ひろ

上京→劇団を作って脚本を書く→ディズニーシーでオープン時から舞台大道具→書きたい事が熟…

ひろ

上京→劇団を作って脚本を書く→ディズニーシーでオープン時から舞台大道具→書きたい事が熟成されてきたので→本格的に作家活動を再開。フリーで活動中

記事一覧

さよなら神様

僕のおとんは宗教心がある人でした。でもまじめに一つの信仰を続けるというよりも、人の良さから知り合いや親族に勧められた宗教に次から次へと断りきれず入るという感じで…

ひろ
1年前
6

焼き上がり

「こうちゃん?」 「え、あ、大西くん」 「ここいたかー。いやーこうちゃん変わってないなー」 「・・大西くんも」 「・・ハゲたなーって思ってんだろ」 「いや。別にそん…

ひろ
1年前
2

「白い鳥」

響の仔猫 「おはよー、今日はお仕事お休みの日なんでちょっと寝坊しちゃった、夜は待 ちに待った推しのライブ。半年ぶりだーーー。楽しみ過ぎ」 天使ママ 「眠い、眠い、…

ひろ
2年前
5

「白と黒」

 タキシードにハットの男立っている。 男「皆さん、令和、慣れましたか。私はまだ慣れません。令和と口にするとどうもサイズ 違いのシャツを着せられてる気分になります…

ひろ
2年前
6

帰る人

明日、一人の友達が実家に帰ります。 僕と同い年で、僕と同じ演劇をやりたくて上京してきた彼女は今日家を引き払い、明日夜行バスで地元に帰ります。 最初はヨメの先輩と…

ひろ
2年前
7

いつも冷静な僕が芝居が中止になって少し涙ぐんだ話

今回、去年から2度の延期をしてやっと劇場公演にたどり着いた「LAST&SEX」が中止になりました。陽性者が出たためです。 今。僕の知る限り演劇界は潔癖なほど検温、消毒検…

ひろ
2年前
9

たまに思い出してはアレはなんだったんだろうなーって思う話

子供の頃の話。幼稚園から低学年ぐらいの頃。 いつもオカンと行ってたスーパーへの行き帰りの道に小さなお地蔵さんがありました。 歩道と道路を隔ててる背の低いツバキだか…

ひろ
2年前
2

もうとっくに終わってるはずだった「LAST&SEX」の事。

ついに幕が開きます。石田衣良さん原作「LAST&SEX」 4話中の1話「ラストホーム」の脚色をしました。 脚色コンクールの入選作品です。 思えば脚色ってどうやるんやろうと…

ひろ
2年前
2

きのうに似た今日

死んでいく想像をする。 リアルに緻密に自分の死んでいく様をシュミレーションしてみる。 ベッドに横たわりながら想像を巡らす。 ゆっくりと死んでいく。 じょじょに脈が…

ひろ
2年前
7

来たはずの道

どこかで落としたのかもしれない。 私は今来た道を戻って行く。 地面に目をこらしながら、落としたモノを探しながら歩く。 もう随分戻ってきた。 誰かが拾ってしまったの…

ひろ
2年前
5

12位の11位の私

今日も11位だ。 必ず見るわけでもない。たまにふと目に入るといつも11位な気がする。 11位。どうせなら12位であれと思う。12位ならもうさがりようがないから腹もくくれる…

ひろ
2年前
2

見てない方の世界

自分が見てない時にも川はずっと流れているのかが気になり何度も川を振り返り見る。 全然気にしてないよアピールを背中から漂わせながら川を油断させておいて、猛スピード…

ひろ
2年前
5

「むすびかずら」最終話 咲の手記

私の祖母は奄美でユタをやっておりました。 人の未来が視えたらしく一時は遠方からも人が来るほどだったと言います。 若い頃の霊能力はすさまじかったらしく、時折狐憑き…

ひろ
3年前
4

「むすびかずら」九話 K君の思い

先生の残した手記はここで終わっている。 この手記は先生の鞄の中に残されていたものだ。 先生の消息が分からなくなり随分経ってから、ボランティアで捜索してくれていた…

ひろ
3年前
4

「むすびかずら」八話 蛇目

もじゃもじゃ頭の歯が2本しかない男。 突然現れたその男にもう今日のバスはない事を告げられた私は男の言われるまま、いや男の厚意に甘えてZ町まで車で乗せていってもらう…

ひろ
3年前
4

「むすびかずら」七話 訪問

夕べあれほど見送りは結構と言ったのにK君夫妻は駅まで来てくれた。 昨日見せた切符の時刻を記憶していたらしい。 遠慮などではなく列車の見送りはほんとに苦手だった。…

