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征天霹靂X

15
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征天霹靂X(15)

征天霹靂X(15)

前話

15:エクソサイド3日前。「大丈夫ですかっ!?」
「ああ……支障は無いぜ、はぽみ」
 めちゃくちゃに荒らされたカラオケルーム。床にぶち撒けられすっかり冷めた食事を横に、鶯雀は漸く受け応えができるまでに回復した。並の人間とは思えぬ回復速度であるが、これはひとえに体内を巡る退魔のエネルギーによるもの――らしい、と鶯雀は聞いている。
 兎も角も、回復はした。業務に支障は無い。
 若干のフラつきを

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征天霹靂X(14)

征天霹靂X(14)

前話

14:海上サバト。悪魔の目的。 絶句した。
 それ以外にできた反応とすれば気絶だが、この1日での異常な経験の数々が途絶えさせたのは、精々言葉くらいなものだった。
 JKの滑らかで細い体も、ささやかな膨らみや窪みも、何もそそられない。
 それだけ全身に、70もの口が蠢いていた。

「セーレだぁ」
「久しぶりだな」
「ったく探したんだぜ。人間臭くなりやがって。おえー」
「しおかぜおいしい」

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征天霹靂X(13)

征天霹靂X(13)

前話

13:海上サバト。再会。 ……潮の香りと共に目覚める。
 そこは海の上だった――どうやら、また浮いているらしい。眼下にも眼前にも、夜闇に染められた海が広がっている。曇っているから月明かりはなく、空と海が淡く溶け合い、間さえ見えない。
 見えるのは、遠く離れた熱海のか細い灯りのみ……。
「あ、目覚めた」
 よく眠るよね〜、とくすくす微笑むリオン。
「ああ、お陰様で……」
 僕はもう混乱してな

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征天霹靂X(12)

征天霹靂X(12)

前話

12:ἀνάμνησις.†

『小間使として手足の様に動かされ、不満じゃねェのかよ』

 ……これは、何の記憶だ?

 目の前には、ワニの上に乗る、髭を蓄えた大男が座っている。全身の血液が沸騰してる様な憤り方だ――いや、沸騰してる様な、ではない。
 沸騰してる。
 顔から鉄臭い湯気が立っていた。
『まーまー、落ち着いてよウァサゴ』
 聞き覚えのある声が嗜めた――そうだ、新幹線でちょっかい

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征天霹靂X(11)

征天霹靂X(11)

前話

11:淡侘理恩。 鶯雀は尺の方を見遣らず、ドアが吹き飛んで来た出入口を見る。尺はこんなことでは死なない、という信頼あってこそだった。
 今は、襲撃者――淡侘理恩への対応が先決。
「っ」
 だが、当の鶯雀は二の句も継げず、固まってしまっていた。
 無論、銀の弾丸を貫いて頭を潰しても生きていることには驚愕していた。しかし、人間ではない悪魔のことだ、そんなことが起きてもおかしくないと思っていた。

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征天霹靂X(10)

征天霹靂X(10)

前話

10:曲直瀬容。 ……。
 ……いっ――。
「痛ええええええええっ!!?」

 ――青年、曲直瀬容は絶叫した。彼に考える余裕など無く、故にただ何が起きたか呑み込める筈もなかった。
 だが、独紋衆所属・鶯雀鷹鳶と尺はぽみの狙いは、ここにこそあった。
 曲直瀬容の襲撃にこそ。
「ぅっ、ぐううううううううっ!」
 突然の激痛にどうしたら良いかわからず、曲直瀬はもんどり打って床を転がる。まさか先程

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征天霹靂X(9)

征天霹靂X(9)

前話

9:ソロモンと悪魔。「俺達はソロモン王の意思を継いだ集団、もじって名付けて『独紋衆』。俺らは、対魔の術を用いて悪魔を退治する集団なんだ」
 鶯雀さんは、確かにそう言った。
 ソロモン王の意思を継いだ、悪魔を退治する集団。
 悪魔。
 ソロモンの――72柱の、悪魔。
「ソロモンの悪魔は知ってるか?」
 鶯雀さんが尋ねる。まあ、ゲームとかでも度々モデルになってるから知ってはいる。人理を救うあの

