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着想と例えばなし。

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表現のヒントになる、ちょっと新鮮な「視点」や「例え」を。
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才能とレッテル。

才能とレッテル。

エアコンの聞いたオフィスでカタカタとキーボードを叩く。すると、いつの間にやら他愛ない雑談が聴こえてくる。

アイツはできるとか、彼は良い人だとか。仕方のないことだけれど、どうにも好きになれない。

できる人にも、できない時、失敗する時がある。失敗した時にも、発揮されている力や才能がある。

全てを掬う理想論は、行動ベースで評価が行われることではないか。

「あの時の準備は良かったけど、今回はそれが

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夏の日のミニオン。

夏の日のミニオン。

夏休みも終盤戦。

休みと言っても休むのは4歳の息子、その人だけである。本日から私は仕事に戻り、妻は日中、息子にかかりきっきりになる。それは文字通り戦いに他ならない。

ビジネスシーンでは、基本的に「そうですね。」とお膳立てがあるものだ。スーツに負けないくらいみんな社会人を着飾り、物事がパパパッと進んでいく爽快感。こちらは、そうもいかない。

ゆっくり回る室外機、電車の玩具の車輪の具合、絵本に出て

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初めてのリサイタル。

初めてのリサイタル。

2歳9ヶ月。なかなかの腕前だと思う。

僕が、初めて音楽に触れたのは、確か6歳くらいの時。

地元のピアノ教室は、確か二階にあって、窓越しに陸橋をかけあがる車がぼんやり見えた。

家には1台のピアノ。

グランドピアノでは無いけれど、黒くてカッコいいYAMAHA製。両親はきっと「音楽のできる子」に育って欲しかったことだろう。

ピカピカの楽器は、やがてインテリアに成り下がり、やがて従兄弟の家に渡

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年の瀬のZoom忘年会で、僕なりの変わった幸せを実感した話。

年の瀬のZoom忘年会で、僕なりの変わった幸せを実感した話。

「気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど。」

Zoom越しでも分かる赤ら顔は、お酒のせいと見て間違いないだろう。現実世界より少し粗めの画素も、中学以来の付き合いとなれば些細な問題である。声のトーン、もっと言えば、数文字のテキストメッセージからだって読み取れる情報は案外多い。

「高校時代、僕は君のことを"大したこと無い"やつだと思っていたんだよ。」

そうかー、と一度相づちをうつ。驚きや戸惑いはな

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結局、「宝くじ」を買う気分にはなれなかった。

結局、「宝くじ」を買う気分にはなれなかった。

誕生日を目前に控えた12月半ば。昼下がりの晴海通りを、銀座方面から日比谷公園に向かって歩く。何の気なしに羽織ったジャケットの繊維から染み込む冷気。冬支度を始めた街路樹の下を、腕組みしながらゆっくり進む。

「御成門の銀杏、良かったわね。」

確かに。空に伸びる無機質な赤と黄色い地面のコントラストが印象的だった。「ぎんなんの匂いに顔をしかめていたのは誰だっけ。」なんて指摘が野暮なことくらい分かる年齢

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南米冒険記。~ボリビア⑤~

南米冒険記。~ボリビア⑤~

南米冒険記。~ボリビア①~(4,000mからのスタート)
南米冒険記。~ボリビア②~(食事とお腹とバス)
南米冒険記。~ボリビア③~(再会)
南米冒険記。~ボリビア④~(JAPANと塩のホテル)

南米の旅も後半戦に差し掛かっている。

塩湖ツアーは若さとテンションで乗り切ったものの、肝心の体調は全く変わっていない。いったい何なのだろう。最近では身体の変調のサインも前もって感じ取れるようになり、ト

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南米冒険記。~ボリビア④~

南米冒険記。~ボリビア④~

南米冒険記。~ボリビア①~(4,000mからのスタート)
南米冒険記。~ボリビア②~(食事とお腹とバス)
南米冒険記。~ボリビア③~(再会)

