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先生だって、あのね。

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碧魚の、小学校の先生としての日常をちらり。
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繋がれた小さな手。

繋がれた小さな手。

きゅ、と小さな温もりがわたしの手の平に触れる。

少し驚いて、そうっと手の持ち主を盗み見る。特段、照れ臭そうでもなくうれしそうでもなく、いつもと変わらぬ低学年のそうたくん(仮名)の横顔。

意外に思ったのは、彼は普段わたしの近くによってきたり、スキンシップを求めたりするようなタイプではないから。

…なんでこのタイミングで?

彼は、玄関で上靴から外靴に靴を履き替えるときに手を握ってきた。

あ、

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新1年生に、きゅん。

新1年生に、きゅん。

小学校に入学して、はや2週間が経った1年生たち。

廊下ですれ違っただけで、にこにこと楽しそうな笑みを乗っけて、手を振ってくれる子。
思わず、こちらも笑顔になっちゃう。

廊下で初めてわたしと会って、
「だあれ?」と目をぱちくりさせて聞いてくる子もいる。
「碧魚先生だよ〜。(名札ちらっ)よろしくね、○○さん。」
「わ〜ありがとうー!なんでわたしの名前、知ってるのー!」

か、可愛い。
まあ多分、次

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すずめと一緒に「戸締まり」できた話。

すずめと一緒に「戸締まり」できた話。

昨日の金曜日ロードショー、「すずめの戸締まり」でしたね…!
映画館で見て衝撃を受け、すごく印象に残った映画の1つです。

そういえば、前にその日のわたしの出来事と映画の内容を絡めてnoteを書いていたなあ、と思い出しました。
仕事に対してマイナスなことも書いてるし、
書いた当時は投稿を躊躇していましたが、折角書いたしこの機会に出しとこう…!笑

…*…*………*………*………*……*

「すずめの

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卒業式、斜め前の先生の涙が美しいと思った。

卒業式、斜め前の先生の涙が美しいと思った。

つい先日、わたしの勤める小学校で卒業式があった。
卒業生の新たな門出を祝うかのごとく、春の日差しが温かな日だった。

何度も練習したように、1人1人、ゆっくりと体育館の壇上にあがる卒業生たち。

担任により名前を呼ばれると返事をし、卒業証書を受け取って礼をし、またゆっくりと階段を降りてゆく。

卒業生である6年生へどんな思いを抱くかは、これまでの彼らとの関係性によると言える。

わたしはというと、

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先生短歌、詠んでみた。

先生短歌、詠んでみた。

わたしがエッセイを投稿しているからか、noteで親しくさせてもらってる方々は、圧倒的にエッセイを書かれる方が多い。

そしてその中には、俳句や短歌を嗜む方もちらほら。
文学フリマでも、素敵な俳句集があったので思わず手に取ってしまった。

そんな方々にちょっぴり感化され、わたしもノートのすみっこに半年くらい前から短歌を書き連ねている。

5.7.5.7.7と制限があるからこそ、広がる世界。そこに情景

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今度こそ、サンタに。

今度こそ、サンタに。

「サンタさん、うちの家には25日に来られへんねんて。」

クリスマス直前のある日、当時担任していたなほちゃん(仮名)は、教室でそう言った。
お家の人がなほちゃんにそう伝えたらしい。

なほちゃんの家庭は、教材費や給食費の滞納が目立っていた。いわゆる貧困家庭、と呼ばれるような家庭だったのだと思う。

月末にお金が振り込まれるので、それまでにクリスマスプレゼントを買う余裕がないのかもしれない。
クリス

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運動会、イチオシの曲。

運動会、イチオシの曲。

その曲を聞いた瞬間、びびっと稲妻が走った。

ー運動会のダンスに使える!!と。

夏が始まると同時に頭によぎる、小学校の先生あるある。
「運動会の団体演技、どうしようかな…。」

ちなみに1年前も運動会について書いている。良かったら…!

