マガジンのカバー画像

2023年読書記録

95
2023年、読んだ本の記録
運営しているクリエイター

記事一覧

2023年下半期、私のおすすめ六冊

2023年下半期、私のおすすめ六冊

2023年の前半に、心に残った本の記事を書いたので、半期ごとにまとめてみようと思います。
また厳選して厳選して、六冊(七冊?)に。

上半期はこちら↓

それでは下半期行きます。

「スロウハイツの神様」辻村深月著

辻村深月さんの著作は、どれもとてもとても好きなのですが、これは私の中の最高傑作かもしれません。もう大好き。
きっと辻村深月さんの本って、本ごとにファンの人が少し違ったりするんじゃない

もっとみる
[読書記録]ニューヨークの魔法使い(シャンナ・スウェンドソン)

[読書記録]ニューヨークの魔法使い(シャンナ・スウェンドソン)

魔法版ブリジットジョーンズ(ハリーポッターとブリジットジョーンズを足したようなお話)という感想を見かけてとても楽しみに読みました。
そして文字通り、ああ、すてき!ステキすぎる!私もケイティになりたい!となりました。何年ぶりにこんな気持ちになったかな。もしかしたら「誰も知らない小さな国」のせいたかさん以来かもしれない。種類はまた全然違うのですが。

自分に今起こっていることに混乱して(もしも私なら嬉

もっとみる
[読書記録]川のほとりに立つ者は(寺地はるな)

[読書記録]川のほとりに立つ者は(寺地はるな)

寺地はるなさんの気持ちの寄せ方の優しさを思い知りました。
自分の生きづらさや努力しなければいけない状況を、飲み込めない人もたくさんいるのだと思うし、困っていることやその感情も…、川の中の石は本当にいろいろなのだと思います。

それを「ほとりに立つ者」がいつ理解してもいいし、手を差し伸べなくても、そのままで大丈夫だと認めることができることで世の中はきっと優しくなるのだろうと思いました。

ただ、困っ

もっとみる
[読書記録]本屋さんのダイアナ(柚木麻子)

[読書記録]本屋さんのダイアナ(柚木麻子)

すっきり。女の子の友情って、いろいろな形があると思うのですが、お互いを尊重しあって何度でもやり直せる関係ってとてもいいな、と思いました。

本のにおいや、図書館や本屋さんの雰囲気、物語への没入感や力をもらえる感じ、本や読書への愛ももりもりと伝わってくるし、とても良かったです。

この本に出てくる二人の少女の、心のまっすぐな部分もとても素敵だな、と思います。
この間女優さんがテレビで、「精神は老いな

もっとみる
[読書記録]マルガリータ(村木嵐) / 生きることと祈ること

[読書記録]マルガリータ(村木嵐) / 生きることと祈ること

私達は歴史を学ぶことで、今ある正義や真実が覆されたり、その幅が狭くなり広くなりと変わって行くことを知っています。今信じるものが明日否定されるかもしれない、信じることは悪だと虐げられるかもしれない。それでも自分が信じた道をどうやって貫くのか、私にはその術があるのかないのかさえ分かりません。

天正遣欧少年使節団とは。強烈な信仰心と生きるための規律の間で、人はどのように振る舞うかを考え、深く心を抉られ

もっとみる
[読書記録]わたしの良い子(寺地はるな) / 良い子の定義

[読書記録]わたしの良い子(寺地はるな) / 良い子の定義

私は三人の男の子を育てていますが、あ、一人はもう家から出て一人暮らしを始めたので今は二人の男の子を育てていますが、私の三人息子以外の子どもを育てたことはないので、育児がどうだとか言うことはできません。
人の命を十八年ほどかけて我が身の元に預かり、ご飯を食べさせて成長に合わせて服や靴を買い、人との関係において「ああでもないこうでもない」と一人一人と他愛なく話しここまでやってきたわけですが、いまだに正

もっとみる
[読書記録]本日は、お日柄もよく(原田マハ) / ことばの魔法

[読書記録]本日は、お日柄もよく(原田マハ) / ことばの魔法

スピーチで人が心を動かされることは、やっぱり多分にあるだろうな、と思います。本音がスピーチの中にどのくらい含まれるか、具体的なエピソードがあったり、内容も分かりやすかったらいいな、きっとおもしろく聞けるだろうな、と私も思います。その匙加減で心を打つ度合いが大きくなったりするのかもしれません。

