moment88 side:unkown


彼女は洗濯物を正座して畳んでいた。


なんか、違和感がある。


「なんかあった?」

「ん?どうして?」

「なんか…いつもと違う気がする」

「そう?なんにもないけど」

「今日お友達に会ったんじゃなかったの?楽しくなかった?」

「楽しかったよ」

「…」

彼女は小さくため息をついた。

「…

どうして、わかってほしいって思ってしまうんだろうね。勝手に話して、勝手に期待して、勝手に裏切られて勝手に悲しむ。私の頭の中で考えつくことに対して、理解してほしいって、どうして思ったんだろう。押し付けがましいよね。」

「結局人は分かり合えない。」

「そう。調子に乗ったの。」

「…」

「私、普通じゃないって結構言われるんだけどね。ちょっと悲しいの。普通なんて幻想に過ぎないってのもわかってるし、普通の定義もわからないのに人は普通っていう言葉を使うってのもわかってるんだけど、私とあなたは違うって言われたみたいな気がして、たしかに違うんだけど、なんか断ち切られる感じがして。同じ人間のはずなのに。仲のいい人に言われると余計に悲しくなって。」

「…」

「分離された感じがして、悲しい気持ちになるの。でもこの感覚も結局他の人には伝わらないでしょ?どうしようもない気持ちがたまっていく。それはどこに置けばいいのかなあって。」

「だから雨に打たれるんでしょ?」

「そう。だけど笑われちゃった。病んでるねって。そうなんだ、って思った。雨に打たれたい気持ちは、笑われるようなものでもあるんだなって。

人って楽しい時も悲しい時もどっちもたくさんあると思うし、それがいいとか悪いとかじゃないはずなんだけど、病んでるって言われるとなんか…嫌な気持ちになるし…」


「まあ、おいでよ」

彼女はソファに座るオレのとなりに座った。


「きっとオレらだって完全に分かり合えることはないと思うんだけど、ただオレはお前に、そうだなあ、安心する気持ち?、でいっぱいになってくれればいいかなあって思うのね。別にいつも楽しくて笑ってて幸せ、とかじゃなくたっていいから。」

「うん…」

「はるかは普通でも普通じゃないのでもなく、はるかははるか、でしょ?それでいいんだよ。誰に何言われてもそれでいいよ。大丈夫。考え方が間違ってるとか、おかしいとか、そんなことはないよ。

オレたちはただの人間だよ。」


「…同じ?」

「そう。同じ。」



「オレとお前は同じ、ただの人間だよ」



彼女は満足げに、にこにこした。
オレの肩に、頭を預けて。

「どうしたの?にこにこして」



「あんしんあんしん」


ふふっと笑いながら彼女はそう言った。


人に期待したらよろしくないことなんて、彼女はよくわかってるんだけど、人間そんなにうまくいかない。

もちろんお友達はひとつも悪くないし、でも彼女が悪いわけでもない。


ただ彼女は人より敏感なだけ。





できるだけオレは
わかってあげられる存在でいたい。





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