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【BL二次小説(R18)】 恋する王子様⑧


翌週。


「新開。今夜、夜遊びしに行かね?」

「えっ!?」


学習室で講義中、荒北がおもむろに言った。



「よ、夜遊び!?」

「ソ。夜遊び」

目を丸くしている新開。


「そりゃ……めちゃくちゃ興味あるけど……。でも夜出掛けるなんて……」


「城、抜け出せ」

「そんな簡単にいかないよ」


悲しそうな顔をする新開に、荒北はニヤリと笑うと1枚の紙切れを渡した。


「なんだいこれ」


「城の見取り図。その赤いラインが抜け出すルートだ」

「!!」


新開の居室から裏門の抜け穴まで、警備の目を掻い潜るルートが記されていた。


「こ、これは……!」


「全く……。ガバガバだぜこの城のセキュリティ。平和ボケし過ぎじゃね?もうちょっと危機感持てヨ」

荒北は首を横に振りながら言う。


「この通りに行けば、城の外に出られるのかい?」

「裏門の先に小さな公園がある。そこで待ってっから。夕方少し仮眠とっとけ。朝までにはちゃんと帰してやんよ」


「すげぇ……」

新開はワクワクしている。


「あ、皮ジャン着て来いよ。冷えるかんナ」

「?」







その晩、裏門の先の公園で荒北が待っていると、新開が小走りでやって来た。


「よォ。無事抜け出せたな」

「ヒュウ!めちゃくちゃスリルあったよ!」

興奮している新開。



「靖友!それ……」

新開は荒北の姿に気付いて驚いた。



黒レザーのレーシングスーツ。

傍らにはオートバイが停めてある。

バイクの側面には大きく“隼”と書かれていた。


「……スズメ?」

「ハヤブサだッ!隼ッ!オメーの名前にも付いてンだろーがッ!」


荒北の愛車、ズズキの『HAYABUSA』。


荒北は怒りながら新開にヘルメットを放った。
受け取る新開。


「フルフェイスだ。これでオメーが王子だとは誰にもバレねェ」


「……イカス!」

新開は喜んでヘルメットを被った。



「乗んナ」

荒北も自分のヘルメットを被り、ハヤブサに跨がった。



「バイクの二人乗りなんて……初めてだ」

新開の胸が高鳴る。


荒北の後ろに跨がり、腰に手を回す。



……ゥギャン!

エンジンをかけた。



ギャン!ギャンギャンギャン!!

唸りをあげるハヤブサ。


「普通“ブォンブォン”じゃないの?」

素朴に尋ねる新開。


「オレのハヤブサは特別なチューニングだ。さァ、しっかり掴まってろヨ!」


「うわっ!」


ギャアアアアーーーン!!

ハヤブサは急発進した。







「速い……!ロードなんか比べものにならない!」


「ロードは100km前後が限界だ。だがバイクは200、300、そしてこのハヤブサは、もっと出るぜ!」



夜の中央道を飛ばす荒北。


「風が痛い……。だけど……それがすごく気持ちいい……!」



速過ぎて周りの景色が視界に入らない。
見えるのは前方だけ。

そして荒北の背中だけだ。



「まるで……風になったみたいだ……」


「風ェ?ハン!違うな!これは……稲妻だ!」



「稲妻……!!」




風よりも速い、光になれる日が来るなんて……!


新開はまるで自分がなにものにも囚われない、自由を手に入れたかのような感覚を抱いた。



自由……。


今、この瞬間、オレは自由……。


もちろん、一時だけの自由だけど……。


ほんの短い間だけでも、オレに自由を体感させてくれた……。




靖友……ありがとう。


おめさんは……オレにとって特別な存在だ。


靖友……。


オレは……。





ファンファンファンファン!


背後からサイレンが近付いて来た。



『そこのハヤブサ!停まりなさい!』



「!」
「!」



二人はパトカーにロックオンされた。




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