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雨瀬くらげ
2022年8月19日 23:33
ジャムズ避難所管制室にて。 赤い服に赤いマントを纏った少年がモニターを見て、呆然としていた。「コード:Roll、ロスト。これで、作戦に向かったジャムズメンバー全員の信号が消滅しました」 その少年、Kidのコードネームを持つキッドマンが背後にいた先輩へ伝える。「……。今からでも遅くない。やっぱり、僕たちも行くべきだ!」「そうだよ、パンダ先輩の言う通りだ!」 コード:Cream
2022年8月15日 14:32
しばらく走ると砂漠に出た。そこには謎の建物とパラボラのようなものがあった。 日は既に落ちており、もう暗い。夜が訪れたのだ。「あれは……」 バタコが呟き、チーズがブレーキをかける。アンパンマン号R型は走行を止めた。「アンアーン(何?)」「……バイキンマンの研究所だ」 入り口と窓が一つずつある箱のような建物。玄関扉にはバイキンマンのマークがあった。「行く、か」 あのカレ
2022年8月11日 12:43
ジャムズ本部のエレベーターで地下一○階に行くと、秘密の部屋がある。ロールパンナはアンパンマン号に乗る前、ここに立ち寄っていた。 秘密の部屋の扉を開けると、中は暗く、闇が広がっていた。「……」 ロールパンナは静かに明かりのスイッチを点ける。すると、ガチャっという音と共に一つのスポットライトが一脚の椅子を照らす。 その椅子には頭のないアンパンマンが座っていた。そして、心臓だけ取り出さ
2022年8月7日 11:45
「出たなお邪魔虫!」「バイキンマン、悪いことはやめるんだ!」 今日もアンパンマンはバイキンマン退治のために戦っていた。晴天の中、悪と正義の声が響き渡る。「今日こそは倒してやる! アンパンマン!」 そう宣言するバイキンマンはUFOの下から大量のカビルンルンを放出してくる。「させるか!」 アンパンマンはすぐさまカビルンルンを殺しにかかろうとした。しかし、カビるんるんが光を発しだし
2022年4月18日 11:00
あ、クロノスタシスだ。 この言葉を知ってから、その現象を目にする度にそう思うようになった。 クロノスタシスとは進んでいるはずの時計の一瞬止まって見える現象のことを言う。それは秒針だったり、デジタルなら秒数だったりするけれど、誰もが経験したことあると思う。 たった今、俺も経験した。 休日の昼下がり。ベッドから上半身を起こして、掛け時計を見た瞬間のことだ。 せっかくの休日をまたも
2021年9月6日 15:58
チャイムが鳴り、終礼と同時に教室を飛び出る。 この瞬間を待っていた。待ち侘びていた。 二年生の学年末テストが先週終わり、実質今年度最後のテストであった今日の模試にさよならをした。 そしてこれから約束を果たしに行くのだ。 廊下に出ると、同じタイミングで隣のクラスから浅野が飛び出してきたようだった。「行くか」「行くぞ」 わざわざ息を合わせて階段を駆け降りる。ぎゃ、と叫びなが
2021年8月22日 20:42
※メルカリのモノガタリ大賞に投稿したものです。
2021年8月8日 18:11
三百六十度、荒野だった。草木は枯れ、茶色いゴツゴツとした地面、遠くには岩肌を見せた山々。空は晴天で、俺の目の前にはコンクリートで整備された一直線の道があった。 俺はその道をひたすら走り続けていた。気づけば走っていた。そしてなぜか走りをやめようという思考には至らない。キツいなんてものは微塵も感じなかった。 これは夢なのだろうかと考えたことがある。いささか子供らしい確かめ方だが、頬を抓ってみ
2021年8月5日 22:23
ボタンを押し、落ちて来た缶コーヒーを手に取ると、その自動販売機の横にあるベンチへ気だるそうに座った。気だるそう、というか実際気だるかった。 この公園は、ここらではかなり大きい方で敷地面積はもちろん、遊具も充実している。滑り台、ブランコ、砂場、ジャングルジム、このご時世では珍しいシーソーもある。皆、それぞれ好きなところでガヤガヤはしゃいでおり、少し年齢が上がると鬼ごっこをしたり、ボールを持ち込
2021年7月25日 15:46
グラウンドからは部活生たちの健康的な奇声が聞こえ、青春アニメの放課後を思わせる。一方、淡い朱色の教室は対照的に静かだった。シャープペンシルの芯が紙の上を走る音だけが僕の耳に届く。なぜなら教室には僕しかいないからだ。放課後、女の子と駄弁るなんて行為は、チャラリラパラリラ運動系男子がやってればいいのだ。チャラリラパラリラって何だよと思いながら独り笑う。 パキッとシャー芯が折れると同時に、教室の扉
2021年6月27日 23:35
時刻は既に八時を回っているが四人はまだ制服姿で駅周辺をウロウロしていた。四人はこの駅の近くにある高校の生徒で、その高校もあまり評判はよくない。柄の悪い奴が多く、警察が学校に来なかった日はないのではないか、というレベルだ。 とりわけ悪いのが竹尾雄伸だ。オールバックにした金髪。何を思ったのか、おもむろに入り、境内に生えていた花をむしり始めた。「この神社あれじゃん。ダルマの神様を祭ってるって
2021年5月29日 19:42
太陽の明かりが黄色がかり始める午後四時。我が校の体育祭は紅団が勝利を収め、無事に終了した。 湯木明里が教室に戻ると、既に半数以上のクラスメイトが帰ってきた。ハチマキが机の上に散らかってたり、写真を撮っているものもいたり。そして、汗とグランドの匂い。それらを感じることはこの先もうないのだと思うと、高校生活最後の体育祭が終わったことを痛感した。「明里、私たちも写真撮ろ」 そう呟きながら、
2021年4月22日 12:32
大きな翼をもつドラゴンが僕らの行く手を阻む。僕らの二倍以上ある巨体を有するドラゴンだが、なんてことはない。僕らは勇者の剣を見つけたんだ。これがあれば何も怖くない。しかし、僕はその剣を持っていない。持っているのは彼女だ。「僕がドラゴンの気を引く! 君はその剣でとどめを刺して!」「わかったわ!」 僕は隙を作るためにそう言って、駆け出す。ドラゴンがボーっと火を吹いてきたが、ここまでの冒険で鍛
2021年4月18日 00:14
また、あの時の夢を見ていた。 私はベッドから起き上がり、西日の差し込む窓のカーテンを開けた。私の顔が朱色に染められ、反射的に目を瞑る。 お世辞にも広いとは言えないこの部屋は、女子大生の部屋にしてはいささか殺風景で、何か小物を買おうにも何を買えばよいのかわからず、いつも買い物はただの散歩になってしまう。 その話を彼にしたら、笑って聞いてくれた。彼の笑顔が頭に浮かぶ。 忘れられないあの