倉田そら

倉田そらです。 小説や、エッセイなどを書いています。 アロマテラピーアドバイザー、アロ…

倉田そら

倉田そらです。 小説や、エッセイなどを書いています。 アロマテラピーアドバイザー、アロマハンドセラピスト(申請中)の資格を取りました。 好きなものは夕やけ空、やわらかい革のブックカバー、リンゴのハシオキ、ほぼ日、モンゴメリ、メアリーポピンズ…などなど。

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【エッセイ】最期の病室に、笑い声が響いた話

(不穏なタイトルに、サスペンスだと思われるかもしれない…!と気付きましたが、そうではないのでご安心ください。) 高校生だった私は、母方の祖父(じぃじ)と祖母(ばぁば)と一緒に、大きな駅の地下街に来ていた。 私はトイレに行きたくなり、「待っててねー」と言うと、一人でトイレに入った。 そして個室から出てくると、洗面台のところに、ばぁばがいる。 「あれ、ばぁばもやっぱり、行きたくなったの?」 そう聞くと、ばぁばが笑いながら言った。 「ううん、じぃじがね、変な人がいたら危な

    • 【エッセイ】こわい未来のイメトレしてガードを固めるのに疲れたので、こわいけどやめてみた話

      例えば、病院の検査の結果待ちをしているとき。 「わわ、悪い結果だったら、どどど、どうしよう…」 と何日も前から想像し、その場面を鮮やかに脳裏にイメージし、どんなことを言うか言われるか想像し、ドラマの一部のように何度も脳内再生し…。 (悪い結果の可能性が低いときもです) 想像して想像し、さらに想像してしまうタイプです。 そして、その自分で作り上げたイメージにコテンパンにされ、疲れ切っちゃう。 そして厄介なことに、 いろんなパターンの「こわい未来」をイメージしておかない

      • ストローのなかの、ちっちゃいおじさん【短編小説】

        【あらすじ】 今世紀最大の『ちっちゃいおじさん大宴会』の招待状の束をなくしてしまった、ちっちゃいおじさん。 ”私”は、開催の危機をすくえるのか?!   *** マンションの下のコンビニで、アイスコーヒを買う。 レジで氷入りのカップを受けとり、機械にセットしてボタンを押すと、ガーッという音とともに、勢いよくコーヒーが出てきた。 そのあいだにフタとストロー、紙ナプキンを棚からとる。 まるで店員さんのような手際のよさに、ひとりでちょっと笑ってしまった。 大学もバイトも休み

        • 英国&ちょこっとパリ 新婚合宿日記 Vol.5

          さて、次の日はオプショナルツアー 「コッツウォルズ・オックスフォード観光」です。 集合場所は、ロンドンの中心、「ピカデリーサーカス」。 その頃は地下鉄もすっかり乗りこなしていた、旅のプロ (なわけない) 私たち。 旅の予算もあまりない中、地下鉄遅延の情報が…! (ロンドンの地下鉄は大変古い歴史があり、よく止まります) 「タクシーだ!ロンドンタクシーで行こう!!」 一度は乗ってみたかった、ロンドン名物です。 運よく、すぐにつかまりました。 ダンナが行き先を、運転手さ

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        【エッセイ】最期の病室に、笑い声が響いた話

        マガジン

        • ちょっとふしぎで、みじかいお話。
          6本
        • 英国&ちょこっとパリ 新婚合宿日記
          5本
        • エッセイ
          10本
        • 連載童話 「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」
          11本
        • 絵本紹介
          1本
        • 【短編小説】公園のうみに、ボートを浮かべて
          3本

        記事

          「アロマテラピー検定、受けてみよう」と思い立ったので。(独学で1級を受けるまでのお話 )

