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麻利央書店

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高島麻利央による、短編小説~無料版~
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#麻利央書店

脱毛サロンの女「アザのある客」

脱毛サロンの女「アザのある客」

これは、脱毛サロンに勤める女・毛利悠里(26)の日常を切り取った妄想エッセイです。事実とは大きく異なる点があるかもしれません。妄想ですのでご了承下さい。

ビィーーーーーン。

『今日はこれで3人目か』

ムダ毛を処理する電動シェーバーの音が鳴り響く中、私は目の前に横たわるタオルに包まれた裸体を前に夢中に…というよりも無心にシェーバーを動かしていた。今やっている右足の太ももが終われば、除毛作業は臀

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文化祭の想い出

文化祭の想い出

 ある辞書によると、文化祭とは『生徒・学生が研究発表・演劇・音楽会・講演会・討論会などを企画実行する文化的な催し』であると説明されている。しかしそんな高い志を持って文化祭に臨んでいる人間がどれだけいるのであろうか。ほとんどいないだろう。むしろ、好きなクラスメイトと急接近できるとか、付き合ってる男女が一緒に出店を回るだとか、そんな浮かれ切ったイベントにしか思えない。

 私の通う女子高では、他の学校

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ある本屋で、コーヒーと。6

ある本屋で、コーヒーと。6

続きものです。
5からお読みください。

 それから1ヶ月、私はその本屋のあるカフェに足を運ぶことはなかった。それどころかどのカフェにも行かなかった。仕事が終わったらすぐ家に帰って、部屋で一人、自分で淹れたドリップコーヒーを飲みながら、本を読む。そんな毎日を過ごしていた。
 私はカフェに行かなくとも、本とコーヒーのインスタ投稿は地味に続けていた。今読んでいるのは【待津野ひまわり】の一番新しい本。初

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ある本屋で、コーヒーと。5

ある本屋で、コーヒーと。5

続きものです。
4からお読みください。

 ふたりの時が止まった。
 その瞬間が永遠に思えるほど二人は強く見つめ合った。 
 私は突然、あまりの痛さに目を開けることが出来なくなった。
 両手で顔を覆い、しばらく身悶えていた。声も出せない程の痛み。

 どれくらいの時がたっただろうか。
 ようやく目を開けた私は窓に映る自分の顔を確認した。
 すると、私の目に、正確には瞳孔に、彼の姿が焼き付いていた。

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ある本屋で、コーヒーと。4

ある本屋で、コーヒーと。4

続きものです。
3からお読みください。

 私はコーヒーの海で泳いでいた。いや、正確には溺れていた。
 胃の中は黒くて苦い液体でいっぱいになりかけていた。
 必死でもがいていた。こんなところで死にたくはない。
 すると、固い物体が手に当たった。それは大きな板のようだった。
 その板にしがみ付いて、私はようやく呼吸をすることが出来た。
 空を見上げると、大きなぐるぐるキャンディが太陽のように輝いてい

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ある本屋で、コーヒーと。3

ある本屋で、コーヒーと。3

続きものです。
2からお読みください。

 それから1ヶ月ほど、彼がカフェで仕事をしている毎週水曜日は勤務終わりに一緒に読書をすることが二人のルーティーンになった。彼と会うと幸せを感じられたが、彼の気持ちを確かめたいという衝動に駆られることも増えて、自分の気持ちを処理するのが困難になってきているのを自覚していた。

 私はこんなに欲深い人間だったのかと自己嫌悪に陥った後、しばらくしてから、約束もな

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ある本屋で、コーヒーと。2

ある本屋で、コーヒーと。2

続きものです。
1からお読みください

 私はカフェのレジで注文していた。ホットのカフェモカMサイズを頼んだ。レジを打っているのは、彼だ。お釣りをもらう時に手が触れると、彼は優しく微笑み、慣れた手つきでカップに注文を書いてドリンクを作るスタッフに手渡した。蒸気が上がり、トントンとミルクの泡を整える音が響いて、手際よく私のカフェモカが仕上げられていく。「カフェモカMのお客様」と呼ばれ、スタッフから渡

