見出し画像

詩『なつのこい』

いきるということはわすれてゆくこと。すべてのかんじょうはいろあせて、どんどんわすれられていってしまう。だからなんどたちどまっても、またあるきだせる。ましろなとちにあしあとをのこして、やがてあたらしいあしあとのしたにうもれてゆく。いきることはかなしいおんがく、いきることはさみしいぶんがく。しずかなあめがこうやをやさしくたたく。ほそくながくたたく。つめたいあめにぬれたからだやいふくやかみをかわかすために、あかりをともす、ともしつづける。もえる、さんそがもえて、ほのおがゆれる。くうきがかわいてゆくから、たんさんすいをぐっとのみほしたいとねえさんがいった。くもったぐらすしかないから、はだかのりんごをみがくように、ぐらすののみくちをぬぐう。たんさんすいはとうめいなあらしだ。わっとふくれあがって、かたちのないしぶきがあがる。のどをかきみだして、しゅわっときえてゆく。せつなのそうかいかんゆえに、ねえさんはなつにたんさんすいとくちづけしたがる。わたしはのどのびりびりかんがふかいだから、たんさんすいとくちづけするのをこのまない。あまずっぱいかんきつるいがわたしのこいびと。のどやしたにいとしさがのこるのがくちづけのあとあじ。わたしにとってのなつのこいは、かんきつるいへのねつりょうだ。すっぱいつばがじわじわあふれだすくちづけのよいん。すぎさりしなつのこいは、せつなのまぼろしのともしび。


photo:見出し画像(みんなのフォトギャラリーより、あつかまくん/ゆみかまこさん)
photo2:Unsplash
design:未来の味蕾
word&poem:未来の味蕾

この記事が参加している募集

スキしてみて

サポートを頂けたら、創作、表現活動などの活動資金にしたいです。いつか詩集も出せたらいいなと思います。ありがとうございます!頑張ります!