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戦前は本当に右だったか-茂木誠他「「リベラル」の正体」

戦前は本当に右だったか-茂木誠他「「リベラル」の正体」

戦前は、右が支配して、全体主義になったって、ボクら信じてない?

だってさ、治安維持法のもと、特高が共産党を弾圧したりしたじゃん。やっぱり右が支配してたんじゃないの?

でもさ、弾圧されたのは、共産党員や無政府主義者だけで、マルクス主義者自体は弾圧されてなかったでしょ。

それはそうだけど・・・。

むしろ、当時の文系は真っ赤っかだったって、見方もあるんだ。

そうなの?

歴史は、一つではない。ボクらは、学校では、「戦前は軍部が暴走して、国民や諸外国に迷惑をかけた。しかし、終戦後、その反省の上に、平和憲法ができて、平和になりました!ちゃんちゃん!」みたいな、通説しか教えられないじゃん。

そうだね。そう習ったおぼえがあるよ。

それは、歴史の一つの見方でしかない。なんか、絶対視してなかった?

そうだね。

歴史学の面白いところは、多様な解釈がなされうる点にあるんだ。

一つの歴史観だけが正しいというわけではないということだね。

次の引用を読んでほしい。この本の、茂木誠(駿台予備校の世界史講師)と、経済評論家の朝香豊の対談なんだけどさ。

茂木 (中略)治安維持法やら特高警察やらが社会主義運動を弾圧した暗黒時代(ボクの注:戦前は)、というイメージは間違いです。弾圧されたのは日本共産党や無政府主義者だけで、むしろマルクス主義者は国家権力の中枢にまで入り込んでいた。(中略)
茂木 社会主義に傾倒した近衛文麿は河上肇(ボクの注:当時を代表するマルクス経済学者)にあこがれて、東大を中退して京大に入学し直しましたね。戦後もですが、戦前の学術界もまた、文系は赤い勢力が席巻していた。
朝香 そして大学で赤く染まった学生が、卒業してマスコミや官庁にどんどん就職していった。だから当時のマスコミも真っ赤っかですよ。「戦前は軍部に協力して右寄りだったが、戦後はその反省から左になった」というのは、実に表面的な解釈です。

本書Kindle版59、60頁

つまり、戦前の文系は真っ赤っかだったってこと?

まあ、それは極論だとしても、そういう面があったということを言っている箇所だ。戦前は、右というよりも、左だったという、ボクらの信じている教科書とは、全然違う歴史の見方だよね?

でもさ、一つ疑問なんだけどいい?

うん。

戦前は、マスコミは赤だと言ってたけど、じゃあなんで、戦前のマスコミは、軍部の提灯記事しか書かなかったの?

いい質問だ。実は、戦争がどんどん進んで、レーニンのいう「敗戦革命」が起こるように仕向けたんじゃないか、みたいに、本書では書いている。

敗戦革命?

つまり、戦争が深刻化すると、国が疲弊する。

反戦気分が高まるかもしれないよね?

そこで、内乱にもっていく。

ふむー、そこで、敗戦したら、社会主義革命をおこせば、見事レーニンの思惑通りというわけだね?

実際、たとえば、中国も赤化したし、ベトナムも赤化した。その他にも、社会主義革命をおこした国は多かったんだ。

まさに、レーニンの思った通りになったわけだね。

だから、戦前のマスコミを席巻した赤い人たちは、この「敗戦革命」を目指すために、提灯記事を書いたという見方だ。

ふーん、ボクらの習った歴史とはまるで違うね。

とにかく、「歴史はひとつ」と見るのは誤りで、色んな歴史観がありうるんだ。その中で争われて、淘汰されていくと。

たとえば、小林よしのりの「戦争論」もだいぶ叩かれたよね。

まあ、小林よしのりの歴史観はまた、以上とはまた異なる歴史観だ。

でも、2019年のゴーマニズム宣言で、未だに「戦争論」は増刷されている、と書いていたね。

20年以上も経っているのにね。実際、ボクの良く行く本屋にも「戦争論」の新品が置いてあるんだ。

あんだけ叩かれたのに、淘汰されず生き残ったんだね。

そうだね。だから、批判する側も賛同する側も、きちっと読まなきゃならない本だね。

まあ、淘汰されなかったわけだしね。

まあ、少し脱線したけれど、戦前は文系は真っ赤っかだったって話だったわけ。たしかに極論だけどさ。

なんか、歴史の見方が変わったよ。歴史本もっと読んでみたい!

そうアナタに思ってもらえたなら、ボクは嬉しい!(笑)

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