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征天霹靂X(8)

征天霹靂X(8)

前話

8:独紋衆。「……お疲れ様です」
「お疲れ、はぽみ」
 僕が連れて来られたのは、なんと熱海駅前にあるカラオケボックスだった。熱海感のカケラもない個室の中で、随分とガタイの良い男がストローでコーラを吸っていた。隣には、釣り竿でも入っているのではないかと思うほど細長いバッグが立てかけてある。
 ……しかし、『はぽみ』?
 もしかして、この尺さんの名前か? いや、まさか。そんな変な名前な訳が――

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征天霹靂X(7)

征天霹靂X(7)

前話

7:熱海秘宝館決戦! ――全身の痛みと周りから上がる悲鳴で目が覚めた。オレンジ色の光で、今が夕方だということは分かる。
「……クソ」
 悪態をつかずにはいられない。何で僕は熱海に来て、こんな落下に次ぐ落下を経験しなきゃならないんだ?
 上半身を起こすために地面に手をつくと、ナニカが手に触れた。ゴツゴツとした形のモノで、その形状には覚えがある。これは確か――。
「っ!?」
 僕は思わず手を離

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征天霹靂X(6)

征天霹靂X(6)

前話

6:空の暴露。 目が、覚める。
 目の前に――いや、眼下に広がるのは、熱海全景だった。
 歩いている人は最早視認できず、車はミニチュアの様に可愛らしく、建物もまるで子供用の知育玩具で組み立てた風体だ。海も、あの熱海城で見た景色とは比べるべくもない程の広大さを誇示している。
 ……まるで意味が分からないが、僕は空を飛んでいる。それも生身で。何の機材も使わずに。
「目、覚めた?」
 隣から声。

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征天霹靂X(5)

征天霹靂X(5)

前話

5:JK vs 八尺様擬き。 扉が剥ぎ取られた。
 これは比喩でも何でもなく、正確な表現だと思う。
 扉は殴打や蹴りで破砕されたのでもなく、人間が通れる程度の穴を開けるため切断されたのでもなく、扉1枚がそのままの形で全て取り払われていた。
 途轍もない腕力だ。
 とても人間とは思えない。
 その腕力を振るったのは、高身長の女性。フリルのついた白いシルクハットから艶のある黒髪が流れ、白無垢の

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征天霹靂X(4)

征天霹靂X(4)

前話

4:襲うJKとルームサービス。「……リオン」
「ひどいじゃん、置いてくなんてさ〜。まあ、そういうつもりだろうな〜、とは思ってたけど」
「……」
「ま、焼きたてバスクチーズケーキに免じて赦してやろう! アタシは心が広いからね〜」
「……お前」
「リオン」
 リオンは、いつの間にか僕の目の前に立ち、鼻先を指さした――部屋の中のベッドから、ドアの前に座る僕の方へ、この一瞬で移動してきた。
「リオ

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征天霹靂X(3)

征天霹靂X(3)

前話

3:『一般通行人A』の寛ぎ。 『一般通行人A』として、酷い現実から旅の夢の中へ戻った僕は、熱海観光を再開する。
 ここ熱海には、見所が幾つかある。駅前にある先程の商店街もその1つだ。
 その他と言えば、例えば温泉。商店街のすぐ隣には温泉地があり、そこでゆったりとすることができる。あの感染症のせいで営業自体が縮小してしまった施設もあるが、まだまだどこも元気に頑張っている。
 例えば海。熱海は

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征天霹靂X(2)

征天霹靂X(2)

前話

2:チーズケーキと旅の魔法! 静岡県、熱海。
 平日の金曜日だが、人はそれなりに歩いてる。僕は密かに勝手に、彼らに親近感を抱きながら商店街を歩いていた。海が近いので魚屋が目立ち、あちこちから特有の生臭さが立ち込めている。そんな臭いを染み込ませながら、魚を捌いて干物にし、或いは煮るなり焼くなりして美味しい食事を提供している。
 お金を稼ぐ為に――生きる為に、必死に。
「おーい、暗いよ〜?」

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