マガジンのカバー画像

或る若者の思索

77
私が日常生活の中で感じた何気ないことを、日記よりちょっとだけ推敲して書いてます。
運営しているクリエイター

#note毎日更新

ハイ・ヌーンは邪魔させない

ハイ・ヌーンは邪魔させない

 ある日の昼時、働いているのが逆に失礼なくらいの雲一つない空が広がっている。こんな空の下で、誰が私に働けと命じているのだろう、まったく不躾なやつだ、と思いながらも颯爽と車を走らせていた。社用携帯は11時を過ぎたころからめっきり鳴らないが、カーステレオは陽気なナンバーを鳴らしている。12時の5分前を告げるDJの高らかな声を合図に、車はややスピードを落とした。

 国道沿いのラーメン屋の駐車場に車をと

もっとみる
スマブラは持ってないやつのほうが上手い

スマブラは持ってないやつのほうが上手い

 そいつは運動から勉強までひととおり何でも器用にこなす、たまに鼻にかかる奴だった。私はというと運動はてんでダメで、特に球技は壊滅的、しかし走るのと泳ぐのだけは問題なかった。勉強は苦手ではなかったけど、中の上あたりをずっと徘徊していたと思う。
 そいつは明朗快活な奴で、いわゆるヤンキーとも仲が良く、対照的にオタク連中とも親和性の高い、水と油の両方を性質を持ったような奴だった。私はというと、ヤンキーに

もっとみる
俺たちは現代の参勤交代をしている

俺たちは現代の参勤交代をしている

 電車の中で見かけるくたびれたサラリーマンがスマホで十中八九プレイしている、クソほどつまんなさそうな謎のカラフルなパズルゲームは一体なんなのか。しかもよくよく見てみると、全員が同じゲームをやっているようで全員やってるゲームが微妙に違う。アメリカの激甘糖質爆弾ケーキ並の異様な原色カラーリングであることだけは共通しているが、その他は一体なんの違いがあるのか、皆目検討もつかない。そんな謎のパズルゲームを

もっとみる
雑記②

雑記②

 2021年5月26日、今日あったエピソードをエッセイ仕立てに三本立て。

「仮面ライダーのOP」 朝の駅の雑踏の中で、仮面ライダーのOP曲を聴いてみる。すると、なんだか自分が大きな使命を背負って生きているような感覚に陥る。私はもしかして、天の道を行き、総てを司るために生まれてきたのではないか?そんな気がしてくる。

 一見すると私は普通の人間。しかしその実は、変身ベルトひとつで悪の怪人と闘うライ

もっとみる
半径2kmの中を知らない

半径2kmの中を知らない

 一度故郷を離れてみると、自分の故郷の持つ優しさとか安堵感というか、なんかそういう--言葉にし難い--ものを改めて感じることになる。旅によく出る人ならば、ホームグラウンドの持つ絶対的な安心感についてはわかってくれると思う。それは実家、母校、高校の最寄り駅、山とか海の自然、姿形は様々である。

 特に何もない町だ。新築の家も古風な家も入り乱れている。子供の数は多い、小さな公園でさえ子供たちは走り回っ

もっとみる