団体演技において何はともあれ、まず決めることは、使う曲である。

団体演技にも、組み立て体操、集団行動、フラッグと様々な種類があるが、ここではダンスと仮定する。

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子どもの悪口に勝った話。

子どもの悪口に勝った話。

いろんな子どもたちと多くの時間を過ごしていれば、ほっこりするような穏やかでなごやかな時間だけではない。

それは全学年合同の運動会練習のときだった。

校内のどの先生も名前を知っている、所謂有名人のりょうくん(仮名)が、並んでいる列から出ている。

普段なら、多少集団から離脱しているくらいなら、離れてちょっと様子を見守っておく。

しかし今、彼より下の学年の子どもたちもその場にいる中で、他の人の迷

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捨てる行き先へ、思いを馳せる。

捨てる行き先へ、思いを馳せる。

小学校では、社会科で水道やごみの処理など自分たちの暮らしについて、4年生で学ぶ。その学習の一環としてゴミ処理場へ見学に行く。

回収された大量のゴミはゴミピットと呼ばれる場所に集められ、30m弱もの長いクレーンでゴミを挟み、移動させる。それはさながら巨大UFOキャッチャーのようで、子どもたちを釘付けにした。

その後ゴミは破砕機と呼ばれる処理しやすくするための機械に通される。

その際、金属など固

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子どもと外で遊ぶのをやめたら。

子どもと外で遊ぶのをやめたら。

「若いうちは子どもと遊んで関係性を作った方がいいよ。」

大学を卒業しすぐに採用され小学校の先生になったわたし。そのとき、周りの先生方に何度もそう言われたか、分からない。

ちなみにこの場合、遊ぶ=校庭での外遊びを指す。

一緒に遊ぶことで、子どもたち同士の関係が見えてくる。
一緒に遊ぶことで、子どもたちに好かれ、信頼関係に繋がる。

子どもと外で一緒に遊ぶことのメリットは、理解してはいる。
現に

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甲子園優勝に導いた小学校教員監督と自主性とは。

甲子園優勝に導いた小学校教員監督と自主性とは。

毎年人々を熱狂させる熱い闘い、高校野球。

出場する様々な高校が注目されるが、プレーだけでなくいろんな意味で殊更注目を集める高校があった。

野球児の代名詞かのような坊主頭ではなく、髪型は自由。
スポーツだけでなく、学習も重要視する文武両道。
長時間練習はなく、生徒の自主性を尊重した練習メニュー。
合言葉は「Enjoy Baseball!」

ーそう、みなさんご存じ今回107年ぶりに見事甲子園で優

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先生の夏休み。

先生の夏休み。

夏が、来た!
待ちわびた、夏が来た。

わたしにとっての夏とは、梅雨が明けてからでもなく、日差しが凶暴になってからでもなく、アイスが身体に沁みるようになってからでもない。

学期末の成績処理、懇談、その他諸々の怒涛の仕事をやり遂げ、迎える1学期が終わりの日、終業式。
その日を無事迎えてから、わたしの夏は始まる。

「子どもたちが夏休み入ったら、先生たちはは暇なの?」

先生をしていると、こんなこと

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参観で爆睡する我が子を讃えたお母さん。

参観で爆睡する我が子を讃えたお母さん。

いつからか、常識を超えた言動する保護者のことは「モンスターペアレント」なんて呼ば
れるようになった。
ネットやら身近な先生やらから、そんな「モンスターペアレント」は、話題に上ることが増えた。

一括りに「モンスター」なんて枕詞を乗っけるのもどうかと思う。が、実際に客観的に話を聞いていても、対峙する先生に同情してしまうような言動をされる保護者もいる。

しかし、この仕事をしているとその真逆のとっても

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文学フリマ出店について

文学フリマ出店について

9月の文学フリマ大阪に出店すること。

2023年、わたしがやり遂げたいことのトップであり、ここ最近の大きなチャレンジの一つ。

一応立場上、文学フリマに出店可能かどうかを管理職に確認すること、またどういった理由で参加を伝えるか、ということについて前に書きました。

結果からお伝えすると、残念ながら文学フリマ出店は叶わなくなりました。

公立の小学校の先生、という立場で利益が出る出ないに関わらず、

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