「ザップン。」

ここが海なら。車体は塩水に浸かり、あっけなくスクラップ行きなのだが。ツアー用ジープは、モーセのように「道」を作るでもなく、大胆に塩水をかき分けていく。白色(ちょっと茶色)の地面に薄く広がる水。湖のほとりでも “らしき” ものは見えるが、う

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南米冒険記。~ボリビア③~

南米冒険記。~ボリビア③~

南米冒険記。~ボリビア①~(4,000mからのスタート)
南米冒険記。~ボリビア②~(食事とお腹とバス)

ウユニの街につき、バスを降りる。

(朝の露店)

12時間の長旅を終えた到着の感慨にでも耽りたい所だが、さっそくやるべきことが1つ。同乗者2人は、眠そうに目のあたりを擦っている。

実は、ラパス~ウユニ間を、バス組(3名)・鉄道組(2名)に分かれて行動することになっていた。海外旅行にありが

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南米冒険記。~ボリビア②~

南米冒険記。~ボリビア②~

南米冒険記。~ボリビア①~(4,000mからのスタート)

どうやら、友人たちも体調不良のようだ。熱は、朝夕でまちまち。平熱近い時もある。

5人に共通しているのは、「お腹が下る」という症状。何か変なものでも口にしたのだろう。タイ米、フライドチキン、ジュース、・・・あと何を食べたかな。そのどれもがあまりに味気なく、全く印象に残っていない。

ボリビアに着く前から日本食が恋しい。成田空港に戻ったら、

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「竹」が好きだ、という話。

「竹」が好きだ、という話。

最近では食べる年が少なくなった「おせち」。昔は祖父母の家にいくと、デーンと玄関に重箱が鎮座していて、夜が明けるのがひたすらに待ち遠しいものだった。お目当ては「筍」。あの何とも言えない歯ごたえ、みずみずしさ。2段目の数の子と並ぶ、至福のごちそう。僕は、「から揚げ」とか「ハンバーグ」といったものに全く興味のない少年だった。幼少期の味覚は、明確に食感で形成されていた。

当時、両親は共働きで、小学校を出

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仕事のもつ中毒性について。

仕事のもつ中毒性について。

・数独とわたし

あなたは、数独をご存じだろうか。

縦・横9マスずつ、計81マスに1~9の数字を揃えていく、あの「数独」だ。81マスの中には、更に3×3の格子が9個用意されている。その中にも1~9の数字を1つずつ並べなくてはならない。何ともニクい設定だ。

別段、パズルが趣味だとかいうことではない。けれど、出張中の機内で、あのファミリーコンピュータを想われるコントローラと画質の粗いモニタを目にす

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役者な先輩。②

役者な先輩。②

それから、3年後のこと。

突然、先輩が会社に来なくなった。

入院したらしい。
身体的な療養だと聞いた。

実のところ、僕はストレスだと思っていた。
みんなが、そう思っていた。
たとえ”そういう”理由でも、スマートに隠し通してしまう人だったから。

さてと、困った。
思わず頭を掻く。

目の前には、「仕事」がある。
先輩と別(私の1つ上)の先輩。2人がかりでこなしていた仕事が。

先輩は当面入院

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怒りは道具である、という話。

怒りは道具である、という話。

・怒りとは何か

怒りが発露することがある。言い換えれば、衝動的にばーっと言いたくなる時がある。言わなくても、書きたくなる時、書かなくても「代弁してくれる声」に賛同したくなることがある。

怒りが発露する時とはいつだろう。答えは相手をひれ伏せたい時ではないだろうか。「ええい、この分からずや!」と内心思いつつ、ボルテージを上げ、いよいよ融通が利かない時にどす黒い感情が渦巻く。

・道具としての怒り

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スピッツと「にわか」な私。

スピッツと「にわか」な私。

スピッツの歌詞には余白がある。たっぷりとした余白にその時々の意味を添えて、「私の1枚」として完成する。謙虚なまでの抽象さもまた、メロディに負けない魅力の1つだ。

2013の横浜サンセットが無料公開されている。(TwitterのTL、見逃さなくて良かった。)

冒頭、知ったようなことを書いておいておきながら。とても言いにくいのだが。でも、言わねばならない。

実は、スピッツのライブに行ったことが無

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