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【BL二次小説(R18)】 恋する王子様③


荒北は教卓に足を乗せたまま、テキストをパラパラと捲った。


「オレの担当するゲーム学ってのァ、ゲームを通じて物事のロジックや相手の心理を読むってェ学問だ。結構奥が深くて面白い」


「……」


新開は口半開きのまま、荒北の姿を舐めるように眺めている。



「例えば、ポーカーは役の強弱よりも賭け金の額や心理戦で勝敗が決まる。王子ももう酒が呑める歳だ。今後他国の王子達と夜通しポーカー大会なんかする機会もあるだろう。そんな時、カモなんかにされちゃア国の威信に……チョット聞いてるゥ?」


「はっ!」


ボーッと自分を見つめている新開に荒北は厳しい声を掛けた。

我に返る新開。



「ごめん聞いてなかった」
「ンだとコラ」

バン。

テキストを教卓に乱暴に放る荒北。



「靖友。王子じゃなくてオレのこと名前で呼んでくれ。隼人、って」

「あァ?」

怪訝な顔をする。



「……」

荒北は暫く考えてから言った。

「新開」


「新開じゃなくて、隼人、って」

懇願するように前のめりになる新開。


「相手が年下ならともかく、オレぁダチはみんな苗字呼び捨てだ。だから、オメーも“新開”だ」


「ダチ……!」


隼人と呼んでもらえないのは残念だが、“ダチ”と言ってもらえたことの方が遥かに嬉しいと新開は感じた。




「いいか新開」

荒北は教卓から足を降ろし、立ち上がった。


「オレは講義以外にも、王から直々に依頼されてることがある」


目の前に立ち、新開の鼻っ面に指を差す。

「オメーの教育係だ」

「教育?」

キョトンとする新開。


「オメーに次期王としての自覚を持ってもらうための教育だヨ!」


「次期王……」


「教養や知識だけでなく、国民視点からオメーがどう期待されてるかを知ってもらう。そして国民から愛されるためにどういう振舞いが求められているか……」

「靖友、眼鏡かけて。さっきの」

「眼鏡は伊達なンだヨ、って聞けよ話をォ!」

ドン!と床を踏み鳴らす荒北。



新開は椅子から立ち上がり、荒北の胸ポケットから眼鏡を取り出す。


「……」

折り畳まれたフレームを伸ばし、荒北に掛けた。


「ほら、似合う。こっちの方が……そそる」

新開はゴクリと喉を鳴らした。


「王子が“そそる”とか言ってンじゃねェよ全くゥ!」

荒北は怒鳴って眼鏡を外した。


「ああ……外さないで」
「邪魔くせェんだヨ!」

再び胸ポケットに仕舞った。



「なんだこの落ち着きのねェ王子は。教育しがいがあるゼ……」

荒北は自分が負け惜しみを言っている気分になる。


新開は、いくら怒鳴られてもずっと頬を紅潮させ、瞳をキラキラと輝かせて真っ直ぐ荒北を見つめていた ──。






講義の時間は終わり、荒北は帰って行った。



「……」


学習室に残された新開は、両腕をだらりと下に垂らし、両足もだらしなく広げ、顔は天井を見上げ、恍惚の表情を浮かべて放心状態のまま椅子に座っていた。



コンコン。

ノックをして執事が入ってきた。


「いかがでしたか王子。新しい授業は」

室内を片付けながら様子を尋ねる。


新開はガバッと起き上がり、執事の両肩をガシッ!と掴んだ。

「ひっ!」

びっくりする執事。


「何回?荒北先生の授業は週何回?」

興奮しながら質問する新開。


「週1回でございます」

ビビりながら答える執事。



新開はそれを聞いて叫んだ。

「少ない!週2回!いや3回!いや!毎日入れてくれ!!」



驚く執事。


「なんと……!隼人王子が生まれて初めて進んで勉強をやる気に……!!」





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