levi

書き殴り

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v1

濁した言葉が形を変えて、渦の中に飲み込まれていく。それは消えることなくこの先も僕の 頭の中に不意に現れるのだろうと少し伸びた顎の髭を触りながら、確信していた。 …

levi
2か月前

私は見ていた。 一瞬も見逃すことが出来なかった。 空気が割れそうなほど張り詰めた冬 凍っている水溜りの横に白い蛇と その蛇が脱皮したであろう透明な皮が 円のように口…

levi
7か月前
2

パズル

自分だけが歪なパズルのピースのような気がする。 どこにも嵌らず、手に取られることもない。 ピッタリとパズルにハマったピース達が 何か僕に投げかけるが、それすら理…

levi
7か月前
3

「」

コンピュータはゼロとイチの信号のみで動いてるということを知った時、人間も同じなのではないかとふと思った。 痛い、痛くない 眠い、眠くない 空腹、満腹 あらゆる言葉…

levi
8か月前
10

@@@

空気がパリパリとしている。 まるで僕の身体の表面と空気の間に薄く張った温度のない氷があるように。 身体を大きく動かすと何かを壊してしまうみたいで、自然と小さな動…

levi
8か月前
7

zzz

いつ切れたかも思い出せない傷を 口の中で探しながら窓を眺める。 高さが異なる建物がお互いに身を寄せ合って 支えあっている姿はかつて砂浜に作った山のようだった。 血…

levi
9か月前
3

月明かり

引き裂かれたかのような雲の合間から 発光する月は何かを照らしているのでしょうか。 月は自ら光輝くだけで、何かを照らすつもりなんて全く無く、溢れた光に人間があやか…

levi
10か月前
4

あまり大きくないテレビから流れる定型文のようなニュースに気を取られるようなことは、年を取るにつれて少なくなっているはずなのに、そのニュースの内容を現行通り、伝え…

levi
11か月前
3

re

「逃げてるだけでしょ」 吐きだされた言葉は丸みが全くない。 「君は他人から距離をとって全てを俯瞰で見ているような顔をしているけど、他人が君に近づきたく無いだけな…

levi
1年前
6

かみにつき

肩にまで伸びたその毛を触りながら顎を左肩に充てて眺めていた。 その毛はすりたての墨のように黒々としており、筆毛よりも硬く太い毛であった。 ぼくはこれまでの人生で…

levi
1年前
3

祝砲

運ばれてきた味気ない食事を無理やり体内に循環させて、窓を見ながらうつらうつらしていたときのことであった。 気にも留めず、流れてきたニュースは生後三か月で虐待され…

levi
1年前
4

13月

年越しの晩、いつものようにテレビに目をやりながら年が明けるのを待っていた。23時59分59秒の文字を見た次の瞬間テレビが消えた。 手元にあったリモコンで電源ボタンを押…

levi
1年前
6

シェルター

寝る時に決まって行うことがある。 子どもの頃から毎日だ。 布団の中に入り、冬であれば毛布に包まる、夏であればブランケットに包まる。 頭も手も足も布の中に入れてしま…

levi
1年前
3

飛行機

上空を轟音と共に通り抜けていく、鉄の塊が落ちてくる可能性がどれくらいあるのかを考えていたら授業が終わっていた。 チャイムが鳴っても、耳の中に小さな飛行機がいる気…

levi
1年前
6

無為

修学旅行に行った時に作った湯呑みにコーヒーを淹れる。 当時好きだったマイナーなバンド名を入れた、不恰好でダサい湯呑み。 今では聞くこともないそのバンドが今どうなっ…

levi
1年前
9
v1

v1

濁した言葉が形を変えて、渦の中に飲み込まれていく。それは消えることなくこの先も僕の
頭の中に不意に現れるのだろうと少し伸びた顎の髭を触りながら、確信していた。

彼女と別れたあの日から部屋はどこか
僕に対して冷たく感じ、本棚の角に2回も足をぶつけた。
家具までもが僕のことを非難していると
感じながら土曜日をただただやり過ごした。