ひろ
3年前
4

さよなら神様

僕のおとんは宗教心がある人でした。でもまじめに一つの信仰を続けるというよりも、人の良さから知り合いや親族に勧められた宗教に次から次へと断りきれず入るという感じでした。

聖教新聞が毎日3部ずつきてた時もありました、少し毛色は違うけど50万以上する健康になる椅子も買ってきたりしました。

僕が高校生の頃、身内や、うちの家族の周りで不幸なことが続いた時がありました。すると親戚の人達がうちに来ました。

もっとみる
焼き上がり

焼き上がり

「こうちゃん?」
「え、あ、大西くん」
「ここいたかー。いやーこうちゃん変わってないなー」
「・・大西くんも」
「・・ハゲたなーって思ってんだろ」
「いや。別にそんなには」
「いいよ別に気ぃ遣わなくて」
「え、ってかなんで大西くんここに?」
「ここに?じゃないよー。水くさい。なんで俺に連絡よこさない」
「あ、ごめん。なんか、死に方もあれだしもう身内だけでいいかなーって」
「俺も身内みたいなもんだろ

もっとみる
「白い鳥」

「白い鳥」

響の仔猫 「おはよー、今日はお仕事お休みの日なんでちょっと寝坊しちゃった、夜は待 ちに待った推しのライブ。半年ぶりだーーー。楽しみ過ぎ」

天使ママ 「眠い、眠い、眠い、眠い、何曜日だ今日」

響 「昨日も遅くまでリハだったけど、やっと今日俺のかわいこちゃん達に会える と思ったら、こんな早くに目が覚めてしまった。久しぶりの早起き。久しぶり にワイドショー見る。国分君ってこんな歳とってたっけ。びっく

もっとみる
「白と黒」

「白と黒」

 タキシードにハットの男立っている。

男「皆さん、令和、慣れましたか。私はまだ慣れません。令和と口にするとどうもサイズ 違いのシャツを着せられてる気分になります。元来、人間は変化が苦手です。こんなにもテクノロジーが発展し、様々なモノが合理的に進化をしていっているのに人 間の心はなかなかついていけません。
 例えば、まあ私はリアリストです。非科学的なモノ、神様も信じていません。お化けを 信じられ

もっとみる
帰る人

帰る人

明日、一人の友達が実家に帰ります。
僕と同い年で、僕と同じ演劇をやりたくて上京してきた彼女は今日家を引き払い、明日夜行バスで地元に帰ります。

最初はヨメの先輩として出会ったその友達は、すぐ近所に住んでいた頃もあり、しょっちゅう酒を持ってきてはみんなで飲みました。
僕と彼女も人見知りだったんだけど同い年で演劇好きという事もありすぐに仲良くなりました。

食べることが大好きな彼女は、産地直送の生きた

もっとみる
いつも冷静な僕が芝居が中止になって少し涙ぐんだ話

いつも冷静な僕が芝居が中止になって少し涙ぐんだ話

今回、去年から2度の延期をしてやっと劇場公演にたどり着いた「LAST&SEX」が中止になりました。陽性者が出たためです。

今。僕の知る限り演劇界は潔癖なほど検温、消毒検査などの感染予防に努めています。
この座組も例外ではありません。だからこそ1人でも陽性者が出れば即座に判明できるシステムになっていて、しっかりとそのチェック機能が働いていたからこその結果だと思っています。
なので公演中止は仕方がな

もっとみる
たまに思い出してはアレはなんだったんだろうなーって思う話

たまに思い出してはアレはなんだったんだろうなーって思う話

子供の頃の話。幼稚園から低学年ぐらいの頃。
いつもオカンと行ってたスーパーへの行き帰りの道に小さなお地蔵さんがありました。
歩道と道路を隔ててる背の低いツバキだかなんだかの植樹が一部途切れていて、そこにお地蔵さんがいました。

