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なぜ合理的に判断できないのか? ゼロベースで考える工夫とは(0ベース思考に学ぶ)

「なるほど『知らない』と言える勇気と、『子供の目』が新しいアイデアを見つける武器になるということか」

先日、決断のために持つべきモノサシについて考えをまとめました。

自分なりのモノサシを持っておくことは日々をシンプルに生きていく上でとても有効です。自分の中でプライオリティの高い価値観に沿ってモノサシを持っておくことで、直ぐに行動をして、後悔の無い日々が過ごせるように思います。

一方で、仕事では自分の価値観だけでは判断できないケースも多いです。なるべくフラットな視点で考え、客観的に判断して行動していけると良いのですが、なかなかそうも行きません。

そんな中で、改めて読み直して学びのある本があったのでご紹介します。なるべく先入観なく、シンプルに考えるヒントを探ります。

ゼロベースで考えるとは

5年ほど前に一度読んで、久しぶり読み直したのがこちらの一冊。「0ベース思考」。さまざまな問題に対して、既成概念を打ち破った考え方が学べる一冊です。

世界的ベストセラー『ヤバい経済学』『超ヤバい経済学』の著者スティーヴン・レヴィット氏とNYタイムズ誌、ニューヨーカー誌などのメディアで執筆活動をしているスティーヴン・ダブナー氏の共著の一冊。

この本は冒頭から1発かましてきます。「サッカーのPK」は本来は合理的に考えられるというお話。サッカーのPKはどこにシュートするのがもっとも成功率が高いのか?右か、左か。

キッカーの利き足が右なら蹴りやすいのは左サイドです。しかし当然それはキーパーも分かっていることで、キーパーが左サイドに飛ぶ確率は57%、右サイドは41%とのこと。

自分が右利きだとして、蹴りやすい左サイドか、キーパーが飛びにくい右サイドか。悩ましいですが、実はもう一つの選択肢があります。それは「真ん中」に蹴ること。キーパーが真ん中のままの確率は100-57ー41=2%。たったの2%。そしてキッカーの成功確率はサイドに蹴るよりも真ん中の方が7%も高いそうです。

これらから合理的に考えればキッカーは「真ん中に蹴る」べきですね。しかし、実際の試合ではなかなか真ん中に蹴るシーンは見かけません。そこにはキッカーの中にある心理が働いているからです。

真ん中を蹴って、もしキーパーが一歩も動かなかったら当然たやすく止められます。これは見た目的には「一歩も動かずに止めた」という屈辱にも似た状況になりえます。つまり、「下手すると恥をかくようなことは避けて、自分の体面を守る」という心理バイアスがはたらき、確率が低くてもサイドを蹴り「果敢に攻めた自分」でいようとします。

利己的なインセンティブに従うならサイドへ蹴ってしまいますが、利他的なインセンティブに従えば恥をかく危険を冒してでも真ん中に蹴るべきです。人は「みんなの利益」よりも「自分の利益」を優先しがちです。

チームのファンの気持ちとPKのキッカーの気持ちには相容れないジレンマが生じているということですね。人間とは複雑な生き物です。では「自分の利益」を優先せずに、より合理的に考えて行動するにはどうすればよいのでしょうか。

「知らない」ことを怖がらない

この本では「世界で一番言いづらい言葉」は「知らない」という言葉であるという一節が登場します。例えば以下のようなケーススタディがあります。

メアリーという女の子が、お母さんとお兄さんと一緒に海に行きました。赤い車に乗って行きました。海に着いたら、みんなで泳いでアイスクリームを食べて、砂遊びをして、お昼にはサンドイッチを食べました。

そして質問です。
 車は何色でしたか?
 昼食にフィッシュ・アンド・チップスを食べましたか?
 車のなかで音楽を聴きましたか?
 食事と一緒にレモネードを飲みましたか?

