Keita Onishi

大西景太/映像作家 音の質感、音楽の構造をアニメーションで表現する手法でミュージックビ…

Keita Onishi

大西景太/映像作家 音の質感、音楽の構造をアニメーションで表現する手法でミュージックビデオ、映像インスタレーションなどを制作します。www.keitaonishi.com

マガジン

  • 音楽や本の感想

    ただの感想です。

  • Visualization of Music

    音楽を可視化した自作の映像作品について、その解説です。

  • 音のかたちを見る

    古今東西の色々な音楽を、視覚的にとらえることで理解できるか?試みのスケッチを記録しています。

記事一覧

音楽を視覚化することでよく聴く、というワークショップを考えてみる

コーネリアス、民謡、バロック音楽など、色々なジャンルの音楽を視覚化した映像表現を行なってきたが、この手法を用いてワークショップを行ったり、授業で学生さんにトライ…

Keita Onishi
6か月前
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連鎖インフルエンサー (立川談志「文七元結」と中島岳志「思いがけず利他」)

タレントさんの自殺報道があったあくる日、朝から人身事故があり、帰りも別の人身事故で身動きがとれなかった。報道がトリガーになって連鎖してしまったように思えてしまう…

Keita Onishi
9か月前
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サクッと表現する健康 (a life/大貫妙子、坂本龍一)

坂本龍一が亡くなってしばらく経つが、評論などはあまり読まずに、どういう存在だったのかなと、モゾモゾ考えている。 大貫妙子と坂本龍一による「UTAU」収録曲「A Life」…

Keita Onishi
9か月前
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名曲アルバム+「北海道民謡/江差追分」

NHK「名曲アルバムプラス」のために「北海道民謡 江差追分」の映像を作りました。(2023年3月12日放送)この歌と映像について少し書いておきます。 なぜ江差追分か。 前作…

Keita Onishi
1年前
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メモ:自転車のイメージ

春、仕事場が都心にうつったので、自転車を買った。東京は自転車があれば電車を使わずとも結構いろいろ行けると聞く。買ったのは小径車で歩行の延長、というイメージ。ロー…

Keita Onishi
2年前
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多人数歌唱

「レクイエム」でポリフォニー合唱を扱ったので、多人数歌唱の色々なかたちを改めて知りたくなった。以下は自分が好きなものを並べているだけですが、今後研究したい。コロ…

Keita Onishi
2年前
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Audiovisual ARアプリ「Forest and Trees」がリリースされました。(2022年2月)

アプリ概要音の印象を視覚化したアニメーションオブジェクトを配置して、オーディオビジュアル環境をつくれるARアプリをリリースしました。iiOSのみ、無料。株式会社白(sir…

Keita Onishi
2年前
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聴くバッハ、そして観るバッハ(フーガの視覚化)

鍵盤奏者、大塚直哉さんのレクチャーコンサート(2021年7月11日)に、映像作家としてゲスト出演した記録です。 このレクチャーコンサートシリーズはバッハの「平均律クラヴ…

Keita Onishi
2年前
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レクイエム/カルドーゾ作曲

NHKの番組「名曲アルバム+(プラス)レクイエム/カルドーゾ作曲」の制作メモです。(2021年3/25放映) 選曲について今回の「名曲アルバムプラス」は、コロナ禍の影響を受…

Keita Onishi
3年前
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血よ

青葉市子のアルバム「アダンの風」収録曲「血の風」は沖縄の言葉で歌詞が書かれている。どんな意味か気になって、インタビューなどを色々みた。(mikiki/daisy holiday/七…

Keita Onishi
3年前
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5.高田渡「ブラザー軒」/透明キラキラの結界

音の可視化についていくつか書いた。1は音程の上下、2は音の左右移動、3は音の偏在、4は入れ違う音。今回は少し外れて、主に歌詞の世界を見る。音のことも最後に少しだけ。…

Keita Onishi
3年前
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小津安二郎メモ

4月から6月、よく小津映画を見ていた。Twitterで見た「Zoom東京物語(森翔太)」とインスタで見た「フランス版ポスター」(Tom Haugomat)をきっかけとして定番の「東京物…

Keita Onishi
3年前
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4.オノシュンスケ「ディスコって」/異形のクロスワードダンス

「ディスコって」はSynsuke Onoによる坂本慎太郎の同曲のカバーだが、「原曲と両A面扱い/坂本がMV制作」という破格の待遇でリリースされたもの。 オノの音楽についてはク…

Keita Onishi
4年前
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3.Sweet Williamと青葉市子「あまねき」/オーディオ・アニミズム

このマガジン「音のかたちを見る」は、既存曲を視覚的に捉える試みの記録です。 オーディオ・アニミズム2018年の展覧会「音のアーキテクチャ:Audio Architecture」展の企…