5年も付き合っていながら
いつまでも僕は自分が一番大事で
自分を守

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廻

私は見ていた。
一瞬も見逃すことが出来なかった。

空気が割れそうなほど張り詰めた冬
凍っている水溜りの横に白い蛇と
その蛇が脱皮したであろう透明な皮が
円のように口で尾を噛み繋がっていた。

どのような経緯でこうなったのかなんてことはどうでも良かった。

この世界の全てが分かった。
吐く息はその蛇のように白く、次の瞬間には消えている。

この世界はこの蛇のように回っているのだ。
廻ってもいるし

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パズル

パズル

自分だけが歪なパズルのピースのような気がする。

どこにも嵌らず、手に取られることもない。

ピッタリとパズルにハマったピース達が
何か僕に投げかけるが、それすら理解することが出来ない。

自ら形を合わせにいくことも考えたが、
そんなことをするくらいならば
捨てられた方がマシだ。

これをプライドという奴もいるが
そんな生優しいものではない。

これは僕自身だ。
削り落とし形を合わせることは自分を

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「」

「」

コンピュータはゼロとイチの信号のみで動いてるということを知った時、人間も同じなのではないかとふと思った。

痛い、痛くない
眠い、眠くない
空腹、満腹

あらゆる言葉に対義語があることがこれを証明していると言ってもいいだろう。

私はあまりにも寒すぎて目を覚まざざるを得なかった今日そのことに気がついた。

同じ季節を何度も繰り返すことで、
色んな事に気づく。
それと同時に過去に発見した気づきを忘れ

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@@@

@@@

空気がパリパリとしている。
まるで僕の身体の表面と空気の間に薄く張った温度のない氷があるように。

身体を大きく動かすと何かを壊してしまうみたいで、自然と小さな動きのまま歩き続ける。

渋谷駅から表参道へ何の目的もなく歩くものの
目を奪うような何かはそこには無く、久方ぶりに頭の中に浮かんできたのは喉が渇いたということだけであった。

不思議なのは身体の反応として喉が渇いたことを感じたのでは無く、頭

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zzz

zzz

いつ切れたかも思い出せない傷を
口の中で探しながら窓を眺める。

高さが異なる建物がお互いに身を寄せ合って
支えあっている姿はかつて砂浜に作った山のようだった。

血の味もしない口の中の傷は確かに頬の裏側に
存在しているが痛みはもう無い。

山の前を名前も分からない鳥が数羽目の前を
横切る。何かを言いながら。

テレビから流れるニュースでは、有名ミュージシャンが覚醒剤を所持していたことをスーツを着

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月明かり

月明かり

引き裂かれたかのような雲の合間から
発光する月は何かを照らしているのでしょうか。

月は自ら光輝くだけで、何かを照らすつもりなんて全く無く、溢れた光に人間があやかってるだけなのではないかと僕は考える。

人間の多くは虫を嫌い、虫に思考がないと考えるが、月夜をあやかる僕達は電灯に集る飛べる虫と同じだ。
虫は溢れた光にあやかって何をしているのだろう。

気になったので調べてみたら、光ではなく紫外線に集

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あまり大きくないテレビから流れる定型文のようなニュースに気を取られるようなことは、年を取るにつれて少なくなっているはずなのに、そのニュースの内容を現行通り、伝え終えた後の男性キャスターの言葉が一日中引っかかっていた。

「〇月〇日 都内某所にて人気俳優の××さんが首を吊っているのが見つかり、搬送先の病院で死亡が確認されました。警視庁は自殺とみて捜査しております。」

「大人気の俳優さんで、今期のド

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re

re

「逃げてるだけでしょ」
吐きだされた言葉は丸みが全くない。

「君は他人から距離をとって全てを俯瞰で見ているような顔をしているけど、他人が君に近づきたく無いだけなことに気づいていないの

言葉は二つ宙に留まり、少しずつ僕に近づいてくる。

「君は優しいんじゃ無くて、自分で選択するのが怖いだけ、自分で選択した事が間違いで失敗して恥をかくことから恐れているの」

「他人を見下す癖に、他人から見下され

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かみにつき

かみにつき

肩にまで伸びたその毛を触りながら顎を左肩に充てて眺めていた。

その毛はすりたての墨のように黒々としており、筆毛よりも硬く太い毛であった。

ぼくはこれまでの人生で一度も自分の毛を染めたことがない。

周りが茶色や金色、赤など思い思いの色に髪を変えていく中でも髪を染めたいと思うことも自分の髪の毛が黒以外の色であることさえ想像することは無かった。

またこれだけ伸びたのは人生でも初めてであり梅雨にも

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祝砲

祝砲

運ばれてきた味気ない食事を無理やり体内に循環させて、窓を見ながらうつらうつらしていたときのことであった。

気にも留めず、流れてきたニュースは生後三か月で虐待されて死亡した幼児の両親が逮捕されたらしい。

幼児が何をしたのだろうか、幼児は何を望んだのだろうか、幼児は自分にどういったことが起きていたのか理解することはできたのだろうか。

そういったことを耳に挟むたびに私はトカレフの引き金を引き、上空

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13月

13月

年越しの晩、いつものようにテレビに目をやりながら年が明けるのを待っていた。23時59分59秒の文字を見た次の瞬間テレビが消えた。
手元にあったリモコンで電源ボタンを押してもテレビに光が灯ることはない。

机の上のスマートフォンを手に取り、起動すると時刻は0時を回っていた。
スマートフォンをソファーに置き左手に持ったビールの缶が空になっていることに気づき机の上に置く。

視界に入った数字が妙に頭から

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シェルター

シェルター

寝る時に決まって行うことがある。
子どもの頃から毎日だ。
布団の中に入り、冬であれば毛布に包まる、夏であればブランケットに包まる。

頭も手も足も布の中に入れてしまう。
布自体の暖かさと自分の体温が混じり合い
一つになり、やがて全ての感覚が鈍くなる。
これはシェルターだ。
なによりも強固で外界にある全てから私を守ってくれる。

朝起きて、電車に乗り会社に行く。
車内にいる人間は皆、小さい長方形の機

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飛行機

飛行機

上空を轟音と共に通り抜けていく、鉄の塊が落ちてくる可能性がどれくらいあるのかを考えていたら授業が終わっていた。

チャイムが鳴っても、耳の中に小さな飛行機がいる気がしていたところに、立野がボールペンの先で二回俺をつつきながら「終わったぞ、飯行こ」と言う。
バックから財布を取り出すために屈むと、いつの間にか結んでいた髪の毛が解けていることに気づく。
手首につけていたゴムを口に咥え、解けた髪をもう一度

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無為

無為

修学旅行に行った時に作った湯呑みにコーヒーを淹れる。
当時好きだったマイナーなバンド名を入れた、不恰好でダサい湯呑み。
今では聞くこともないそのバンドが今どうなっているかを考えながら、タバコに火をつける。
何故だか捨てることが出来なくて、引っ越しをするたびにテーブルの上に居る。

朝ご飯は食べずに、コーヒーを一気に飲みほし家を出る。
今日はどこに行こうか。
ヴェスパにまたがり、エンジンをかけると返

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