          【はじめに】 「そういえば私って、香りには敏感な方なのかもしれない」 ある日、ふいにそう思いました。 でも敏感に反応してしまうのは、どちらかといったらあまり良い匂いのものではなく。 あれ…ってことは私って、良い匂いにも敏感なのかも! と、自分に都合よく解釈することに。 そして思い立ち、約2ヶ月ほどの勉強期間を経て、 「アロマテラピー検定1級」 を独学で受験しました。 (スクールに通って勉強する、という選択肢もあります) ところでこの検定、合格率がかなり高いみ

          「アロマテラピー検定、受けてみよう」と思い立ったので。(独学で1級を受けるまでのお話 )

          【エッセイ】 見る、ということ。

          忘れられない、朝の風景がある。 高校生のとき、私は電車とバスを乗り継ぎ、少し遠くの学校まで通っていた。 途中、JRから私鉄に乗り換えるのだが、その二つの駅の距離は徒歩十分位あった。 ごみごみとした細く短い商店街を抜けてゆく。 国道の近くだったので、鼻の穴が黒くなるほど、当時の空気は汚れていた。 毎朝私は、その短い距離を歩いていた。 不思議なことに、今、目を瞑って考えてみても、その商店街にどんなお店があったか、ほとんど思い出すことができない。 私が今でも覚えているのは、

          【エッセイ】 見る、ということ。

          英国&ちょこっとパリ 新婚合宿日記 Vol.4 

          さて、私たちは地下鉄に乗って、ついに憧れの地へ。 どーーん!! そうです。 こちらは、「ベイカーストリート」駅です。 ベーカー街には、コナン・ドイルの有名な探偵小説「シャーロック・ホームズ」の博物館があるのです。 自称「シャーロキアン」(ホームズのファンの呼称)の私は、まさに日本からここを一直線に目指してきた、と言っても過言ではない…! NHKでも放送されていたイギリスのTVドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」のDVDボックスを持っている私…(オタク)。 最寄のベー

          英国&ちょこっとパリ 新婚合宿日記 Vol.4 

          【絵本紹介】何十年も前のものだから、書店では見かけない。でも、名作だと思う絵本、三冊。

          引越も断捨離もかいくぐり、思えばずいぶんと長いあいだ手もとに残っているものって、誰にでもあると思います。 ただ便利だからとか、なんとなく…っていうものも、もちろんありますが。(むしろ、そっちのほうが多いような気も…。) その中でも、たまに読んだり、思い浮かべるだけでも、胸に「じわん」としたものが広がって、ずっと心の中の大切な場所にしまわれているものがあります。 私にとってそれは、幼いころから大切にしてきた絵本です。 ロングセラーで名作と呼ばれる絵本にも、素晴らしいものがた

          【絵本紹介】何十年も前のものだから、書店では見かけない。でも、名作だと思う絵本、三冊。

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」最終話(第11話 おかあさんの話)

          11.おかあさんの話 二人は、ワーフのパン屋さんに戻ってきました。朝は混んでいて、窓の外からチラリとのぞいただけだったので、イトは初めて中に入りました。 中は、イトが想像していたパン屋さんとは、かなり違っていて、棚に並べられたパンをトングで取っていく、という売り方では無いようでした。 パン工場にあった、真鍮の、らせん状の滑り台がついた機械を小さくしたようなものが、正面のところにありました。 そして機械には、たくさんのレバーが並んでいて、その横には、イトの分からない文字で書

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」最終話(第11話 おかあさんの話)

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第10話 フワワフ村)

          10 フワワフ村 さっきまでは突然の出来事に驚いて、まわりをあまり見ていなかったイトでしたが、飛びながらあらためて景色を見ることができました。 辺りは見渡す限り、いくつもの緑の丘が広がっていました。ワーフの家のパン工場は、その中のひとつの、小高い丘の頂上に立っていました。 ところどころに、こんもりとした森の木々が見えました。右手の方には、カラフルな屋根のレンガ作りの家が、何軒も連なっているのが見えました。 太陽はすっかりのぼり、空はよく晴れていて、羊のようなかわいらし

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第10話 フワワフ村)

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第9話 パンの におい)