Keita Onishi
4年前
11

Spotifyに変えた

Apple MusicからSpotifyに移った。Apple MusicでたまたまLikeした「フィッシュマンズ」に反応したアルゴリズムが、自分の苦手な洋楽もどきJ-Popばかり再生してきたのがきっ…

Keita Onishi
4年前
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2.クラフトワーク「アウトバーン」 /通過する音

このマガジン「音のかたちを見る」は、既存の曲を視覚的に捉えてみる試みの記録です。 フローリアン・シュナイダーの逝去の報をきいてクラフトワークを改めて聞く。Spotif…

Keita Onishi
4年前
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音楽を視覚化することでよく聴く、というワークショップを考えてみる

コーネリアス、民謡、バロック音楽など、色々なジャンルの音楽を視覚化した映像表現を行なってきたが、この手法を用いてワークショップを行ったり、授業で学生さんにトライしてもらったりすることには全然興味がなかった。

自分の方法を人に伝えて作らせても劣化コピーしか作れないだろう、彼ら自身のオリジナルな表現に達することができないなら意味が薄い、と考えていた。

しかし最近「美術作品の対話型鑑賞」という授業方

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連鎖インフルエンサー (立川談志「文七元結」と中島岳志「思いがけず利他」)

タレントさんの自殺報道があったあくる日、朝から人身事故があり、帰りも別の人身事故で身動きがとれなかった。報道がトリガーになって連鎖してしまったように思えてしまう。

読みはじめた「思いがけず利他」という本には、落語「文七元結(ぶんしちもっとい)」が、利他を考えるきっかけとしてとりあげられている。川に身投げしようとする男を助ける噺は、電車を待つ今の状況とリンクするし、聞いたことがなかったのでスポティ

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サクッと表現する健康 (a life/大貫妙子、坂本龍一)

坂本龍一が亡くなってしばらく経つが、評論などはあまり読まずに、どういう存在だったのかなと、モゾモゾ考えている。

大貫妙子と坂本龍一による「UTAU」収録曲「A Life」では「汗を流そう、ごはんを食べよう、ぐっすり眠ろう、つま先まで」と人間らしい充実した生活が描かれているが、その中に「見たら助けよう、手を伸ばして」も含まれているのがよい。それも人間らしい健康な生活に含まれる、という大貫の毅然とし

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名曲アルバム+「北海道民謡/江差追分」

名曲アルバム+「北海道民謡/江差追分」

NHK「名曲アルバムプラス」のために「北海道民謡 江差追分」の映像を作りました。(2023年3月12日放送)この歌と映像について少し書いておきます。

なぜ江差追分か。

前作「名曲+」では無伴奏の合唱「レクイエム」を作りました。コロナ初年の2020年冬、皆で歌う楽しさが失われた年でした。(放送'21年3月)

それを経て今回、合唱もいいが独唱もいい、と思いました。他人と息をあわせる合唱に比べ、ひ

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メモ:自転車のイメージ

春、仕事場が都心にうつったので、自転車を買った。東京は自転車があれば電車を使わずとも結構いろいろ行けると聞く。買ったのは小径車で歩行の延長、というイメージ。ロードバイクは格好いいが、車やズームレンズや武器に近い「距離を制する本能」という感じもある。高田渡は「自転車にのって」で「ちょいとそこまで歩きたいから」と歌った。自転車だけど走ってない。

緒方壽人著「コンヴィヴィアル・テクノロジー」で、テクノ

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多人数歌唱

「レクイエム」でポリフォニー合唱を扱ったので、多人数歌唱の色々なかたちを改めて知りたくなった。以下は自分が好きなものを並べているだけですが、今後研究したい。コロナ禍でもっとも活動しがたい「合唱」。いつかやりたいとも思っている。

シンプルなもの

Benny Sings & the Dox Family - Make a Rainbow
ハーモニーはあるが斉唱に近い、楽しくみんなで肩を組んで歌うタ

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Audiovisual ARアプリ「Forest and Trees」がリリースされました。(2022年2月)

Audiovisual ARアプリ「Forest and Trees」がリリースされました。(2022年2月)

アプリ概要音の印象を視覚化したアニメーションオブジェクトを配置して、オーディオビジュアル環境をつくれるARアプリをリリースしました。iiOSのみ、無料。株式会社白(siro Inc.)と共に開発しました。iPad推奨です。

2020年に発表したARインスタレーション作品が元になっています(後述)

アプリでは、自分で選択したオブジェクトを好きなタイミングで平面上に配置していくことができます。長押

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聴くバッハ、そして観るバッハ(フーガの視覚化)

聴くバッハ、そして観るバッハ(フーガの視覚化)

鍵盤奏者、大塚直哉さんのレクチャーコンサート(2021年7月11日)に、映像作家としてゲスト出演した記録です。

このレクチャーコンサートシリーズはバッハの「平均律クラヴィーア曲集」をとりあげ、大塚さんのレクチャーを交えながらポジティフオルガンとチェンバロという2種の古楽器で聴き比べるという企画です。

