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先端技術

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30年の企業経営の経験から、様々な”ニッチな先端技術”に注目し私見を記しています。
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#先端技術

注射で骨を作る

注射で骨を作るという手法が生まれた。東京医科歯科大青木准教授らは、手術をせずに薬を口の中に注射してあごの骨を増やす方法を開発した。
実験動物はマウスだが、やがて兎とか犬のような大型動物に応用して、人間への可能性を探ってゆく。
京大再生医学研究所とアメリカのシーダーズ・サイナイ研究所との共同研究だが、切開して人工骨を埋め込んだり、体の他の部位から移植したりする手術をしなくても、注射で骨を作る可能性が

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外径寸法公差±0.01のガラス管

ガラス管というと、蛍光灯やスポイトなどを連想するが、電子機器や医療機器では随分使っているそうだ。その中でも精密ガラス管といって寸法公差が非常に小さい物があって「高精密ガラス管」といわれる。どのくらいの精密さかというと、外径寸法でコンマ以下が当然の世界。熱変形が大きいガラスは冷めて行く時に収縮するから、熱い時と冷えた時では相当な寸法変化がある。寸法だけでなく、反りや曲がり、肉厚のバラツキも出る。

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暗視

静岡大電子工学科の川人教授らは、平均ノイズレベル0.27と世界最高レベルの相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサーを開発した。暗い所で、ごく微量の光を検知できるという。性能は、星明り程度の1ミリルクスの照度でも、ノイズなく画像が見れるそうだ。1ミリルクスとはどれほどのものかというと、月夜の明るさの数百分の1で、自分の手さえ見えない深い闇である。

(ルクスとは、光源から発した光が、照射対

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鯖寿司を半年冷凍保存

鯖寿司を冷凍保存して、6ケ月鮮度を維持できる技術が生まれた。
高鮮度維持技術と氷再結晶化抑制液を使った製法を、鯖や株式会社が実用化した。装置はすでに設置済で2016年1月から出荷。一番問題になったのは、すし飯が白蝋化することで、従来は2日が限度だった。
 鯖のような傷みやすい魚を半年もたせるとは意外だが、大丈夫かなという心配がある。来年になったら一度チャレンジしてみたいものだ。それにしても、人類の

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弁柄

弁柄

弁柄の歴史は古い。弁柄とは古来から使われている赤色顔料のことである。

75000年前のアフリカの洞窟壁画や15000年前のアルタミラ(スペイン)でも弁柄の赤が用いられていた。磁硫鉄鉱石から得られる赤は魔除けの意味と、旺盛な生命力の象徴の意味があって古来尊重されてきた。
日本でもBC7000年ころからあり、飛鳥奈良のころには社寺を美しく彩った。近世岡山の銅鉱山で銅の採掘の時に、一緒に出てくる硫化鉄

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触覚を持った手術ロボ

東京工業大学精密工学研究所の只野耕太郎准教授、川嶋健嗣客員教授(東京医科歯科大学生体材料工学研究所・教授)らは、先端医療機器の開発・製造を行う「リバーフィールド株式会社」を設立した。
同社は、空気圧を用いて精密制御を実現する技術を基盤として研究開発した手術支援ロボットシステムなどを広く、早く市場に普及することを目指す。
具体的には、執刀医の頭部動作により直感的に内視鏡を操作できる内視鏡操作システム

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核燃料1800万度C加熱

産業創生大学院大学の北川教授と大阪大有川講師らは、超高強度レーザー「LFEX」を使って、高速点火方式で融合燃料を約1800万度C加熱に成功した。
この方式での核融合反応時に生じる中性子の発生量は、従来の2000万~3000
万個から5億個に増えた。
今回の実験は装置の性能の半分しか使っていないので、16年度中には5000万度Cに到達できると予想している。
5000万度は核融合燃料点火の目安で、いよ

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蓄光世界一

暗闇でも見える塗料は、時計の文字盤や計器盤等に使用されるほか、近年ではキーホルダー、アクセサリー、マニキュア等のファッションに使用される。
また、ニューヨークでの9・11テロ等において、避難経路を示すことの重要性が高まったことからも、電源や配線配管を必要としない「蓄光」が注目を集めている。
日本国内では、いち早く横浜市交通局が地下鉄のプラットホームやコンコ ースで蓄光式の避難誘導板を設置し、その後

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炭酸ガスだけを取り出す

北大電子科学研究所野呂真一郎准教授は、Mgなどの軽金属で多孔質結晶を作成することに成功。
MgやCaにビピリジンジオキシドという有機化合物を組み合わせて多孔質物質を合成した。
この物質の画期的な性能として、実験段階ではあるが、メタンと二酸化炭素の混合ガスを多孔質結晶に通すと、二酸化炭素を吸着してメタンだけが出てきた。CO2をほぼ100%吸着したことから、窒素と二酸化炭素の分離も可能と見ている。4-

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半導体工場でレタス

半導体工場でレタス

先端技術の粋をこらした製品は劣化が速い。
利益が出ると見れば各社、各国が殺到してたちまち価格が下がって性能がアップする。その激しい競争はすぐに体力勝負の世界に変り、巨大資本とか、極端に安い労働力を持つところが先行者を駆逐してしまう。
半導体は、かつては日本の独壇場だったが、今や新興国の追い上げで青息吐息、工場閉鎖も続出している。
そんな中で、会津の富士通セミコンダクターは3年工場が休止していたが、

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静かに消えた赤プリ

バブル経済を象徴する建築物だった「グランドプリンスホテル赤坂(略称赤プリ)」の解体は劇的だった。

高さ140mの威容を誇ったこの超高層ビルは、最新の解体技術によって、静かにそして美しく消えていった。アメリカなどでは爆薬を仕掛けておいて、一気に大崩壊させる。実にダイナミックなやりかたであるが、人口も建築物も密集した東京ではできない。

そこで開発されたのが、大成建設の「テコレップシステム」と呼ぶ工

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超雄(超オス)

“超雄”というのは、精力絶倫のオスのことかと思ったら、性別を決める染色体である「性染色体」が YYであり、母親と遺伝子を半分ずつ次世代に渡した場合に必ず Y が伝わる個体のことだそうだ。

貧しい発想を恥じながら読み続けて、ようやく事の次第が分かってきた。子供の性別は性染色体のXYの組み合わせによって決まり、Y染色体があると子供は必ず雄になる。つまり”超雄”の子供は雄のみ、というのがポイント。水産

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ケーブル無しで送電

ケーブル無しで送電、そんなことが可能だろうか?

三菱重工は宇宙太陽光発電システム(SSPS)の実現に向け、無線で電力を送る地上実証試験に成功。10kwの電力をマイクロ波に変換して500m離れた場所に送り発光ダイオ-ドを点灯させた。誤差は1m以内。

5.8キロへルツのマイクロ波で将来は高度36000kmの静止軌道上の巨大アンテナに設置した電力を地上へ送る。その発電量は100万kwで原発1基に相当

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電動アシスト三輪作業車

電動アシスト三輪作業車

電動アシスト自転車の普及はめざましい。高齢化社会には、これから必須の道具になりそうだ。

これが世に出た時には次のような商品を思いつかなかった。それは作業用三輪車に電動アシストをつけたものである。

狭いところを、荷物を載せて運ぶにはもってこいで、広告の性能を見ると、最大120kgを積んで12度の坂を登れるという。8時間のフル充電で3時間走行できるそうだから、実用に耐える水準だろう。用途は農業の現

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