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材料学

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木材・金属・プラスチックなど様々な材料について紹介します。
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ガラスはなぜ透明?

ガラスはなぜ透明?

ガラスは不思議な材料だ。なぜ透明で、光はいったいどのようにして固体の中を通っていくのか?
ガラスはケイ素原子と酸素原子、あと数種類の原子でできている。原子の中心には陽子と中性子を含む原子核があり、その周りを電子が回っている。

原子の大きさが例えばスタジアムほどの大きさだとすると、原子核の大きさはその中央に置かれた豆粒ほど、電子にいたっては周囲のスタンドに置かれた砂粒ほどになる。このように原子内部

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マイクロプラスチックの健康リスク

マイクロプラスチックの健康リスク

1856年にビリヤードの球に使われる象牙が社会問題になり、代替材料として発明されたセルロイドをきっかけに、急速に広まったプラスチック素材。
現代では世界中でスーパーのレジ袋は1秒間に約18万枚利用されている。

しかし、軽くて強い性質から自然分解されずにマイクロプラスチックとなり社会問題になっている。

ある研究によると、微小なプラスチックが含まれていた患者が心臓発作や脳卒中を起こすリスクが、プラ

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スプーンはなぜ味がしない

スプーンはなぜ味がしない

金属のスプーンで食事をして、金属の味がしたことはあるだろうか?
スプーンはじめ、台所の流し台、包丁、食器などステンレス製品は身の回りにたくさんある。
“ステンレス”とは、ステンレス鋼の略で、錆(stain)ない鋼(steel)の意味である。言葉通り、ステンレスは水に濡れても錆ない。鋼はすぐ錆びるのにどうしてステンレスは錆ないのだろうか。
その秘密は、その成分にクロムが含まれているところにある。クロ

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日焼け止めから修正液まで大活躍の材料

日焼け止めから修正液まで大活躍の材料

日常生活の中で「白」はすべての色の基礎となっている。その顔料として用いられるのが「酸化チタン」だ。日焼け止め、修正液、化粧品、絵の具など様々なところに使われている。
また、酸化チタンには不思議な性質があり、光に当たると分解作用や親水作用の触媒として働く。触媒とは、自らは変化せずに他の化学変化を促進する性質を持つ物質のこと。光の作用で触媒作用が働くものを光触媒と呼び、酸化チタンはその代表だ。「掃除不

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カニやエビの殻から電気部品を作る

カニやエビの殻から電気部品を作る

東北大学などの研究チームはカニやエビの殻の成分から作るキトサンが、半導体や電池の材料になることをみいだした。

紅ズワイガニの殻からキトサンを得て、1ナノメートルほどの細い繊維にした上でシートを作製した。電気を流す材料と密着させて性能を調べたところ半導体の性質を示し、さらに電気を蓄えることも確認した。

日本に豊富にある海産物から得られる原材料とあって、今後注目されそうだ。

『参考資料』
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“鉛筆”と“色鉛筆”の材料

“鉛筆”と“色鉛筆”の材料

子供とお絵描きをしていて「鉛筆と色鉛筆同じ黒色があるけど、色鉛筆の黒色は消しゴムで消せないのはなぜ?」とふと思った。

普通の黒鉛筆の芯は、粘土と黒鉛を練り合わせ、焼き固めたもの。
色鉛筆の芯は、ロウや顔料など、油性的なものがタルクなどと練り固められたもの。(タルクとは、書くときに滑りをよくする材料で、ベビーパウダーにも利用されている。)
色鉛筆は油性材料が含まれているため、紙の繊維に入り込み消

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牛乳といえば紙パックなのはなぜ?

牛乳といえば紙パックなのはなぜ?

