山口宗利

本と映画。since 2020.03。今年の目標:明朗な

山口宗利

本と映画。since 2020.03。今年の目標:明朗な

最近の記事

パズー∶『水中の哲学者たち』永井玲依。

パズーが目に入って、決めました。 本書のエピソードは、パズーの父親が『ラピュタ』に想いをはせると、『風立ちぬ』二郎が重なる。 この場合のバルスは、時間を意味するのだと思うが、アニメーションは動くんだという驚きがその間際にある。 同期的な時間と、つながるとは大げさな何かではありますが、何かはある。 バルスするべきか、バルスしないべきか。 哲学者の宮崎駿さんは、飛行機とは何かを語る。それを想像すると。 飛行機に、実体はなく、本質もない。だからアニメーションは、現実をう

    • 『センスの哲学』千葉雅也

      お気に入りの数字は4です。それから3です。 というのもアートを考える時、千葉さんの『現代思想入門』まとめが重要だと思うからです。 『現代思想入門』は新書大賞として、2023年のプレゼンター千葉さんは、次の『言語の本質』に全てを託した。 3500文字強。長め。 一番大事なのは、目次より「センスの哲学のまとめ」です。まずご覧ください。 現代思想入門 この場合は、思想のパターンというか攻略チャートが、シンプルに表現されている。 他者性は、他者という一般的な用語とは区別

      • ノーラン「反復と加速」

        映画『オッペンハイマー』についてです。 ネタバレ。 あらゆる映画監督が持つ、フェティシズム。これはマルクス用語だったが、いつからか様々な意味を持つようになりました。 この場合は、カットの持つフェティシズムに対する異常なまでの執着という点です。 現代思想への影響は、フロイトは心理学的な描写が映画のほぼ全てだと言えるし、ニーチェは、プロメテウス的な存在として、思想家からノーランまでに特別視されている。 この点で、ニーチェは、左派加速主義的な初期ポストモダンの硬直性を過激

        • アカデミーの『君たちはどう生きるか』

          この映画の体験は、1度目は、得体のしれないもの。2度目は、もとからあるもの。この様に変化した。 初見は1度とりあえずのストーリーを経験すると何も解らず、おののくのですが、後日再び同じ映画が始まると、いつもの宮崎作品があるのです。世界は何度でも。 それでも、言外の不一致とでも表現できない部分があるのがアニメーションなのかもしれない。総合芸術としての映画は物語であって、アニメは何かを宿している。 ・・・ ドキュメンタリーも見る。この中で印象的なのは、師匠高畑氏の筆跡を真似

        パズー∶『水中の哲学者たち』永井玲依。

        マガジン

        • 書評シリーズ
          11本
        • ジブリ批評のマガジン
          4本

        記事

          『話が通じない相手と話をする方法』会話/の/哲学

          面白い。 本書では、会話の方法論を難易度別に紹介しています。一番難しいのはイデオローグとの会話です。 イデオローグ。それは、なんというかゲームの裏ボスのような存在です。 『話が通じない相手と話をする方法』著者は、ピーター・ボゴジアン+ジェームズ・リンゼイです。 後半部分の7章から考えます。人間の心理は、信念によって揺るがない。この原因は、ほとんど価値観によっている。 価値観は道徳的な面では6種類。私が整理したものが網掛けの部分です。 主義者は、どのような価値観に訴

          『話が通じない相手と話をする方法』会話/の/哲学

          『〈私〉を取り戻す哲学』フッサールからガブリエル

          私とは何か。 岩内章太郎さんのこの本では、フッサールの現象学を起点として現代思想を再構築するきっかけについて考えています。 現象学的還元。フッサールの基本戦略は主観(私)と客観(あなた、世界など)の図式を解説する事にあります。 主観があって客観がある。目から矢印が出て、リンゴに向かう。 ・フッサールの古い哲学 近代哲学は、この矢印を逆にして、カントの超越論的な哲学になって、例えば理性で説明する。(客観から主観に向かう)始めからインストールされているOS部分です。

          『〈私〉を取り戻す哲学』フッサールからガブリエル

          新書大賞2024は、20冊読む?

          1位になるのは理由がある。『言語の本質』。 生成の場合。それは言語習得がオノマトペの例えばドューンという発話に始まるように、哲学的な発想法によって深まる。 それは、何か前に向かう力を感じます。 関連する野矢さんは『言語哲学がはじまる』。私は「ラッセルがすき」でまとめますが、現代思想入門の哲学史を補うものでして、超重要です。 4位。『Z世代のアメリカ』。これは2位東浩紀氏と、3位客観性を補うものとして、アメリカ思想を踏まえて世代論は若さについて、ぽかぽかするような気持ち

          新書大賞2024は、20冊読む?

