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うつわマガジン2019

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旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(前編)

旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(前編)

イタリア語「スケルツォ」は「冗談」という意味かつ、音楽の世界では快活で急速な三拍子の楽曲を示す。おどけた感じが「冗談」という言葉と重なる。ショパンの「スケルツォ第2番 変ロ短調」などがそのひとつ。

前半目次

1. 肉眼と無限遠なレンズ私たちはリグーリアの海にいた。
前の晩に書いた七夕の短冊を見ながら「願いは叶うのだろうか」なんて、無限遠に合わせたレンズでもって話していた。娘のように年齢が離れて

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ちょっとブレイク「うつわと食器棚」

ちょっとブレイク「うつわと食器棚」

パスクア(イースター/復活祭)であった昨日は、第二の故郷であるイタリアの友人たちから「よき復活祭を!」「おめでとう!」というような(メリクリ、あけおめ的な)メッセージとタマゴの写真が次々と届いた。

返信用に、ぐいのみをエッグスタンドに見立て、リトアニアのニット作家が編んだ帽子をタマゴにかぶせて写真を撮った。中央が最近の試作品、両サイドはミラノ修行時代の作。ただのタマゴが、わたしをはじめ肌の色が異

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ちょっとブレイク「春のうつわ」レシピをよむ

ちょっとブレイク「春のうつわ」レシピをよむ

うつわに物語があるのだから料理の物語も読みたいと思うようになったのはいつごろからだろう。

料理は好きだし、一人暮らしや海外生活の経験からか、食材や道具は代用品を考えるクセもついた。つくるのに困ることもなかったので、レシピをわざわざ見ながらつくったり、料理教室に行ったこともなかった。それが一転したのはいつごろかな。

伝えたい想いがあるのだから料理教室もレシピ本も、物語を読み解きたい。上手につくる

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ちょっとブレイク「春のうつわ」八重の山吹

ちょっとブレイク「春のうつわ」八重の山吹

天寿というものがあって、人はいつか旅つわけで。遠くて近いところへ。親をはじめ、生きるものはさようならと手をふってゆく。

意図せずに、新しく元号がかわる前の日、義理の両親の家は引き払われた。

分け枝をして我が家のちいさな庭に植えた山吹。もう15年くらい経つだろうか。なにかを告げにきたかのごとく、今年も我が家のちいさな庭に、静かに低く咲いていた。

彩度を落とし控えめに光を透く桜。それと同時季に咲

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