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おばさんと電車と死体【言い訳②: 質問の答え】
ひよこ初心者さんからの質問です↓
考えてみれば、私はリレー小説ならそこそこ経験があるほうなので…
「夢見る猫はしっぽで笑う」(拝啓あんこぼーろさんと共著)
「駅のトイレ。」(拝啓あんこぼーろさんと共著)
「ノモリクヲノミカ」(拝啓あんこぼーろさん+葵さんと共著)
(※下記マガジンに収録↓)
みんなが読んでくれたこの機会にちょっと考えて、答えてみますね。なんか参考になるかも。ならないかも。
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑯ : 終】
第⑮話はこちら
カフェ・アリスの厨房の近くの床に、ダンボールがうずたかく積まれている。飲み物と調味料や食品の箱。中嶋さんは厨房で料理を作り、従業員の宇佐美さんは、メモを片手にぶつぶつ言いながら箱をチェックしたり、従業員用のドアから出たり入ったりしている。
ぼくは、宇佐美さんの後ろ姿を眺めて、何となくうしろめたい気分で席に座っている。新しいシェフコートがまだ届いていないらしく、ラフな服装の上
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑮】
第⑭話はこちら
ぼくは立ち上がって、騒ぎが起きている方向を眺めた。
ぼくと同じように、立ち上がっている人たちの頭がパーテーションから突き出ているのが見える。フロアの端のほうで、薄いピンク色のセーターを着た、髪が長くて背の高い女を、四人の警官が銃を構えて取り囲んでいる。女のセーターにはあちこちに赤い染みがついている。警官は制服を着ているのがふたり、私服がふたり。「落ち着け!」「抵抗はやめなさい
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑭】
第⑬話はこちら
井上吐夢は突然、音もなく地面に吸い込まれた。CATはとっさに手を伸ばしたが、穴のなかの暗闇に彼の驚いた顔をみた次の瞬間、砂浜は元に戻っていた。
CATは立ち上がり、大場千鳥を睨みつけた。
「彼になにをする気だ」
大場は肩をすくめた。
「ちょっとだけ悪あがきしてみようかなと思って。特に意味はないけど、しいて言うならあなたへの嫌がらせ」
「ふざけたことを。あなたと中嶋がしていたこ
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑬】
第⑫話はこちら
色とりどりの紙吹雪がきらめきながら舞っている。
飾り立てた巨大な山車が次々と通りを通過してゆく。いろんな動物を象ったカラフルな像、枝を四方に伸ばし宝石の実を鈴なりに実らせた大きな木、風変わりな装飾と美しい尖塔が立つ豪華なお城……。
音楽が空気を震わせて、派手な羽飾りの衣装を身にまとったダンサーたちが舞い踊っている。それらのまわりを、大勢の客が囲んでいた。ありとあらゆる年齢、
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑫】
第⑪話はこちら
尻の下の、椅子の固い感触はいつの間にか消え失せて、ぼくはなすすべなく、冷たい闇の中を落ち続ける。
……落ち続けているはずだ。でも周囲は360度、果てしなく続く闇なので、自分の状況に確信が持てなくなってきた。耳元でうなる風切り音はまだ微かに聞こえているけれど、自分の目を開けているのか閉じているのか、それすらあやふやだ。
手先と足先から冷たさが伝わってきた。食べたスイーツと酒のせ
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑪】
第⑩話はこちら
CATの頭をみておばさんは歓声をあげた。
「わっ!なにその黒猫頭、かっこいい!!……ねえ、あなた何者?今まで会ったことない感じがするんだけど」
CATは、黒くなめらかな毛で覆われたひとの手で、自分の髭に軽く触れながら
「井上君が名前から連想して、この見た目になってるんだと思うね。私はCAT、警視庁サイバースペース対策班のものです。大場千鳥さん、捜査にご協力お願いします」
「警
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑩】
第⑨話はこちら
先ほどと同じ場所で、中嶋とおばさんは向かい合った。おばさんはまた尋ねた。
「どうする?」
中嶋は肩をすくめて質問で返した。
「どうすりゃいいと思う?……最近ますます、死を実感しにくくなってんだよ、困ったことに。腹を刺される程度じゃ全然ダメ、首吊りもダメ、水で溺れてもダメ。やられた瞬間はいけたかな、と思うんだけど、やっぱダメなんだよなあ。死にすぎたのかな」
おばさんは首を傾げ
おばさんと電車と死体【リレー小説/⑨】
第⑧話はこちら
数十分後。
ぼくとCATはホテルを出ると、パラソルのところまでゆっくり歩いた。
CATは白いシャツを着ていて、ぼくはブルーグレーのパーカーとギャルソンエプロンを身につけている。ぼくはモブのふりをするために、まじめくさった顔でステンレス製の冷水ポットを抱えている。
すみ切った空と青い海を背景に、白いパラソルが微風にはためいている様子は、旅行会社のチラシの写真みたいに美しい