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妖旅館_Ss 神出鬼没。
まったく、この旅館に泊まりたがる客はいつになったら減ってくれるのじゃ…
毎日毎日蛇の如き行列を作りおって…
朝から働いておるというのにまた新しく客が来るではないか……
朝から受付に篭もりっぱなしでとっくに糖分の切れた蓮華は若干というか、かなりイライラしていた。
普段から眉間に皺がより、煙管に口付ける回数が多く、尻尾の幾つかがべちべちと床に叩きつけるように動いている。
「よくぞ当旅館に参ったな、
妖旅館_Ss 鈴の音。
チリーン、と耳に入る鈴の音で微睡んでいた蓮華の意識が戻る。
「ふぅ……、疲れで思わず寝てしまっておったのぅ。杏子嬢の鈴の音で目が覚めたわい。」
感謝するぞ。とニッコリ笑いながら隣の席に腰掛ける、猫又の白木 杏子に話しかける。
あまりにも客の出入りが多すぎて抜け出す暇も無かったからのぅ。
不意の休憩に思わず寝てしまったわい…
「今日忙しかったですもんね〜、ボクも疲れちゃいましたよ。
休憩がて
妖旅館_Ss 同族。
「よいしょっと…」
お客様がチェックアウトした後の客室の掃除を手際よく進めていく。
使用済みのタオルや布団カバーは洗濯カゴに入れてリネン室に。
敷布団は三つ折りに畳んで押し入れの中に入れる、ついでに座布団や枕も。
一通り掃除が終わったので洗濯物が入った洗濯カゴを抱えて客室を後にする。
これ洗濯したら休憩だから蓮華様の所に行こうかなぁ。蓮華様、また何処かにフラフラ消えてないといいけど。
受
妖旅館_Ss 甘味処
「少し疲れたかのぅ…」
受付の椅子に腰掛けたままぐぐーっと身体を伸ばすと身体のどこかの関節がなったような気がした。
客をもてなすのは悪くはないがこうも数が多いと疲れてしまうな…
いくら甘いものがあっても足りぬ…
ふぅ、と一息つきながら受付上を見ると持ち込んだ菓子は全て食べ尽くしており。
ちょうど当たりを見渡すと客の数も減っていて、ここぞとばかりに蓮華は席を立ち受付を抜け出した。
旅館内の通
恋木犀_Ss 思惑。
きっかけはちょっとした出来心。
普段は彼が主導権を握ることが多くて、少しだけ仕返しをしたくなった。
〜〜♪
仕事終わりにスーパーに寄り、お酒と夕飯の食材を買って鼻歌を歌いながら軽い足取りで家へと帰る。
家に着くと先日入浴中にネットショッピングで購入した小包が届いていて、小包を脇に抱えて家の中に入った。
仕事用の服を脱いで部屋着用のパーカーとショートパンツに着替える。
外のままの格好だとリラ
恋木犀_Ss 煽り酒
仕事が終わり帰る身支度を進めながらスマホを確認すると、大学時代から付き合いのある桜庭から連絡が来ていた。
どうやら休憩時間に今夜飲みに誘った件の返事をくれたらしい。
返事は飲みに付き合ってくれる、との事で四片さんに連絡をする。
見てくれるか分からないけれど、一応ね。
遠くで仕事のある四片さんは今日は帰ってこない予定で、意識すれば痛みを感じる身体中の跡に口元を緩めながらメールを送った。
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妖旅館_Ss 銀の二人
「ふむ、明日の受付担当は銀の嬢と一緒か……」
寝る前に明日の持ち場で一緒になる妖の名前を確認しながらボソリと蓮華は呟いた。
銀の嬢とは自分と同じ髪色を持ち、自分と正反対の焼けた様な肌の色をした蝙蝠の妖の名前だ。
普段は大人しいものの声をかければ気が合う為蓮華のお気に入りである。