「平均律」はハ長調、ハ短調、嬰ハ長調、嬰ハ短調...と12の長短調すべてをたどる24曲(その全

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レクイエム/カルドーゾ作曲

レクイエム/カルドーゾ作曲

NHKの番組「名曲アルバム+(プラス)レクイエム/カルドーゾ作曲」の制作メモです。(2021年3/25放映)

選曲について今回の「名曲アルバムプラス」は、コロナ禍の影響を受けて新規録音ができず、既存の「名曲アルバム」音源を用いての制作となりました。今までは音のミックスにまで要望をいれてもらい、音を聞き分けやすくしていましたが今回それができないため、最もシンプルで全ての音が聴き分けられるものを選曲

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血よ

血よ

青葉市子のアルバム「アダンの風」収録曲「血の風」は沖縄の言葉で歌詞が書かれている。どんな意味か気になって、インタビューなどを色々みた。(mikiki/daisy holiday/七尾旅人LIFEHOUSE)以下は「血の風」から抜粋

チヨチヨ(血よ、血よ、)
フーヤメ ヤラワン(疫病あれど)
ウトゥルシヤ ハミドゥル ヤラワン(激雷あれど)
ヤミユ ヤラワン(闇夜あれど)
ナー ミチミチ ンカイイ

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5.高田渡「ブラザー軒」/透明キラキラの結界

5.高田渡「ブラザー軒」/透明キラキラの結界

音の可視化についていくつか書いた。1は音程の上下、2は音の左右移動、3は音の偏在、4は入れ違う音。今回は少し外れて、主に歌詞の世界を見る。音のことも最後に少しだけ。

高田渡(1949-2005)は山之口獏、金子光晴などの現代詩にアメリカのフォークを合わせて多くの曲を作った。「ブラザー軒」という曲は、詩人菅原克己の同題詩を歌をつけたもの。七夕の夜に「僕」が亡くなった父と妹を幻視する話だ。

東一番

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小津安二郎メモ

小津安二郎メモ

4月から6月、よく小津映画を見ていた。Twitterで見た「Zoom東京物語(森翔太)」とインスタで見た「フランス版ポスター」(Tom Haugomat)をきっかけとして定番の「東京物語」からはじめ、色々見た。

小津については多くの論考があるが、昨今のデジタルリマスターと配信によって、それらを参照しつつ高画質で(スクショしながら)見ることが可能になっている。以下、そうして見た一連の小津作品の好き

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4.オノシュンスケ「ディスコって」/異形のクロスワードダンス

4.オノシュンスケ「ディスコって」/異形のクロスワードダンス

「ディスコって」はSynsuke Onoによる坂本慎太郎の同曲のカバーだが、「原曲と両A面扱い/坂本がMV制作」という破格の待遇でリリースされたもの。

オノの音楽についてはクエストラブ(Questlove/The Roots)が、オノによるスライ&ザ・ファミリーストーンのカバー集”Electro Voice Sings Sly Stone”を評した言葉として

「his “Crossword P

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3.Sweet Williamと青葉市子「あまねき」/オーディオ・アニミズム

3.Sweet Williamと青葉市子「あまねき」/オーディオ・アニミズム

このマガジン「音のかたちを見る」は、既存曲を視覚的に捉える試みの記録です。

オーディオ・アニミズム2018年の展覧会「音のアーキテクチャ:Audio Architecture」展の企画は、
コーネリアスの音楽をショーン・オノ・レノンが評した言葉 “He paints a kind of audio architecture”(彼は音楽の構造物を描いている)が契機になったとのこと。(展示ディレクタ

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Spotifyに変えた

Apple MusicからSpotifyに移った。Apple MusicでたまたまLikeした「フィッシュマンズ」に反応したアルゴリズムが、自分の苦手な洋楽もどきJ-Popばかり再生してきたのがきっかけだ。以前よりSpotifyのほうが、好みに合わせた選曲をしてくれるという噂を聞いていた。

変えた1日目まず好きな曲、オノシュンスケ/坂本慎太郎の「ディスコって」を聴き、そのまま「オノシュンスケRa

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2.クラフトワーク「アウトバーン」 /通過する音

2.クラフトワーク「アウトバーン」 /通過する音

このマガジン「音のかたちを見る」は、既存の曲を視覚的に捉えてみる試みの記録です。

フローリアン・シュナイダーの逝去の報をきいてクラフトワークを改めて聞く。Spotifyなどに1〜3枚目の初期作品はないので4thのAutobahnを。

フローリアンの演奏するフルートが沢山聴けるのは5曲目の「Morgenspaziergang(朝の散歩)」。

曲の冒頭から「小鳥のさえずり/羽音/水音」をシンセサ

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