shibata ryo

介護小説を書いています。よろしくお願い致します。

shibata ryo

介護小説を書いています。よろしくお願い致します。

最近の記事

小説 介護士・柴田涼の日常 162 家事は手早く済ませる倹約家の高橋さん、食席の変更、安西さんと同類の間宮さん

 倹約家の高橋さんは、二週間に一回しか買い物に行かないそうだ。業務用スーパーに行き、カットされた野菜とかを使うと生ごみが出ないし、調理も手早く済ませることができる。ちゃっちゃと家事は済ませて早いときには二十一時にはもう寝てしまうそうだ。「わたしは家事は手早いんですよ。一日七時間寝ないとダメだから、早く済ませて早く寝ちゃうんです」「戦争ゲームをしていたときも早く寝てたんですか?」「戦争ゲームしてたときは夜更かししてましたね。でももう引退したから」。一緒にいた緑川さんに、「二十二

    • 小説 介護士・柴田涼の日常 161 起こしたあとは何もしなかった安西さん、束縛されるのが嫌いな青山さん

       翌日は早番。早くに寝過ぎてしまい、夜中に目が覚めてしまった。ラジオを流しつつベッドでゴロゴロしていたが、なかなか寝付けない。明け方ころになってようやく眠くなり、気づいたら目覚ましが鳴っていた。早起きの身体になっていないため、起きるのがとてもつらい。  出勤すると安西さんが夜勤だった。安西さんは一階のBユニットに異動になったが、夜勤はまだEFユニットに入っている。「半分ずつしか起こさなくていいですか?」と言っていたが、ほとんど全員起こしてくれていた。しかし、そのあとは何もし

      • 小説 介護士・柴田涼の日常 160 飲むと不穏になる便秘薬、新車がきた

         トキタさんは、夕食後トイレに立ったときに、尿失禁してしまい、ズボンを伝って靴下と靴までびしょびしょに濡れてしまった。靴はあとで浴室で洗浄し干した。  このところ覚醒状態の良くないヨシダさんは、朝はヨーグルト一個、昼は八割ほど食べたが、夕方は一人しかいなかったのでナースに介助してもらい三割ほどで口が開かなくなってしまったようだ。この日から、痒み止めの薬をやめたそうだ。その薬が睡眠を誘発していたのかもしれないとのことで、寺田次長が「ヨシダさんの覚醒状態を見ておいてください」と

        • 小説 介護士・柴田涼の日常 159 施設全体の節電対策、キサラギさんの膀胱留置カテーテル抜去

           翌日は日勤。ゲームを遅くまでやっていたので眠たい。頭が働かないまま出勤すると、早番の真田さんが「ヨシダさんまで手が届かなくて、いま、この人もやっと起きたとこ」とキッチン横につけたオーバーテーブルで遅めの朝食を食べているセンリさんを指して言った。  僕はお風呂係だったので、バイタル測定をしてからヨシダさんの朝食介助に入ろうと思っていた。測定が終わってさあヨシダさんの食事介助に行こうと思ったら、朝食の廃棄時間を過ぎてしまっていた。朝食提供から二時間を経過したら廃棄しないといけ

        小説 介護士・柴田涼の日常 162 家事は手早く済ませる倹約家の高橋さん、食席の変更、安西さんと同類の間宮さん

        • 小説 介護士・柴田涼の日常 161 起こしたあとは何もしなかった安西さん、束縛されるのが嫌いな青山さん

        • 小説 介護士・柴田涼の日常 160 飲むと不穏になる便秘薬、新車がきた

        • 小説 介護士・柴田涼の日常 159 施設全体の節電対策、キサラギさんの膀胱留置カテーテル抜去

          小説 介護士・柴田涼の日常 158 クリスマス会のあとの夜勤、高齢者にも性欲はある、相手を困惑させないためにもお礼は言ったほうがいい

           昨日は夜勤だった。出勤前の夕方に一時間半ほど寝られたので、身体は楽なほうだった。それにクリスマス会があって、ご利用者たちはみんな疲れてよく寝ていた。起き出しもほとんどなく、平和な夜勤だった。しいて言えば、休憩時間中にほかのユニットから当直リーダーの呼び出しがあったため、三十分しか休憩が取れなかったことくらいだろうか。  熱発していたヨシダさんは昨日一日ほとんど何も食べておらず、解熱剤で三十七度台に踏みとどまっているという状態だった。発熱の原因は不明だ。夜間帯も三十七度台だ