日本ではペットボトルの牛乳は見かけません。ペットボトルは、キャップを開封して口をつけて少し飲んだ後、再度キャップを装着できる機能があり、持ち歩きに便利です。しかし、口の中には多くの微生物が存在しているため、ペットボトルの口から飲んだ場合、人間の微生物が牛乳に入ることが考えられます。この状態で常温に放置されると、微生物が牛乳の中で増殖します。牛乳は栄養価が高いため、微生物がとても増殖しやすい飲み物で

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突如起こった”ブロンズ病”

突如起こった”ブロンズ病”

青銅は、古代から貨幣や像に使われてきました。青銅の表面は、緑青(ろくしょう)と呼ぶ青色のサビ が覆います。この緑青が青銅を数千年間、腐食から守ります。しかし、第二次世界大戦直後、大英博物館の青銅像に、突如としてボロボロに穴が開き始めました。これは、青銅が病気にかかったということで、「ブロンズ(青銅) 病」と呼ばれました。 原因は、戦争中に青銅像を木箱に入れて疎開させる際に、木箱に入れた緩衝材の木屑

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【材料学】銅

【材料学】銅

人類が最初に精錬した金属は、銅だったと思われます。銅鉱石は、色が鮮やかな緑色や青色なので、見つけやすい鉱石です。燃やした木炭に鉱石を入れるだけで、鉱石から酸素や硫黄を奪いとる還元反応に必要な温度が得られ、容易に銅鉱石から銅を得ることができました。
古代の人は、赤銅(しゃくどう)色の銅が火の中から生まれる光景を見て、感動したことでしょう。銅を道具として使うときに問題になるのは、柔らかいことです。石で

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【材料学】グラファイト

【材料学】グラファイト

16世紀にイングラント湖で「黒い金」が掘り当てられた。石油ではない、高純度のフラファイトの鉱床だった。地元の人々はこのグラファイトが羊に印をつけるのに便利だということに気づき、鉛筆が作られた。さらに、グラファイトは「耐火性」にも優れていたことから、鉄の砲弾用の鋳型の内張りにも使われた。その結果、砲弾は丸くてなめらかで、発射すれば遠くまで正確に届くようになった。

『参考資料』
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【材料学】象牙

【材料学】象牙

テレビやラジオ、さらに手回し蓄音機もない時代、人々の娯楽器具といえばピアノでした。中産階級の家庭では、ピアノの周りにあつまり即興のコンサートをしたり、バーや酒場、レストランにはピアノが置かれていました。
このピアノの鍵盤には象牙が使われていました。工業化以前の時代には象牙は、軟らかく加工しやすいことから、彫刻して像や装飾品にしたり、箱、パイプ、印鑑、入れ歯にするなど様々な場所に使われていました。

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【材料学】黒いダイヤ 石炭

【材料学】黒いダイヤ 石炭

石炭は第1次産業革命で工場や鉄道の燃料となる、この200年のもっとも重要な鉱物だ。
石炭は約3億年前まで地球を覆っていた広大な森林の名残りである。通常は枯れた植物は腐敗して、大気中に炭素は戻るが、酸素がほとんどない酸性の水の中に植物体が蓄積すると分解せずに泥炭になり、自然の炭素貯蔵庫の役割を果たす。何百年ものあいだに泥炭湿地は堆積物で覆われ、圧縮されて石炭になる。
18世紀に蒸気機関が開発されると

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【材料学】見えない殺し屋 アスベスト

【材料学】見えない殺し屋 アスベスト

古代ギリシャ人とローマ人は、アスベストの織物が火によってそこなわれないことから、邪悪な影響を寄せ付けない魔法の物質だと考えていた。
中世ヨーロッパの皇帝シャルルマーニュはアスベストでできたテーブルクロスをもっており、食事のあとでテーブルクロスを火の中に投げ入れてきれいにし、無傷で炎から引っ張り出して客たちを驚かせるのが好きだった。
19世紀以降、工業化が進むと、アスベストは建築で広く使用され、耐火

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【材料学】明礬(みょうばん)

【材料学】明礬(みょうばん)

現代社会では品物に色がついているのはあたりまえだが、新石器時代の人間が作ったものは大体、石のくすんだ灰色、粘土の地味な褐色や黄土色、動物の皮や糸の灰色がかった白や黒色をしていた。
初期の人類は自然の花や虫や鳥の鮮やかな色に魅了されたことだろう。

そして、自然にある植物、鉱物、貝、昆虫などを利用し、さまざまな色を使って、社会的な地位、信仰、国への忠誠心の区別を表現できないかと考える人がいたのだろ

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