げんにび

仏教、哲学、歴史、社会

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怒りとは何か? 怒りを許すこと

 貪欲や怒りに駆られて、攻撃的になっている人のことを、お釈迦様は「悪」ではなく「馬鹿」として扱った。悪いのではなく、知らないだけなのだ。  アングリマーラという純粋な青年が、師匠に騙されて、千人殺せば解脱できると勘違いした。九百九十九人殺したところで釈迦に会い回心するが、釈迦は罰を与えず、教団に出家させた。  ダイバダッタという従兄に嫉妬で殺されかけた時も、全く怒らなかった。  「貪欲」は「苦しみ」である。「怒り」も「苦しみ」である。僕は欲望よりも怒りが強い性格なので、し

    • 創作の条件 幸福

       餅犬製作所というエロ漫画家の方が「理想のエロ漫画を自給自足したい」と書いていた。読むと結構特殊な性癖のようで、あとがきでもその哲学が強く語られていた。理想の創作だと思った。  僕は創作が好きだけれど、創作の批判ばかりしてきた。神様ごっことか偽善者とか権力欲の塊とか。やっと自分で創作を肯定できるようになったのでうれしい。僕は不幸だったから、創作を肯定できなかった。創作を幸福の手段に貶めるのは、自分の作品に失礼だと思っていた。  飢餓の感情で文章を書くのが嫌だった。認められ

      • 言語と影響 ソフィスト 苦悩 仏教

         ソクラテスはソフィストの代表として死刑にされた。プラトンはソクラテスとソフィストの違いを対話として描き、ソクラテスの無念を晴らそうとした。   ソフィストというのは弁論術の教師である。民主主義であった古代アテネでは、議論が強いこと=権力であった。だからソフィストに大金を払って、若者は弁論術を学んだ。ソクラテスはこれを批判して、対話というのはレトリックで相手を煙に巻くのではなく、互いの対話を通して真理へ導く「弁証法」であると説いた。  ここに政治/哲学の断絶がある。言語という

        • 自分のことが死ぬほど嫌いだから君のことが好きだよ

           『快読 ニーチェ「ツァラトゥストラはこう語った」』という本を読んでいる。やっぱニーチェは好きだ。近代の欺瞞に対するまなざしが一番鋭い。読まないのは勿体ない。ただ、自分も浸っている時代の空気感を批判しているので、その尻馬に乗って他者を裁くのではなく、自己批判としても読むべきだと思う。  自己嫌悪というのは現代病の一つだと思う。メンタルヘルスの多くの問題が自己嫌悪に根差している。ニーチェの診断では「共同体が創られたことにより、人間の本質である残酷さが外部に発散できなくなったの

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        • 本質
          46本
        • 感傷
          21本
        • 4本

        記事

          幸福についての驚くべき秘密

           ティク・ナット・ハン師の本を再読していると、驚くべきことが書かれていた。「ブッダは既に今、幸福になる条件は揃っていると仰ったのです」  驚くべきことだと思う。震えた。「××に到達したら」「〇〇を手に入れたら」「病気が治ったら」「家庭を持ったら」「恋人ができたら」「悟りを開いたら」という条件は、「幸福」には一切関係がない。びっくりした。  人生をRPGゲームに例えてみる。一般的なRPGゲームにはクエストがたくさんあって、クエストをたくさんこなして、ラスボスを倒せば、一件落

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          社会的成功やモテのために必要な物 ハングリー精神

           成功にも様々な段階があるが、成功されていると言われる人を観察していて思うことがある。上手く言語化できなくて「のっぴきならなさ」とか「焦燥」とか呼んでいたが、なんのことはない、スティーブ・ジョブズがよく言っていたことだった。「ハングリー精神」だ。  努力で覆せるものもある。知り合いに知的に問題のある人がいるのだが、フォロワーが1万人超えている人がいる。全然面白くないし、才能もないんだけれど、「有名なツイッタラーのパターンを覚えてツイートをして増やした」と言っていた。同じよう

          社会的成功やモテのために必要な物 ハングリー精神

          さようなら弱者男性論

           「男女の友情は成立するか?」という問いそのものが邪悪であると感じる。成立するに決まっている。  知り合いがTwitterの人との通話の様子を教えてくれた。フランス文学が好きな男性で、そこそこの大学へ行って、塾講師をしているらしい。住みが近いので「あそこリピート率高いらしいよ、一緒に行く?」と言われたので「どこ?」と言うと「ホテル」と言われたらしい。邪悪だと思った。  英語でいうとsinだと思う。男女の奢り論争が一向に止まないのは、人間が邪悪だからだと思う。キリスト教の七つ

          さようなら弱者男性論

          歴史の勉強をした感想 死

           中国の歴史の勉強をしている。4000ページぐらいあるのだが、1000ページぐらいしか読めていない。夏王朝から始まって、殷、周、春秋戦国、秦、漢、まで読み進めた。    最近、物凄い虚しい気持ちになることが多くて、なんでだろうと思っていたら、多分歴史の本を読んでいるからだ。天下を統一した始皇帝の天下は15年しか続かず、策謀と権力欲の渦巻く朝廷の悲劇が凄い苦しい。戦果を挙げすぎた将軍は、謀反の恐れがあるので誅殺されたりする。なんのために頑張ったんだろうと虚しくなる。というか安ら