          小説 介護士・柴田涼の日常 158 クリスマス会のあとの夜勤、高齢者にも性欲はある、相手を困惑させないためにもお礼は言ったほうがいい

          小説 介護士・柴田涼の日常 157 元警察官の成田さん、自分でほとんどぜんぶ食べてしまうキサラギさん、熱発するヨシダさん

           翌日は遅番。出勤すると「大丈夫? みんな心配してたけど」と早番の真田さんに言われた。「昨日はなんだかパワーダウンしてたって聞いたけど」と顔をまじまじと見られながら言われた。そりゃ疲れますよ、間宮さんに振り回されっぱなしだったし、とは口が裂けても言えない。  ヨシダさんは調子が悪く、朝食は離床して食べたが、その後はベッドで臥床していた。声かけしても応答はなく、覚醒状態も良くないので、延食してあとでベッド上で介助することにした。  真田さんはキサラギさんの食事介助をしてから

          小説 介護士・柴田涼の日常 157 元警察官の成田さん、自分でほとんどぜんぶ食べてしまうキサラギさん、熱発するヨシダさん

          小説 介護士・柴田涼の日常 156 味噌汁の日、大幅な人事異動

           今日は日勤だ。出勤すると今日は「味噌汁の日」だということがわかった(ユニット内で味噌汁を作ることで味噌汁の香りを楽しむという狙いなのだろうか。いまだにユニットで味噌汁を作る意義がわからない。ご利用者が作るというのならわかるが、作れるご利用者は誰もいない)。キッチンに味噌汁の具材が置いてあったからだ。しかし、味噌汁用のお鍋を返却してしまったようなので、それを早番の平岡さんに伝えると「取ってきます」と言って取って来てくれたが、あいかわらず態度はそっけない。平岡さんはお風呂に入れ

          小説 介護士・柴田涼の日常 156 味噌汁の日、大幅な人事異動

          小説 介護士・柴田涼の日常 155 夢も希望もない緑川さん、仕事場が戦場になりつつある

           休憩室にCユニットの白井さんが自動販売機の飲み物を買いに入ってきた。 「お疲れさまです。あれっ、白井さん、何番ですか?」 「緑川先輩、お疲れさまです。今日は早番で、もう帰るんですよ。なんとも気持ちいいものですね。これからまだ残って働いていかなくちゃいけない人を横目に見ながら颯爽と帰ることができるなんて。って、オレ、スゲーヤなヤツじゃないですか」 「もう、Cユニットの遅番めちゃめちゃ大変じゃないですか」 「緑川先輩なら大丈夫ですよ。先輩の生き様を見せてくださいよ」

          小説 介護士・柴田涼の日常 155 夢も希望もない緑川さん、仕事場が戦場になりつつある

          小説 介護士・柴田涼の日常 154 キサラギさんが帰ってきた、早速洗礼を受ける緑川さん

           今日は遅番だった。出勤すると高血糖で入院していたキサラギさんが退院していた。ご家族は胃瘻を造ることには同意しなかったようだ。病院ではほとんど食事を取れず点滴だけだったみたいだが、ベッド上で食事介助してみると、ひと口は小さいながらも飲み込みは早い。食事形態はペースト食だ。むせ込むことなくどんどん召し上がる。外部から帰ってきたばかりなので三日間は居室隔離をしなければならないが、少し席を外してまた戻ってくると、お味噌汁を自分で飲んでいた。オーバーテーブルの足がベッドの足に当たって

          小説 介護士・柴田涼の日常 154 キサラギさんが帰ってきた、早速洗礼を受ける緑川さん

          小説 介護士・柴田涼の日常 153 「ケライにしてください」と頼むナシタさんに癒される、映画『アバター』

           ナースの高橋さんがお昼の薬箱を回収し、夕方と翌朝の薬箱を渡しに来たとき、「柴田さーん、金利が上がって株が暴落してるのよ。わたしの頭は混乱状態よ」と言っていた。株もやらず住宅ローンも組んでいない僕にはさして影響はなさそうだ。  休憩時、緑川さんと一緒になったので、この前角田さんから聞いた話を振ってみる。 「Dユニットのリーダーの野原さんってケチなんですか?」 「うーん、オレの口からはなんとも言えないなあ」 「なんでですか?」 「回り回って相手の耳に入ったらイヤだもん