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ある本屋で、コーヒーと。1

ある本屋で、コーヒーと。1

 私の日課は仕事終わりにカフェの併設した本屋で読書をすること。その本屋はカフェを利用すれば、席に好きな本2冊まで持って行って読んでいいことになっている。私はこの日読むと決めていた好きな作家【待津野ひまわり】の本と別の作家の本、2冊を持って、カフェカウンターでホットコーヒーのSを注文した。
「マグカップとフタ付き、どちらになさいます?」男性店員が訊ねた。
「フタつきで」私は即答した。
理由は二つある

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脱毛サロンの女「100%の客」

脱毛サロンの女「100%の客」

これは、脱毛サロンに勤める女・毛利悠里(26)の日常を切り取った妄想エッセイです。事実とは大きく異なる点があるかもしれません。妄想ですのでご了承下さい。
1話完結シリーズものです。「アザのある客」

今日もどこからともなく身体の毛を無くしたいと言う女性が集まってきている。今日の勤務は14時からラスト22時まで。平日なのでそこまで多くはないが、それでもほぼ予約は埋まっている。仕事帰りの女性達が今か今

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わたしは嵐でした。

わたしは嵐でした。

先日、ジャニーズグループ『嵐』が活動休止を発表した。詳しく書かなくともそのニュースはほとんどの人が知っていることだろう。5人揃っての会見を開き、2020年12月31日をもっての活動休止とその決断に至るまでの経緯について語った。活動休止については寂しさを感じるものの、5人それぞれの葛藤やグループへの思いがストレートに伝わり、ますます好感度が上がったのではないかと思う。

私が「嵐」と聞いて思うのは、

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2019年がやってきた!

2019年がやってきた!

noteにて麻利央書店をお読みいただいている皆さん、
あけましておめでとうございます!

来るぞ来るぞと聞いていたけれど、
本当に来てしまった2019年、平成最後の4ヶ月。

そうやってまた平成最後の日も迎えるのだろう。

自分の身を削ったり
誰かの考えや思いを借りたりして
何かを思い(考え)ながら、言葉を綴って
誰かに届いたり届かなかったりしながら月日が流れた。

形にできた言葉たちとできなかっ

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きれいなご主人様

きれいなご主人様

ボクのご主人様はうつくしさにこだわっている。
家にいるときはサラサラで気持ちのいいお洋服を着ている。
散歩に出かけるときはキラキラしていたり、ツルツルしていたり、
フリフリしたりしたカワイイお洋服を着ている。
そんなご主人様の隣にいるボクも、素敵なお洋服を着せてもらってる。

ボクはお出かけするとき、少しリンとして鼻を高くして歩くんだ。
そうしたらすれ違う人たちがボクのことを「かわいい」と言う。

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みんなでつくるものがたり

みんなでつくるものがたり

みんなで「ものがたり」をつくれたら、
いいものが出来上がるのではないか。
 2年半ほど前に自身で手掛けた芝居のイベントで「お客さんに事前に簡単なセリフを渡しタイミングを伝えて、本番で出演者として言ってもらう」という試みをやってみました。普段、客席と舞台は隔たりがあります。もちろん、お客さんの笑いでこちらも気持ちが乗ったり、ピリピリとした空気感をお互いで漂わせたり、一緒に空気をつくってもらっています

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麻利央書店は何でも承ります。

麻利央書店は何でも承ります。

 私はタレントと言う職業柄、自己紹介をすることが多くあります。自分が商品であり、その仕様というものを理解してもらわないことには使って頂けないからです。多少の出来ないことはどうにかしてやりますが、サイズやビジュアルが違うなど物理的なことはどうしようもできません。所属事務所にはプロフィールというものがありますので、それに倣っていきます。

麻利央書店管理人:髙島 麻利央(たかしま まりお)

生年月日

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