          歴史の勉強をした感想 死

          無常と概念 生と死 ブッダとプラトン

           「執着すべきものがなくなれば、生きる指針がなくなり、何も行うことができないのではないか」というコメントを貰った。  似たような話を読んだことがある。ロバを中心において、ちょうど3メートルずつ離して左右に餌を置く。ロバはどっちの餌を食べるのが良いかを決める基準を持っていないので、餓死して死ぬ。  もちろん現実にはそうならずに、どちらかの餌を食べるだろう。思考実験ではそうなる。  仏教の「慈悲(抜苦与楽)」を定式化すると、こうなると思う。「自己の利益を一切省みず、他者の苦痛が

          無常と概念 生と死 ブッダとプラトン

          美しい地獄 差異について

           「反逆の神話ー反体制はカネになる」という本を読んでいる。要約すると、こんな感じ「カウンターカルチャーの人間は、"社会に順応して歯車になること"を悪だと考えているから、文化・社会そのものを覆すために無意識に存在する(とフロイトが主張した)性的衝動や攻撃衝動を解放することを目指す。それがギャング文化だったりフリーセックスだったりするが、実は文化に抑圧された「無意識」など存在しない。「他人と違うアイデンティティが欲しい」という消費主義的な競争しか存在せず、カウンターカルチャーとい

          美しい地獄 差異について

          仏教と恋愛は両立するのか 無常と永遠

           最近、中国の歴史の勉強をしているのだが、国のトップが女に狂って国がおかしくなることが本当に多い。中国の君子は一夫多妻で、女性は自分の子供をトップにしたいから、あらゆる手段を講じる。正統な跡継ぎの王子から父王へのプレゼントに毒を混ぜて「こいつは父親を暗殺しようとした」と言いふらして王子を殺させるなど、結構ヤバい。  女性にふしだらなリーダーだと最悪国が亡びる。男女関係って恐ろしい。  こんなに恐ろしいものなのに、無条件に礼賛されているし、マニュアルもない。だから不幸な恋愛が

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          難解な文章が嫌い

           最近浅田彰の「構造と力」が文庫化されたみたいで、ポストモダン思想かぶれみたいな人がイキイキしている。「難解な文章」について考えてみた。  「言語」というのは「実践」であると考えている。もっと分かりやすく言えば「道具」だ。何かの目的のために「言葉」を使う。言語ゲームだ。相手に何かしらの「影響」を与えるのが言語という道具である。だから、自ずとその目的によって、文章や喋りの形態も変わってくる。    ヒトラーはプロパガンダの原則として ・テーマや標語を絞る ・あまり知性を要求し

          難解な文章が嫌い

          世界の言語化について

           最近気づいたんだけれど、僕は言語化が好きだ。最近になってようやく気付いたのは、抗うつ剤をやめてから、頭の働きがグンと良くなったのも関係していると思う。性癖というか、うまく言語化できた時には物凄いカタルシスがある。数日前に書いた  この記事は自分でも凄く気に入っていて、ブログを書いていて良かったと心底思った。  少し前から「解像度」という言葉が使われるようになった。面白い言葉だと思う。どれだけ物事の本質をうまく言語化できるかということだと思うが、解像度という言葉自体が「言語

          世界の言語化について

          身体と感情の関係 心の体重 うつ病の本質

           最近読んだIFSという心理療法の本に「身体にはもう一つの次元がある」みたいなことが書いてあった。そんな神秘主義風に言わなくてもいいのにと思う。他にもクリスティアン・ネフの「セルフ・コンパッション」には「フィーリーング・ボディ」という言い方がされていた。  スピリチュアル系の本ではよく「感情解放ワーク」みたいなのがある。セドナメソッドやレナード・ジェイコブソンが有名だ。例えが汚いが、宿便みたいに溜まっている感情を全部出そうみたいな感じだ。胡散臭いな~と思っていたけれど、実際に

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          障害者こそ真の強者である 障害者 生活保護

           福祉が充実しすぎた社会。本来、社会のために死ぬべきであるはずの無産の障害者が、本来の強者である健常者の税金にフリーライドするようになった。健常者が汗水たらして稼いだ血税で、無為徒食の生活…。自然の摂理から言えば、死んでしまって当然の障害者を養うようになった社会は、やはり歪んでいると言わざるを得ない。正直者がバカを見る。働き者がバカを見る。働かざるもの食うべからず。健常者の金で悠々自適にネットフリックスを見て生活する障害者。この異常に肥大化した福祉社会の格差を是正すべく、ある

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          何が全てを台無しにするのか? 哲学、芸術、笑い、資本主義について

           一言で言えば「自意識」である。  哲学、芸術を例にとる。  哲学を台無しにしたのは、ニーチェである。哲学に自意識が芽生えたと言ってもいい。ニーチェは根本的な疑義を呈する。「なぜ真理を求めるのか?」これほど反哲学的で、哲学的な疑問はない。  「哲学についての哲学」が生まれる。ニーチェの系譜学的方法を正統に受け継いだのはフーコーだと思うが、フーコーは学問が歴史的にどのように規定されているのかを示した。「メタ学問」だ。もうこうなると死ぬ。「真理とは何か?」「いかに生きるべきか

          何が全てを台無しにするのか? 哲学、芸術、笑い、資本主義について