          9 パンの におい 十月になり、秋の涼しい風が、感じられるようになりました。 特に出かける用事のなかった日曜日。イトは自分の部屋の勉強机に座って、ワーフにもらった、クリスマスプレゼントのキーホルダーをながめていました。 ワーフの毛で作られていて、ランドセルに付けていたものです。ワーフがいなくなってからは、目にはいるとつらくなるので、机の引き出しにしまっていて、見るのは久しぶりでした。 真珠色で半透明の毛皮は、よごれても洗えばすぐにきれいになるので、いまだにもらったときの

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第9話 パンの におい)

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第8話 いなくなったワーフ )

          8 いなくなったワーフ 年末の数日間は、ワーフにとっては、初めてのことばかりでした。ママの買い出しに付き合ったり、大掃除をしたり、またたく間に時間は過ぎて行きました。 中でも大掃除では、ワーフは大活躍しました。天井まで浮かんでいってほこりをとったり、窓を外側から拭いたり(イトの家はマンションの二階なので、やりにくいのです)、とてもがんばりました。 もっとも、窓ふきは目ざとい茶畑さんに見つかって、ちゃっかり茶畑さんの家の窓もやらされてしまいましたが、ワーフは、今回は失敗し

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第8話 いなくなったワーフ )

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第7話 クリスマスの夜)

          7 クリスマスの夜 「そういえばワーフ、クリスマスって知ってる?」 十一月に入ってから最初の日曜日。 遅めの朝ごはんのあと、ママがワーフに聞きました。ワーフは読んでいた絵本から顔をあげて、 「くりすます…あっ、ボク、きいたことあるよ!このまえ、テレビでいってたよ。 …あかいふくをきた、おとこのひとが、オウチにこっそり、はいってくるんでしょ…?いつなの?ボク、こわくって…」 と、少しふるえながら言いました。 「ワーフったら…それじゃドロボウじゃないの!違うよ、子供たち

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第7話 クリスマスの夜)

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第6話 はじめての旅行)

          6 はじめての旅行 「今度の帰省は、ワーフと行く初めての旅行になるから、車で行くことにしたぞ」 夏休みに入ったある日、パパが言いました。 「車の方が、ワーフも迷子にならないしね。じいじとばあばも、前から早くワーフに会ってみたいって言ってるのよ。リーちゃんなんて毎日のように、まだ来ないの?いつ来るの?って聞いてるみたいだし。 あ、そうだ、ワーフにも旅行用のカバンを買ってあげなくちゃ」 ママがパチン、と手をたたきながら言いました。 イトの家族は毎年夏休みになると、ママの

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第6話 はじめての旅行)

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第5話 ワーフ、プールへ行く)

          5 ワーフ、プールへ行く 「でもボク、みずぎって、もってないんだけど…だいじょうぶかなぁ…」 今度の土曜日、ワーフは近所のプールに、イトと、イトのクラスメイトの三井彩乃ちゃんと三人で、遊びに行くことになりました。三井さんは、五年生になってからイトと親しくなった友達で、綾乃ちゃんなので、あーちゃんと呼ばれていました。 ワーフは何日も前から初めてのプールを楽しみにしていて、今日もリビングのパソコンの前に座って、プールの写真がのっているホームページをながめていました。 市民

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第5話 ワーフ、プールへ行く)

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第4話 ワーフ、宅配便をはこぶ)

          4 ワーフ、宅配便をはこぶ ワーフがイトの家に来てから、二ヶ月ほどが経ちました。 ワーフはイトと一緒に毎日学校に行き、授業を受けたり、みんなと遊んだりしていました。 その間にも図工室にも何度か入らせてもらったのですが、ワーフがどこから来たのか、手がかりはみつかりませんでした。 ただ一度だけ、こんなことがありました。学校の教材室に入ったときのことです。 教材室は、各階にある小さな部屋で、先生と一緒でないと入ってはいけないことになっていました。イトとワーフは、大仏先生と、ク

          「ふわふわ、ではありません、フワワフワーフです。」(第4話 ワーフ、宅配便をはこぶ)