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本紹介

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#小説

買ったのは黄金色の火曜日でした

買ったのは黄金色の火曜日でした

家にこもることの効用は、とにかくよく本を読むということ。週に3冊くらい読んでいる。傍に猫。沈潜力倍増。
みうらじゅん氏が提唱していた「グレート余生」という言葉が浮かびます。
最近は「やっててくれてありがとう!」の気持ちを込めて「やってる本屋」までテクテク散歩しては本を買う。
一昨日衝動買いしたのがリチャード・ブローティガン著、藤本和子訳『西瓜糖の日々』(河出文庫)。

先週末のオンライン飲み会でビ

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考えさせられすぎる

考えさせられすぎる

『春にして君を離れ』(早川書房) 読了。著者はアガサ・クリスティーですが、発表当時は身分を隠しメアリ・ウェストマコット名義で出版されています。アガサ・クリスティー名義で出すと「なんじゃこりゃ〜!」と本をぶん投げる人が続出する懸念があったのですね。確かに今でも「ちょ、なにこれ!」という人もいるかも。

ミステリー成分がゼロ、中年女がモヤモヤモヤモヤウダウダウダウダ考えまくるだけの(笑)、そして発

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デストピア小説なのだろうか

デストピア小説なのだろうか

胸ぐらをつかまれて揺さぶられたようなショック。
「あなたが生きているのはこんな世界ではありませんか?」って言われて「え、ああ、まあそのうちにそんな感じになるのかなあ、あははは、はは…」と力なく笑うのかオレ。

多和田葉子著『献灯使』(講談社文庫)を読みました。
いま、いまのこのときに読んで余計にグラッときました。

それにしても言葉の使い手としての力量がすごいですね。
実は多和田作品を初めて読みま

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ロシアドーピング問題とマクラウド

ロシアドーピング問題とマクラウド

ロシアの選手がオリンピックに出られる出られないで、すったもんだしてましたね。
ドーピング問題を考えることは、スポーツってなんだろう、競技生活ってなんだろう、ということを考えることとイコールであるように思います。

ちょうど読んでいた、『煉瓦を運ぶ』(アレクサンダー・マクラウド著 小竹由美子訳)という短編集の最初の一話「ミラクル・マイル」が、陸上競技選手の話でして、クスリの話も出てきました。

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嘲弄されても

嘲弄されても

久しぶりに、

「あーおもしろかった!」と、本を閉じました。

『世にも奇妙な君物語』朝井リョウ著諧謔の精神というか、でも限りない憐憫の情でもって今の世を非常にうまく切り取るよなー、朝井リョウ。
自分の中では、「現代の太宰治」認定。

この本には、身につまされる部分が多いのです。それは泣きたいほどに。
実は最初の章というか短編を読んでちょっと辟易して、数週間放置してました。
うわー、なんかいやだな

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ミチル商会社史と司書のおねいさん

ミチル商会社史と司書のおねいさん

また一冊、読みながら鼻息が荒くなり動悸が速くなる小説と出会った。
いつまでも読み終わりたくない。この小父さんといつまでも生活を共にしたい。大きな事件が起こりませんように…。女になんか近づいちゃいけない!
思わずため息が出たりべそをかいたり、朝夕の通勤電車で感情を隠し切れない日々だった。

小川洋子著『ことり』

なんといっても小父さんの淡々とした愛おしい日々と、そこに加わるささやかな出会いの妙が得

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ペーパードール on 昭和

ペーパードール on 昭和

角田光代という人は、どうしてこうも「一介の」「しがない」「どこにでもいるような」女(とみなされる女)を巧みに描くのだろう。

角田光代著『笹の舟で海をわたる』(2014年 毎日新聞社刊)

主人公の左織は、義理の妹 風美子を頼りに思う反面、おそれに似た感情をいだいている。
折にふれて、風美子に自分の人生を操られているような気持ちが頭をもたげる。
山下達郎の「ペーパードール」さながら、いつか風美子の

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