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福田村事件 森達也:監督
https://www.fukudamura1923.jp/ この映画は物語はフィクションである。ただ、100年前に日本人9名が集団リンチを受けて死亡したという事は確かである。本作ではなぜ集団リ…
悪は存在しない 濱口竜介:監督
連休中とはいえ、昼の回が満席だった。濱口監督にファンがしっかりついている事が見てとれた。
コロナ後の世界を描いているが、率直に現代人は猫も杓子もここまで心が病んでいるんだということを思い知らされる。これは自分の体感ともズレていない。と同時に、その病みに同居する現代人の思考の浅さ、軽薄さというものも炙り出している。派手ではないが人間存在に向き合った丁寧な物語の運びが感じられる。だからこそ、見た人全
ドライブ・マイ・カー 濱口竜介:監督
展開自体は結構ベタで、不倫してるんだろうな、死ぬんだろうな、最後は自分が演じるんだろうなという展開はことごとく予想通りだった。
ただ劇中劇の『ワーニャ伯父さん』のセリフと登場人物の心情をリンクさせる部分は非常に巧みだった。
演出家である家福は、役者が辟易するほど本読みをさせ、彼の表現によるとテキストが語りかけてくる状況にまで芝居を昇華させる事を求める。しかし、彼自身が真実を見ようとしていなかった
私にとって神とは 遠藤周作:著
遠藤周作さんにとって神とは何なのか、その答えは神とは働きである。こんなにも神を分かりやすく表現した例はないのではないか。とても腑に落ちた。人間誰しも神の導きによりとしか表現できない状況に遭遇したことがあるだろう。その瞬間、確かに神は存在したと言えるのかもしれない。
映画 ゴールデンカムイ 久保茂昭:監督
何の予備知識もなく見に行って、物語の中盤あたりで気がついた。あ、これ絶対シリーズものだと。後から知ったが、コミック3巻分の内容だったらしい。シーズン5くらい軽く行きそうなイメージだった。エンタメとして十分面白かった。
ただ、2月3連休明けにふらっと映画を観に行こうとして、シネコンくらいしかない地方都市では他に観たいと思う映画がないというのは何とも物足りない。あるのはアニメかマンガ原作か、アイドル
福田村事件 森達也:監督
https://www.fukudamura1923.jp/
この映画は物語はフィクションである。ただ、100年前に日本人9名が集団リンチを受けて死亡したという事は確かである。本作ではなぜ集団リンチが起こったのかをかなり丁寧に描いている。もちろんこれは一つの仮説にすぎない訳だが、作品に登場する福田村が100年後の今の日本と大差ない事に驚愕する。もちろんこれは、製作陣の目を通した日本の姿だが、笑い
君たちはどう生きるか 宮崎駿:監督
あの内容で物語を途中で破綻させず、最後までもっていったというのは流石の一言。アニメーションも素晴らしい。ただ、殆どの人物の心情がよく分からなかった。もう少し踏み込んで言うと描かれていなかったように思う。監督の中にはあったのかもしれないが、それを感じ取るのは不可能だった。近年の宮崎作品全般に言えるが、登場人物に魅力が感じられない。世界観を表現する為のコマに成り下がっているような気がする。
ハンチバック 市川沙央:著
上手いなと思う。ただ、好きか嫌いかと言えばあまり好きではない。作者のインタビューでこの作品は最初から芥川賞を想定していたという話があったが、選考委員のコメントを読むとまんまんとその術中に嵌ったなという感じがした。かなり強かな印象を受けた。ただ、誰にでも取り上げられるテーマ・題材ではないだけに、そのインパクトを超えて物語へと昇華出来ていたのか?選者は、本来その視点から評価すべきではなかったのか。こん
もっとみる何が記者を殺すのか 斉加尚代:著
本書はリベラルの為の闘いの教科書のような本である。実際に彼女の作ったドキュメンタリーは見た事がないので、映像作品への評価はできないが、書籍の方が過激な事を言っているのではと推察される箇所が複数あった。ほとんどの人が見ていないであろうテレビ放送は問題視され、書籍はほとんどスルーされてしまうというのは、活字派としては少し寂しいものがある。一例を紹介したい。
余談だが、田崎氏は目立つテレビだけでなく、
入り江の幻影 辺見庸:著
今もこうして、辺見庸氏がことばを紡ぎ公表し続けていることは、考えて見たら私たちにとって幸運な事かもしれない。
先日亡くなった、大江健三郎氏は、最後の作品となった『晩年様式集』(2013年)以後のは公式には何も発表しなかったという、それと比べると、発言し続ける辺見庸氏のことばの貴重さがわかる。本作は鋭い同時代性はもちろん、老いへの言及が興味深い。老いる事は避けて通る事はできない。そこにどう抗うか?そ