マガジンのカバー画像

課題(テーマ)副題の物語

12
ある言葉を意識しながらも主題にしないで物語風に詩を書いた作品です
運営しているクリエイター

記事一覧

詩『病院の桜』

題名
『病院の桜』
(隠しテーマ・春爛漫)
あなたがいない初めての春です
去年は病院の駐車場で桜を見ました
押す車椅子さえ
長く座れなくなっていたけれど
私がどうしても見せたくて
連れて行った

あなたはにっこりと笑って
「きれーねぇ!」って言うと
疲れたように目をつむって眠った
私は残された時間に焦っていて
あの頃はいろいろ無理をさせていた
奇跡が続いて
死なないんじゃないかって
本気で考えてた

もっとみる

詩『入学式』

題名
『入学式』
(隠しテーマ・誰よりも、ずっと)

入学式。
期待と不安に押し潰されそうな会場には
スマホをこちらに向けた親たちがいた。

同じ新入生には
ニコニコしてる者や
ガッツポーズして
親のカメラに写ろうとする者
ひどく緊張してうつむき
つまづいてる者
早くも友達を作っている者
ひとり言を喋っている者

先生も様々だ。
笑ってる、にらんでる、苛々してる、無表情、
年齢も幅広い。

私は「

もっとみる

詩『親孝行』

題名
『親孝行』
(隠しテーマ・これからも、ずっと)

私は、これからも、ずっと。
そう、見慣れた部屋で時を過ごし、
老いて、死ぬ。

引きこもり?を始めたときに、
覚悟はしていた。

人生を捨てたのだ。
心臓は動いているが、
自殺したのだ。

これからも、ずっと、
親に迷惑をかけて心配もされるだろう。

生きていることだけが、
親孝行だから。

世間的には無能で無駄な、
生ゴミだろう。

親孝行

もっとみる

詩『河川敷』

題名
『河川敷』
(隠しテーマ・沈む夕日)
昔、おじいちゃんと河川敷を散歩していた。
ある日、沈む夕日を見ながら、
「夕日はまるで青春の涙と思わんか?」
急にそんなことを聞かれた。

燃え尽きることも出来ず、
やり残したこともいっぱいあって、
濃く朱色に染まるのは、
泣いて腫らした目のようじゃ。

「どうしたん? じっちゃん」
「詩人みたいじゃ」
おじいちゃんは耳を触りながら、
聞こえない振りをし

もっとみる

詩『オンナともだち』

題名
『オンナともだち』
(隠しテーマ・君の目を見つめると)

 彼女は職場が同じで仕事以外ではほとんど話さなかった。

 ある夜、送別会で隣の席に座ったことがあって、お酒のせいもあったのか会話が盛り上がった。
 それから時々、二人でお酒を飲むようになった。
 彼女は明るい陽気なキャラに映っていたけど、彼氏が働いては「オレに合わない」と言って仕事を辞めることに振り回されて悩んでいた。だけど本気で彼

もっとみる

詩『はつ恋』

題名
『はつ恋』
(隠しテーマ・星空の下で)

偶然ばったり 地元のお祭り
初めて見た 君の私服は可愛すぎて
それからクラスで 意識をしてしまい
視線が合えば 慌ててそらした

母親ふたりが 仲良くなってて
流星群を みんなで見たよね…あの公園で
好きとも言えずに 卒業してしまい
十年以上? 大人になってた

はつ恋は
いつも同じひかりを届けてくれる
星空の下にいるように
君のこと
いまも他人と比

もっとみる

詩『さよならの予約』

題名
『さよならの予約』
(隠しテーマ・それでいい)

このお店はパスタが人気なの
このメニューがいいんじゃない?
「それでいい」

今年の流行ならこんな感じだけど?
さすが私!その服似合ってるじゃん
「それでいい」

今度の日曜日どこにゆく?
久しぶりに遊園地で遊びたいなぁ
「それでいい」

たぶん、わかってる

それがいい、これがいい、君がいい
あの日のあなたは、もういない

それでいい、これ

もっとみる

詩『プレゼント』

題名
『プレゼント』
(隠しテーマ・1つだけ)

私の家は貧乏でした
だから、幼い頃は我慢しました
誕生日とクリスマス
一年に二回だけ
欲しいものを買ってもらえる

小学高学年になると
いつも母と交渉しました
1つだけ?

母も負けません
1つだけ!

ある年のクリスマス
姉が私に言ってきました
1つと1つ、足さない?
そして
何万もするゲーム機
買わない?

考えてみれば奇妙です
数千円と数千円

もっとみる

詩『くだらない日々』

題名
『くだらない日々』
(隠しテーマ・大切なもの)

 ぼーっとしたり、テレビを見たり、ゲームをしたり、だらだらスマホでSNSを眺めていたり、時間の無駄遣いは天才だった。

 学校の授業は、いかにも聞いてるふりして空想の世界へ飛んでいた。気づけば?好きな子の横顔を盗んで見ていたことは毎度のこと。

 親の言うことは聞かず、逆らい反発することがカッコいいとさえ思ってた。

 社会の歯車に順応しよう

もっとみる

詩『別れ話』

題名
『別れ話』
(隠しテーマ・エイプリルフール)

 エイプリルフールはいろいろ諸説あるけれど、イギリスのオークアップルデーや、フランスの旧正月を貴族が祝ってた説や、インドの揶揄節なんかもあって、午前中しか嘘は駄目って五月の祭りだったオークアップルデーのしきたりが近年広がっただけで…、

 うん、うん、うん、へー、知らなかった、すごい、よく知ってるねー、

 男は知識を競い合い優位に立つ会話が好

もっとみる

詩『プラットホーム』

題名
『プラットホーム』
(隠しテーマ・幸せに)
新幹線の上りのプラットホーム
荷物は日付指定で送ったらしい
遅めの桜が駅のベンチまで舞い落ちる
君も薄めのピンク色の洋服で
女友達とはしゃいでた

発車のベルと音楽が鳴り
イカツい鼻の天狗のようなヤツがくる
お腹をすかした餓鬼のように
乗客たちを食べ尽くす

ガラスの窓越しに
泣きながら必死に手を振る君がいる
恋じゃなく、
友達を選んだ未来の切符

もっとみる

詩『閉店時間』

題名
『閉店時間』
(隠しテーマ・何気ないふり)

 チリン、チリチリリン。

 鈴の付いた定食屋の古いドアを開けたように、賑やかな音を響かせてあなたは出て行こうとする。
 後悔という、お釣りも受け取らず、たくさんの管を付けたまま、酸素マスクは曇ってる。

 私を泣かせないためか、いつもの優しい顔で、穏やかな顔で、何気ないふりで、密やかにあなたは死にました。

 何気ないふりで、しばらく呆然として

もっとみる