          映画『哀れなるものたち』

          最高に面白い。 ネタバレ。 船旅ではありますが、ロードムービーという感じです。 特徴的なモノクロに、まあ重大な事がおきてカラーになります。 ベラの成長は、髪の長さでわかるのですが、すぐに伸びる。これは、彼女の成長(一般的には経験)のスピードと同期しているのですが、長ロングになると止まります。 この辺は、ルールはわかりませんが、ドラゴンボールのサイヤ人です。 旅立ちと、帰還の時間を同期させているとは思うのですが、これに付随するのは内面ということです。 異世界ものの

          映画『哀れなるものたち』

          RE∶佐々木敦『ニッポンの思想』書評の整理学

          一度書いた書評は、振り返ると書評とは何かということを考えるライフログになる。 以前書いたのは、増補版『ニッポンの思想』が、時間を置いてバージョンアップされるその奇跡は、何らかの感覚があって、それ自体が哲学的な考察を伴う事でした。 増補版は、2010年代と20年代の進行形を追加していて、例えば千葉さん、國分さんで説明する。 すべての物事には、感覚がある。関係性が生じる。 本の書評の場合。 これは本の構成自体に、その書評の質が依存する。これは網羅的に書いた場合です。

          RE∶佐々木敦『ニッポンの思想』書評の整理学

          ハフる読書『プラトン 理想国の現在』納富信留

          とりあえずの定義としてハフるを、ハフの動詞形とします。ハフは破風なのですが、この本のポイントとしたいです。 ギリシャ神殿の屋根部分の平たい二等辺三角形が破風です。(本書付録:破風構造を読み解く、より) プラトン『ポリテイア』(国家)の構造を、次の様に説明します。 1巻∶序論の導入部分と10巻∶補遺の最終結論が対応する。同様に正義と不正が対応して、その間の脱線部分が重要という構成です。 言い換えると、タマネギの3層構造は、重要なのは真ん中にある。芯にある。(厳密には3+

          ハフる読書『プラトン 理想国の現在』納富信留

          レトリックの解体『ニッポンの思想』(増補版)佐々木敦

          管理社会の問題は、言語的なものか、はたまた記号論的なものか。 2020年代に観光客を考えると、それは受け身として、観光客されるという事かもしれない。 例えば、銀座のパサージュ(アーケード)を、どのように考えるべきか。 年代別のニッポン思想は、10年周期になる。 浅田彰のドゥルーズ。蓮實重彦のドゥルーズ。 そして、東浩紀はデリダとして現れる。そこまでがゼロ年代の総括でした。 来るべき10年代を前に、旧版の筆者は、やや悲観的にも思える。一方で、増補版では、やや楽観的に

          レトリックの解体『ニッポンの思想』(増補版)佐々木敦

          「新書ベスト3」2023-24シーズン

          1冊目『ソーシャル・ジャスティス』内田舞。 このシンプルで、複雑な概念は、良く考えたいです。 承認欲求。これはソーシャル・ネットにつながれた世界で過剰な言説によってアピールを行う様態に対して、否定的な評価をする用語とします。 この場合の承認欲求は、過剰である。それが問題視されますが、承認欲求それ自体は、何も問題ない。 過剰さに対する、過剰な批判。それが承認欲求という言説となってしまっている。 本書では、そのようなレッテルが世界を覆い尽くすような現実に対して、自身の生

          「新書ベスト3」2023-24シーズン

          現代ジブリ思想入門

          最新作『君たち』は『千と千尋』と同じ構造なのだけど、実際はこれ以外の構造は、宮崎作品には存在しない。 スチーム(蒸気)として。ステーム(茎)として。 汽車のモチーフは、形式を変え飛行機になっても、舟になっても、その本体は変わらなくて。 カリオストロの城も、塔のラプンツェルも共に、秘密の帝国の中に存在する。それは地下にあるのかもしれない。 90年代。この世紀末は、ジブリ作品では近代批判が確実な形でやってくるのですが、抽象的な現代思想でした。 管理社会、マルクスとニーチ

          現代ジブリ思想入門

          エヴァと『構造と力』浅田彰

          手にとる名著は、その装丁のアレンジメントをも素晴らしいデザイン。 映画批評が存在するかということを、現代思想を踏まえて考える。 例えば「宇多田」の自己は、その存在のうたかたに宿って、エヴァの良心となる。 あらかたフランス文学と現代思想のコアが、どこにあるかという表現が映画であって、その内部にウタはある。 その点で映画批評というのが、自己の精神分析ではなく、映画のテクスト(部分)の精神分析にこだわり過ぎる事は問題だ。 実際は、伏線などという用語が独り歩きしてしまうが、

          エヴァと『構造と力』浅田彰

          斎藤幸平『マルクス解体』人新世の未来予想図

          ポスト・モダン。これはモダン批判ということで、例えば管理社会で、のっぺらになった社会は問題があるので考え直そうというスタンスによっている。 というのも、例えば脱構築的に極論から常識を疑っていくような現代思想の傾向は、客観的にならなければならない。読み方があるという事です。 その上で、脱成長に向き合わなければならない。そういう意味では、この概念を、ライフ・スタイルとして捉えなければならない。 ゆえに、脱成長は「脱政治」という用語と同じくらい政治的なんだ。そう思います。

          斎藤幸平『マルクス解体』人新世の未来予想図

          カントより普通に、ラッセルが好き『言語哲学が始まる』野矢茂樹

          ヒット御礼。 言語と論理学。このあたりは、勉強したいけど、難解な思想家について『言語哲学大全』飯田も第二巻は購入しただけど、一気読みは無理よ、です。 哲学者の死は、論破されることでは無く、忘却である。(過去の思想家は参照されていく訳です。ラッセルさん) 本書では、著者の本領発揮を、論理からウィトゲンシュタインで、それに先立つフレーゲからラッセルを、正確な記述で構成されてます。 論理学の哲学史的な列挙(記号論と区別するのだと思う) ・フレーゲ ・ラッセル ・ウィトゲンシ

          カントより普通に、ラッセルが好き『言語哲学が始まる』野矢茂樹