろいろあると思います。


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