まぁ、大人しいのもあるが嬢は一緒に過ごしていて我を楽しませてくれるからのぅ…
明日の勤務が楽しみじゃの…
クツクツ
恋木犀_Ss なんでもない話2
「そろそろお開きにするか。」
「そうね、桜庭とみあちゃんの素敵な話も色々と聞かせてもらったし。」
大学時代からの腐れ縁である桜庭の言葉に同意すると共にニッコリと嫌味を添えて返した。
少し耳を赤くし恥ずかしそうにする彼を見てると面白いと思うと同時に、彼から伝わる淡い初恋に羨ましさも覚える。
わたしも恋をしてるけど淡い素敵なモノじゃなくてドロッドロに淀んでいて人から理解され難いモノ。
けどそれが嫌
恋木犀_ss なんでもない話
「ちーちゃん!!」
突然頭に入ってきた鮮明な私を呼ぶ声に、ふと意識が覚醒する。
「ッ…ご、ごめんなさい。 少しぼーっとしてたみたい。」
「大丈夫? 体調悪かったら今日もうあがってもいいんだよ。」
私の様子を伺いながら心配そうに尋ねてくる同僚の言葉に「えぇ、大丈夫よ。」と、笑顔で返した。
ここ最近は出勤が続いていて、まともに休めていなかったから疲れが溜まっているだけなんだと思う。
明日から何
恋木犀_Ss 紫煙に呑まれる。
「あれ、ちーちゃん今日は珍しく涼しそうな格好してる。」
仕事も終わり、お店の裏にある更衣室でメイク直しをしていたら職場の同僚にそう声をかけられた。
「確かに、珍しいかもしれないわね。ここ最近タートルネックばかり着ていた自覚あるもの。」
同僚に言われて振り返れば、確かに今の首元が詰まってない服装は久しぶだと自覚する。
別段寒くないのに首の隠れる服を着続けていたのは、やはり暑苦しかったのだろうか
恋木犀_Ss xxx
時々今でも夢に見る、わたしのいやな過去。
いじめられるきっかけなんて些細な事で、アイツが気に食わないから。とか、アイツが何かをしたから。とか、なんとなく。とか。
ほんとに、そんなくだらない事。
それがわたしの場合は陰気な性格をしていたから、それだけ。
誰かに特別迷惑をかけていたわけでもないのに、中学生3年生の半ばに急に始まった。
全てが過ぎた今、冷静に考えたら高校受験が迫るストレスを抱えなが
恋木犀_Ss 虚栄に囚われる。
ヴーッ、ヴーッ、と規則的に起こるスマホの振動で碓氷 千里は目を覚ました。
枕に伏せていたまだ完全に醒めきってない頭を上げ、スマホを手に取り時間を確認する。
「7時半か...支度しなきゃ...」
もぞもぞと自分の体温に染まったベッドから這い出て洗面所で顔を洗う。
鏡に映る寝起きの顔は最高にブサイクで、思わず失笑が溢れてしまう程だった。
いつ見てもブサイクで笑っちゃう。
メイクしなくても可愛
恋木犀_Ss 煙る彼。
「チサト。」
視界に入る煙と共に、私の間違った名前を少し掠れた声が呼ぶ。
どうせわたしの本当の名前なんて誰も気に留めない、ネガティブにそう思いながら隣の席に座る男を横目に無くなりかけのカルーアミルクを喉に流す。
「酒飲んじゃって、どうなっても知らねえよ。」
「うるさい、わたしだってみたいの。
どうせアナタはわたしがなにを言ったって気にもとめないじゃない。」
若干回らない舌でケタケタと笑う男の
WBS_Ss 紅い彼
心地よい風によって運ばれてきた、ここ最近嗅ぎなれた匂いによってロアは目を覚ます。
今の時間は防衛科にある数少ない座学の時間で、ロアは案の定サボって学院内の日当たりのいい場所で居眠りをしていた。
「どうせ授業に出ても寝ちゃうんだから、どうせなら暖かい所で寝たいもんねぇ…」
あくびをしながら誰に言う訳でもなく溢れた言葉は、目を覚ました時と同様の心地よい風によって消えていった。
昼寝をしていた狼