ある研究グループがイギリスの5歳から9歳までの小学生にこの質問をしたところ、最初の2つの質問は、子どもたちのほぼ全員が正解。でも3問めと4問めは結果が極端に悪かったそうです。冷静に考えれば分かりますが、この2つの問いは「わからない」が正解です。答えるのに情報が足りていません。でも、なんと76%の子どもたちが、「はい」か「いいえ」で答えたそうです。

何かを「知らない」と正直に認めることは人は苦手です。まずは「知らない」ということを認めることが大切です。知ったかぶりをすることで、現状を正しく把握することができず、結果的には正しい意思決定を妨げてしまいます。「知らない」ことを認める正直なスタンスがあって、はじめて現実を受け止めることができる。これがゼロベースで考えるスタートラインと言えます。

ゼロベースのヒントは「子供の視点」

先のケースのように俗人的な損得や利益を優先せずに考えるためには、ゼロベースで考えるスタンスが重要になります。その時に大切なマインドセットが「子供のように考える」という視点。

本書では「8歳児のように考えることは実りが多い」と説きます。先にお話しした通り「知らない」という前提に立って考えると、子供は正に知っていることが少ない存在です。つまりそもそも先入観を持ちにくいのが子供とも言えます。「王様は新しい服なんて着ていない、本当は裸だ」と言い当てたのも子供です。

そして子供はどんなに突拍子もないアイデアでも口にします。アイデアは思いつくのは自由です。出たアイデアを実行するかどうかを大人の視点で判断すれば良いのです。発想するフェーズでは先入観をすてて、子供の視点で考えることが大切ということです。

そしてもうひとつ、小さな問題に着目することも大切です。「わかりきったこと」にゼロベースで向き合うことでこれまでの常識にとらわれない創造的なアプローチが発見できたりします。そのためにもわかりきったことを口にしてみる、それを疑ってみる、「そもそもなぜ?」というピュアな視点が根本的な課題を発見する突破口となったりします。

大人は騙される

プロのマジシャン曰く「大人よりも子供を騙す方がずっと難しい」そうです。大人の科学者でもシンプルな仕掛けを見破れず騙されてしまうところを、子供はさっと見破ったりします。これは「〇〇は▢▢だろう」という先入観や思い込みがないからです。大人は1つのことに対して集中しやすいのに対して、子どもの集中力は分散的なのもその要因の一つ。気づくアンテナが多いのです。

マジックとはこうした先入観や視野の狭さに根差したトリックを巧みに活用していると言えますね。大人ぶってわかったふりをしていると、実はいろんな場面で騙されているのかもしれません。

まとめ

仕事などでも「一旦ゼロベースで考えましょう」という言葉がミーティングでも見聞きします。この言葉の意図は、現状のしがらみや固定概念をなくして、真の問いに向き合いましょう、ということです。しかし、どうやってすればよいのか、ということについて正しくアプローチ出来ている人は少ないでしょう。そういう意味で「0ベース思考」は学びの詰まったとてもおススメの一冊です。

ゼロベースで考えるには、自分の「知ったかぶり」の皮をはぐところからはじめなければなりません。「知っている」というフィルターは思った以上に外れにくく、目の前の状況を濁って見せています。「知らない」「わからない」という前提に立つことで、はじめてゼロベースで考える準備ができます。

そして実際に考えるフェーズでは「子供のようにピュアな視点」を大切にしましょう。私もこれまで、経験的に「ビギナーズラック」の価値を体感したケースが何度かあります。それはその業界のことを良く知らないからこそできた、そもそも論を問いかける仕事が多かったように思います。

業界の常識はユーザーの非常識です。子供のようにピュアにシンプルに考えると「当然こうした方が良いよね」という極めて当たり前な答えが見つかったりします。それを見て観ぬふりをして、くさいものにフタをしたままでは変わるモノも変わりません。

真にあるべき姿ってどういう常態なのか。子供様な視点で自分の仕事や生活を振り返ると、アイデアに富んだ生活がおくれるのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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