静寂 可不可

でかい犬、でかいぬ

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偏愛ってなんなんですか

偏愛をテーマに小説を書かなくてはならないわけだが、どうにも偏って何かを好きになったことがない。 恋愛が一番近いのだろうが、おそらくそこまで人を好きになったこともない。他のものを蔑ろにしてまでそのものを愛するような激しい愛を僕は知らないのである。 第一に 偏って何かを愛するとはどういうことか。 まず、そのもの以外の他者はおまけのような人生である。 その者と会うためであるならば、道端で倒れている人間を邪魔だと無視できる、そんな異常性を持った人間でなければ偏愛は成し得ない。 博

    • 何をしているのか

      辛いことから逃げているようです。 どうやら私は、認めたくないところではありますが、痛みや苦しみから、厳しさから距離をとっているのです。 人と口論すれば面倒になって適当に謝るような人間になってしまったようです。 正直解決策のない事項にばかり脳の容量を割いて、考えているふりをしているのは、なぜなのか。 辛いこと、苦しいことの前に踏ん張れないような人間である。 脳が動かないときに虎の子のフィジカルで解決できないような、そんな人間。 無理を通して道理を蹴っ飛ばすと言う言葉。 気に入っ

      • 総武中央押し合い圧し合い

        休日においては中央線の客が、我ら総武線に流れ込んでくる。 迷惑な話である。 ただ、私の乗る駅の隣、中央線の通る駅で少し降りてくれるので、それを見るのは子気味が良い。 中央線は遅れるから嫌いである。 信じすぎると遅刻するのである。 日本に生まれて恵まれすぎたこの身は、なんでも時間通りに来るものと考えてスケジュールを夢想してしまう。失敗である。 電車はかろうじて、正確。 バスは、どうか。 バスは気ままな秋の空、移ろう女心(男も変わりゃしない)である。きままさの象徴である。 時間通

        • 千枚通しという名

          足におっことしました。千枚通しをです。 ラケットのガットを張っているときに、足に。 落ちていくのを見送った自分がいました。 ああ、落ちたな、みたいなことを思っていました。あの危険物を、見送ったのです。 幸いにして、斜めに落ちたもので、右足のちょっとに刺さりました。ほんの少し、例えるならサッカーのミトマ選手の何ミリだかわかりませんがあれみたいなもんです。どうも例えが下手です。クリスチャンになれば、例え話も上手くなるかしらん。 千枚通しというやつ、実に出来ている。 ものを貫

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        • 書き物一覧
          9本

        記事

          此此斯ういう次第で

          太宰のもの思う葦を読む。 文学とは思いつきをダラダラと述べることをも内包するのだと気づく。 私の書き方の根底には、太宰の文章の書き方が存在しているようだ。無論ある、と書いて消したので必然ではないようだ。 尊敬、憧れ以前に、人は模倣の生き物であるから、先生なんて偉い人間が小さい私にこの人たちは文豪と呼ばれていて、偉いのですなんて教えたもんだから、すっかり太宰の文章が偉いもんだと刷り込まれちまってたようです。 もっとも太宰は人を惹きつける文章を書きやしますが、偉いかと言われると

          此此斯ういう次第で

          三宮から神戸へ!温泉湯巡りバトル!

          早朝、神戸現着。 やってきたぞ神戸。 もっとおしゃれな街かと思っていたが見てみれば道幅の広い新宿-70くらいの街並みがそこかしこに広がっているくらいのものでありまして。というか、駅近くなんてどこもそんなものなのかもしれませんが。 ワクワクするといえば大宮駅周辺のアーケードです。 部活で赴いた際はパチンコ屋とラウンド1くらいしか行かなかったものだが、一種の遊境地としての体裁をなしていたように思います。ただまあ、なんというか私にとってはワクワクするような場所だったのです。大宮

          三宮から神戸へ!温泉湯巡りバトル!

          カスライフ、神戸に着弾

          プロローグ 金がねえ〜!! 遊びに行きて〜!! 大学二年の夏、他の友人たちと行く予定だった台湾旅行が部活の予定によって頓挫した私は狭い部屋でVALORANTをしながらそんな嘆きにも似た叫び声を上げていた。 八月ももう半ば、夏らしいことをするには取り返しのつかないような時期になっていたのである。 一人旅に行くには自動車教習所の期限が迫っていたので、他人とちょろっと旅行に行って、その同伴者の誘いを言い訳にしないことには旅なんてできる身分ではなかったのだ。もちろん身から出た錆で

          カスライフ、神戸に着弾

          青嵐のあとで、について

          痛みを感じるほど鮮烈な、憧憬たる青春。 後悔の切っ先が心を抉るような。 そんなsajou no hana というアーティストの、この曲をご存知だろうか。 本楽曲との出会いは、アニソンとしてであった。 とある科学の超電磁砲Tのエンディングソングとして作成されたこの楽曲はしかしながら、学生・御坂が超常の隣で歩んだ青春の先が明るいものであると謳うものではない。 あくまで曲自体は、作品と分離しているような印象だ。 あくまで私見だが、大人目線で子供時代への憧れを、子供時代の無邪気さを冷