祠に入ってるわけでもなく、ただ小さなお地蔵さん(20センチぐらい?)がぽつんといました。

僕はスーパーの行き帰りいつも手を合わせるわけでもなくただなんとなくお地蔵さんの存

もっとみる
もうとっくに終わってるはずだった「LAST&SEX」の事。

もうとっくに終わってるはずだった「LAST&SEX」の事。

ついに幕が開きます。石田衣良さん原作「LAST&SEX」

4話中の1話「ラストホーム」の脚色をしました。
脚色コンクールの入選作品です。

思えば脚色ってどうやるんやろうと、手探りで指定されてた石田衣良さんの作品を読んだのももうおととしのこと。

読んですぐこの作品しかないと思って「ラストホーム」を選び舞台作品へと再構築していきました。

内容は深く言いませんがホームレスの話です。
そして僕は勝

もっとみる
きのうに似た今日

きのうに似た今日

死んでいく想像をする。
リアルに緻密に自分の死んでいく様をシュミレーションしてみる。

ベッドに横たわりながら想像を巡らす。
ゆっくりと死んでいく。
じょじょに脈が弱くなっていく、意識が遠のいていく。子供の頃の事を思い出す。自分の事を傷つけた人、自分が傷つけてしまった人の事を思い出す。
そう悪くもない人生だったんじゃないかとか思ってみる。
そして気がつくと眠ってる。
けれど眠っている僕にはそれが眠

もっとみる
来たはずの道

来たはずの道

どこかで落としたのかもしれない。
私は今来た道を戻って行く。
地面に目をこらしながら、落としたモノを探しながら歩く。

もう随分戻ってきた。
誰かが拾ってしまったのだろうか。

そもそもほんとに落としたのだろうか。
そもそも私は落とすようなモノを持っていたのだろうか。

何を落としたかも何を持っていたかもあやふやになってきた。
しかし私は来た道を戻り続ける。
落としたモノを探しながら。

顔を上げ

もっとみる

12位の11位の私

今日も11位だ。
必ず見るわけでもない。たまにふと目に入るといつも11位な気がする。

11位。どうせなら12位であれと思う。12位ならもうさがりようがないから腹もくくれる。
「今日12位でさ」と会話の糸口にもなる。
あわよくば同情さえしてもらえる。
12位がうらやましくさえ思えてきた。

もうそうなるとほんとの12位は11位なんじゃなかろうか。

そうだきっと11位が12位なんだ。

1番不幸じ

もっとみる
見てない方の世界

見てない方の世界

自分が見てない時にも川はずっと流れているのかが気になり何度も川を振り返り見る。

全然気にしてないよアピールを背中から漂わせながら川を油断させておいて、猛スピードで振り返る。

何度もそれを繰り返す。
けれど川は流れている。
世界は私と無関係で少し安心した。

「むすびかずら」最終話 咲の手記

「むすびかずら」最終話 咲の手記

私の祖母は奄美でユタをやっておりました。

人の未来が視えたらしく一時は遠方からも人が来るほどだったと言います。

若い頃の霊能力はすさまじかったらしく、時折狐憑きのようになることもあったようで、夜中突然叫びだしたり商店の品物を勝手に食い漁ったりしたりでほんとにに大変だったと祖父がよく話してくれました。

私が産まれる頃にはもう祖母たちは奄美を離れており霊能力も無くなっていました。なので私の記憶の

もっとみる
「むすびかずら」九話 K君の思い

「むすびかずら」九話 K君の思い

先生の残した手記はここで終わっている。

この手記は先生の鞄の中に残されていたものだ。

先生の消息が分からなくなり随分経ってから、ボランティアで捜索してくれていた人がZ町の山中で鞄を発見した。

その鞄は木のツタに複雑に絡みつき、幹にのめり込みそうなほどの状態であったらしい。

ボランティアの人は首をひねりながら、最近ツタに絡まったとは思えないほど木と一体化していたと言っていた。

鞄の中は原稿

もっとみる
「むすびかずら」八話 蛇目

「むすびかずら」八話 蛇目

もじゃもじゃ頭の歯が2本しかない男。

突然現れたその男にもう今日のバスはない事を告げられた私は男の言われるまま、いや男の厚意に甘えてZ町まで車で乗せていってもらう事にした。

不安がなかったと言えば嘘になるが、これも何か導きのようなモノなんだろうと腹をくくった。

もじゃ男の車は、サビだらけの軽ワゴン車で走り出すと尻がむずがゆくなった。

「先生はついてますな。あそこに一日いても、人っ子一人会わ

もっとみる
「むすびかずら」七話 訪問

「むすびかずら」七話 訪問

夕べあれほど見送りは結構と言ったのにK君夫妻は駅まで来てくれた。

昨日見せた切符の時刻を記憶していたらしい。

遠慮などではなく列車の見送りはほんとに苦手だった。今生の別れでなくとも車窓から小さくなっていく知己を見ていると引き裂かれるような、二度と会えぬような気がして苦しくなってくる。
なので、列車の中ではしばしセンチメンタルな心持になっていた。

列車が動いてしばらくしてから、咲さんが持たせて

もっとみる