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本の感想

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これまでに書いた本の感想文をまとめてあります。
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「何でもあり」のアクション小説: 都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』感想(今月の本)

「何でもあり」のアクション小説: 都筑道夫『なめくじに聞いてみろ』感想(今月の本)

こんにちは。とらつぐみです。

今月読んだ本は都筑道夫先生の『なめくじに聞いてみろ』(新装版、講談社文庫)。

この本は1979年に講談社文庫発刊の本を2021年に復刊したものです。調べたところ初出は1960年代、物語自体も戦後まもない東京が舞台です。

何でそんな昔の本を、というと、たまたま本屋で見かけて「そういやはやみねかおる先生の本で『めちゃくちゃ面白い本』って出てきたな」と思って手に取った

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本の感想:品田遊『ただしい人類滅亡計画』(今月の本)

本の感想:品田遊『ただしい人類滅亡計画』(今月の本)

今月読んだ本は品田遊先生の小説『ただしい人類滅亡計画』。

(Amazonのリンク。電子版もあります)↓

近所の書店に置いてなかったので紀伊國屋書店まで買いに行った。

通販じゃなく大きな本屋で本を探すのは宝探しみたいで楽しい。在庫僅少だけど1冊だけあったので買った。

本の表紙は赤地に金の箔押し、緑の栞つき。背表紙もおしゃれなので本棚がちょっとかっこよく見える。家にあった頭のよさそうな本と並べ

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本の感想:塩田武士『騙し絵の牙』(今月の本)

本の感想:塩田武士『騙し絵の牙』(今月の本)

こんにちは、とらつぐみです。

今月読んだ本は塩田武士先生の『騙し絵の牙』。

↑文庫版の方のリンクです。

主人公を大泉洋さんに「あてがき」した小説で2020年に映画が公開されるなど話題になった作品ですね。

発売当初読んでいなかったんですが、友人に「面白いから読んで感想聞かせて?」と言われたので文庫版で購入して読み、折角なのでここにも(ネタバレしない範囲で)感想を書こうと思います。

「書く」

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『彼女。百合小説アンソロジー』(本の感想・今月の本)

『彼女。百合小説アンソロジー』(本の感想・今月の本)

今月の本は『彼女。百合小説アンソロジー』(実業之日本社、2022年刊)。

相沢沙呼先生ほか7人の作家さんによる、7編の百合短編小説集です。

百合というのは女性同士の恋愛関係を描いたもの、あるいは恋愛に限らず女性同士の絆といった関係性をテーマにした創作ジャンルの呼び名です。

7編の短編の中には、女性同士の恋愛関係を描いたものもあれば、カテゴリ分けができない複雑な関係性を描いたものもありました。

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このミス大賞隠し玉『不動のセンター 元警察官・鈴代瀬凪』(本の感想)

このミス大賞隠し玉『不動のセンター 元警察官・鈴代瀬凪』(本の感想)

こんにちは。とらつぐみです。

毎月読んだ本の感想を綴る連載「今月の本」、今回は柊悠羅先生の『不動のセンター 元警察官・鈴代瀬凪』(宝島社文庫)を読みました。

この作品は2022年の第20回『このミステリーがすごい!』大賞の最終候補作で、柊先生はその「隠し玉」(受賞しなかったが将来性があると認められたもの)として本作でデビューした作家です。

筆者(とらつぐみ)はミステリや刑事ドラマはちょくちょ

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その絆は「呪い」か、それとも――『同志少女よ、敵を撃て』(今月の本)

その絆は「呪い」か、それとも――『同志少女よ、敵を撃て』(今月の本)

こんにちは。とらつぐみです。

今月読んだ本は逢坂冬馬先生の『同志少女よ銃を撃て』。
本屋大賞受賞で話題になっていてずっと気になっていたのをやっと読みました。

タイトルから何となく分かる通りこの小説の舞台は旧ソ連です。それも第二次世界大戦の独ソ戦、その最前線で戦った女性だけの狙撃手部隊の物語です。

身近に迫るようなリアルな戦場の緊迫感とアクション、そして登場人物の女性たちのシスターフッド(女性

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『OVER HEAVEN』を読んで困惑した話(本の感想・今月の本)

『OVER HEAVEN』を読んで困惑した話(本の感想・今月の本)

こんにちは、とらつぐみです。

今月の本は『OVER HEAVEN』(著:西尾維新、原作:荒木飛呂彦)です。

この小説は、荒木飛呂彦先生の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズに出てくるご存じラスボス「DIO」が書いた日記の再現、という設定の西尾維新先生の小説です。

(DIOの日記:ジョジョ6部に登場する。「天国」へ行くための方法が記されていたが3部終了後空条承太郎に燃やされた。「カブトムシ」

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