          小説 介護士・柴田涼の日常 153 「ケライにしてください」と頼むナシタさんに癒される、映画『アバター』

          小説 介護士・柴田涼の日常 152 間宮さんが動くと周りを巻き込んで疲弊させる

           翌日は遅番。間宮さんが早番だった。午後から間宮さんが三人お風呂に入れると言い出した。明日、平岡さんが六人も一人で入れることに対する配慮からだ。間宮さんが動くと周りを巻き込んで疲弊させるので、僕はなるべく余力が残るように早め早めに仕事を終わらせておく。  しかし、思うように行かないのが介護の仕事だ。思うように行かないから面白くもあり、大変でもある。排便マイナス六日だったナシタさんは十一時頃多量の泥状便が出ていたようだが、昼食後にトイレ誘導すると、オムツカバーの脇から泥状の便

          小説 介護士・柴田涼の日常 152 間宮さんが動くと周りを巻き込んで疲弊させる

          小説 介護士・柴田涼の日常 151 自分本位の間宮さんと二人のときは疲れる

           夜中に間宮さんから連絡があり、明日のお風呂介助を代わってくれないかとのことだった。シフトがキツイからという理由だ。僕も夜勤明けの早番でキツイのは同じだ。その頼み方があまり丁寧なものではなかったのもあって少しイラッとしてしまったが、仕方ない、僕が一番若いんだし、と思いしぶしぶ承諾した。しかし、公平な負担とは思えず、不満は残った。せめて、次のお風呂を代わるからここはお願いしてもいいですか、とかいう話なら納得はいくが。 さらにリーダーの平岡さんからも夜中に連絡があり、明日は理美

          小説 介護士・柴田涼の日常 151 自分本位の間宮さんと二人のときは疲れる

          小説 介護士・柴田涼の日常 150 タナベさんの転倒事故、悪運の強い真田さん

           翌日は夜勤。お昼まで寝て、それから寝転がりながらゲームをする。そんなに疲れないので悪くはない。  夜勤では、明け方の五時五十分にタナベさんの転倒事故が発生した。タナベさんは以前にも朝方になってカーテンを開けようとして転倒した事故を起こしていたが、ついに僕のときにそれが起こってしまった。タナベさんのベッドには離床センサーがついていて、ベッドから起き上がったらコールが鳴るようになっているが、そのコールが鳴ったとき、僕はセンリさんの離床介助をしていた。しかもPHSをリビングに置

          小説 介護士・柴田涼の日常 150 タナベさんの転倒事故、悪運の強い真田さん

          小説 介護士・柴田涼の日常 149 阪本リーダーの介護方針、傷だらけのヨシダさん

           翌日からは二連休。休みの日はあっという間に過ぎ去ってしまう。ゲーム関連の備品についてあれこれ調べていたら終わってしまった感じだ。肝心のゲームをする時間がなかなか取れない。ゲームをする時間を確保するために、その他のやるべきことはなるべく早く片付けてしまう。寒くなってきて散歩に出かけるのも億劫になってきたが、外に出る動機づけが出来たのは良かった点かもしれない。悪い点は、どうしても宵っ張りになりがちなところだ。区切りのいいところまで進めようとするとなかなかやめられなくなってしまう

          小説 介護士・柴田涼の日常 149 阪本リーダーの介護方針、傷だらけのヨシダさん

          小説 介護士・柴田涼の日常 148 CユニットとDユニットの問題

           休憩時間には、Dユニットの角田さんと一緒になった。最近AユニットからDユニットに異動になった角田さんは、ここで二年半くらい働いている男性介護士だが、介護の仕事をする前はコンビニの夜勤などで働いていたようだ。その後親の介護があり、その介護が落ち着いたときに何をしようかと探していたところ、介護の仕事に就くのもいいんじゃないかと勧められ、専門学校で四ヶ月ほど学んだあと、ここに来たらしい。ほんとうは、身近に障碍者の人たちが多かったので、障碍者を支援する仕事に就きたかったようなのだが

          小説 介護士・柴田涼の日常 148 CユニットとDユニットの問題

          小説 介護士・柴田涼の日常 147 トキタさんの嘔吐

           翌日は早遅対応の日遅。遅番の時間より二時間早く出勤し、その分が残業となる。安西さんが抜け、四人になってしまったので、お風呂介助の都合上、どうしても残業が必要になってくる。お風呂に入れているときは、フロアを見ている人がいないといけないからだ。  この日は、ヨシダさんの調子が悪く、前傾が強くて傾眠がちだったため臥床対応していたが、夕食時は一人しかいないので、夕食前に離床してもらいリビングに連れて来たところ、トキタさんがお昼のけんちんうどんを嘔吐してしまっていた。今日から「全粥

          小説 介護士・柴田涼の日常 147 トキタさんの嘔吐