          青嵐のあとで、について

          物思う人の問ふまで。

          脆弱で惰弱で凡庸で平均的な君へ。 文才もなく特化もなく水平線のように穏やかでしかし面白みのない非才な僕へ。 文学とはストーリーテラーのみに非ずと気付きはしたものの、自分が突きつめたい道がStorytelling上にあるのだと思い悩む日々が続く。 技法は、足りているか。技能は、極まったか。あれを読むべきかこれを読むべきか、いや時間はあれど今長期的将来的なことに手をつけたくはないと、悩む感情と矛盾した行動を取る大学生の僕よ。 実に文学的在り方ではないか。 矛盾の葛藤こそ主人公たり

          物思う人の問ふまで。

          事勿れ主義

           事勿れ。  遡れば与謝野晶子も自著のタイトルにしたセリフであるし、僕のような大学生の生活の軸になっている言葉でもある。  太陽が沈み月が昇るように、当たり前のように働き、眠る。  楽しいことと悲しいことがそれぞれの尾を追い回しあっているような日々を過ごしていくうちに、何かを成し遂げようという大志は薄れて消えていったようだ。  無論君死に給ふ事勿れであるし、我死に給ふ事勿れでもある。人を殺すのも、人に殺されるのも勘弁である。  ただただ面白おかしく日々を過ごしていくうちに、ま

          事勿れ主義

          パチンコが面白いわけがない

           チャンスでもないのにチャンスと表記するのをやめてほしい。私は目の前の赤文字に対して強く遺憾の意を表明する。  信頼度約13.7%程度で何がチャンスなのか。役物落下を死んだ目で眺めながら、鬼がかりを待つ。  あ、鬼がかりって言っちゃったよ。頑張って濁してたのに。  左隣に座る金髪の、柄の悪そうな兄ちゃんはイヤホンをしながら大音量でパチンコ玉を弾いている。ライブ会場で曲の雰囲気を考えずUOをぐるぐる回している人間が光害と呼ばれ非難されるのならば、パチ屋の大音声も非難されるべきで

          パチンコが面白いわけがない

          【小説】陸に上がる獣

           今朝はいつも鳴いている鳥の鳴き声が聞こえないな。  起きてすぐ、フライパンを熱しながらそう思った。  いつもより二時間も早く起きたのだから、それも当然か。  そう思う頃にはトーストが焼きあがる音がささやかに響く。  目が冴え始めたあたりで、手元のカップから珈琲の香りが立ち上り、僕を包んでいく。  起きてから30分程度は使っただろうか。貴重な朝の時間をそれだけ削ったにしては、案外普通の朝食が出来上がった。  トーストと、目玉焼き。適当なサラダと珈琲。それが僕の、この家での最後

          【小説】陸に上がる獣

          ギターと解釈の宇宙

           文字を書く傍らで、男児たるもの楽器の一つや二つ嗜んでおかねばならぬという強迫観念からギターを弾いている。  かつては文章表現の拙さの逃げ先としてあったギターであったが、自分の技量の拙さと向き合い、こうして文章を書く癖をつけ始めてからは純粋に趣味として楽しむことができるようになってきた。  私がギターを弾くとき、歌詞の上に押さえるコードがただ描かれただけのサイトを利用している。  そこに弾く時のストロークは斯くあれかし、という指示はない。お世話になっているサイトにすら金を払わ

          ギターと解釈の宇宙

          ひとりごつ

           下北沢の駅で電車を降りる。友人が約束に遅れてくるらしい。  しかし私はどこか楽しい気分で、そのまま新宿行きの小田急線に乗り換えず改札を出る。ここから「私の時間」が始まるのだという予感にも似た感覚は、誕生日に欲しかったものをプレゼントしてもらった幼子のようなワクワクを、私に与えてくれるようだ。  私は人付き合いが苦手だ。特に愛想笑いが苦手だ。集団でいる時に知らないトピックで盛り上がっているのが苦手だ。人といることが苦痛なのではなく、発生する会話に自信が侵食されていく感覚が、苦

          ひとりごつ

          恋愛百戦錬磨

           私は実は驚かれるかもしれないが本当のことを話せば、生まれてこの方、まともな女性と恋愛関係になったことがない。  あちらに行けば宗教勧誘、こちらを見れば思想が強め。背水の陣で望んでいるつもりの恋愛はいつだって四面楚歌でしかなかったようで。女を見る目がないというのならば教えてくれ、なにをもって女性を見ればいいのかを。 「なんかモテるわ」 「なんかモテるのか」 「なんでやろな」  私大に行った友人に相談してみればこれである。小学生の頃から女気が絶えないこのモテ男は中高と培った音楽

          恋愛百戦錬磨

          【小説】カフェ談義

          「野上君。なぜ我々はカフェでわざわざ勉強するのかね」 「受験期を思い出したくないのですよ」  私の問いかけた声は隣人によってにべもなく跳ね返された。  大学一年になってからというもの、私はこの狂った隣人に連れられてカフェというものに度々足を運んでいる。しかし、なぜわざわざカフェに来ているのか。最近じゃあ身体反射的に、何も考えず足を運んでいる気すらしてきた。 「じゃあなにか。君は『きらきら大学生』とやらに憧れてこんな場所に、場所代まで払ってきているのかね」  光るものにただ寄っ

          【小説】カフェ談義