スピーチライターという仕事は、スピーカーの人物研究、イベントの研究、聞き手の研究…、立ち返ってスピーカー

もっとみる
[読書記録番外編]ヤンソンとムーミンのアトリエ(木之下晃) / 北欧の妖精トーベ

[読書記録番外編]ヤンソンとムーミンのアトリエ(木之下晃) / 北欧の妖精トーベ

何年か前、映画「TOVE」を観ました。
芸術家として絵を描きながら、家族との確執や保守的な芸術界に心を痛め、同性愛が許されない時代に女性を愛し、その中で生まれた自由を求めることへの執着を痛烈に感じたことを覚えています。そんな葛藤の中から生まれたムーミンの世界。トーベヤンソンさんは自由を、生きている間中求め続けていたことを感じました。

この写真たちを見ていて、あの映画がはっきりと蘇りました。
夏の

もっとみる
[読書記録]いくつもの週末(江國香織) / 江國さんの日

[読書記録]いくつもの週末(江國香織) / 江國さんの日

時々、江國香織さんのエッセイがとてもとても読みたくなります。これは今日は江國香織さんの日だし、江國香織さんしかない、と思うような感じで手に取ります。
どうして江國香織さんなのかというと、なんとなくほのかに不安だったり寂しかったりする時、「それでいいし私もそうだよ」、と言ってくれているような気持ちになるからかもしれません。
今日は江國香織さんだ、と思う日は、さらさらと深く潜って行くような、そこで静か

もっとみる
[読書記録]図書館の神様(瀬尾まいこ)

[読書記録]図書館の神様(瀬尾まいこ)

瀬尾まいこさんの作品って、全く多くを語らないな、といつも思います。多くを語らないけれど、言いたいことの芯の部分が確実に伝わってくる感じがします。

周りの人に何かを教えてもらって、そうやって進んで行くことは、私たちの人生にとっても普遍的なことに思えます。

自分とは違う人に教えてもらうこと、学ぶこと。年上とか年下とか関係なく。垣内くんって何者なのかなあ。そういうことも、多くを語らず、妹尾さんの物語

もっとみる
[読書記録]君のクイズ(小川哲) / 心から排除できる強さ

[読書記録]君のクイズ(小川哲) / 心から排除できる強さ

全世界共通のクイズ大会ってあるのかな。そんなのがあったらとても面白いな。
確かにクイズって、スポーツなのかもしれません。知識の量だけではなくて傾向や対策、コツもあるだろうし、練習やクイズそのものへの慣れと勉強が必要なのだと思います。

面白かったなぁ。ありえない、と思うか、いやありえるのかも、と思うか。人の可能性ってゼロではないし、だとしたら…という気持ちでずっと読み進めることができました。

もっとみる
[読書記録]その扉をたたく音(瀬尾まいこ) / 繋がる三部作、楽しみ

[読書記録]その扉をたたく音(瀬尾まいこ) / 繋がる三部作、楽しみ

「もう少し、あと少し」と繋がっている「その扉をたたく音」。「もう少し、あと少し」と繋がっている「君が夏を走らせる」。
「君が夏を走らせる」を読んで感想を書いた時、
タルシル📖ヨムノスキーさんがコメント欄にて教えて下さって、それから、必ず読みたいと思っていました。

なんと結果的に外側から読んでいます。要であるところに触れるのを楽しみに。

そして中学生の時の駅伝大会の話が出てくると、「これだ」と

もっとみる
[読書記録]スロウハイツの神様(下)(辻村深月)

[読書記録]スロウハイツの神様(下)(辻村深月)

読み終わってもう一度はじめから読みたい、と全員思うのではないでしょうか。なんてこと。
下巻は「あれれ様子がおかしいぞ」、で始まってどんどん「ああ…」となる怒涛の、そして納得の展開でした。心の中で何度もため息をもらしました。

私も、そして出てくる登場人物達も、完全にこうちゃんを見くびっていたのだと思います。知的でシャイで不器用すぎるこうちゃん。かっこいい。大好きです。え?あれも?これも?そういうこ

もっとみる
[読書記録]スロウハイツの神様〈上〉(辻村深月) / ハピネス三茶以来の衝撃

[読書記録]スロウハイツの神様〈上〉(辻村深月) / ハピネス三茶以来の衝撃

本棚に置いてあって、次読もう、次読もう、とずっと思っていた「スロウハイツの神様」、序盤何度も戻って人間関係を確認したり、状況把握に少し手間取りましたが、やはり辻村深月さん、期待を裏切らない面白さです。

すごくよくわかります。人に触れられたくないほど自分の心の中で大切に思えることって、きっと生きていればそれぞれあるのだと思います。
それを大切にしている人達が住むスロウハイツ、ドラマ「すいか」の「ハ

もっとみる