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この頃エッセイ集(思春期晩期編)

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「今」を生きる、いとぞ「ナウしき」エッセイ集。
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オープンザウィンドウ

オープンザウィンドウ

窓を開けられた。まだまだ肌寒い春頃だ。開ける必要なんてない。それでも、開ける必要があると判断された。もっと正確に言うなら、誤解された。



お昼過ぎだったと思う。携帯の機種変で少し遠くのソフトバンクショップに用があった。よく知らないが、携帯の契約期間が云々らしい。携帯は家族と祖父母が一緒に契約しているから、少し遠くに住んでいる祖父母は町を跨いで車でこちらへやってきた。

午前中は家で祖父母と共

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集団尿検査

集団尿検査

健康診断というのはぶっちゃけだるいものである。学校の宿題と違ってやらなければ怒られるものはないのだけれど、やらなければ見つけられるはずだった病気があるかもしれないと考えるとやるしかない。

ていうか、大学生における健康診断というのはやらなければ怒られるものである。もう身長も伸びない年齢だというのに、健やかな身体だと自負する自分の身体を調査する必要がどこにあるのか。内心ではそう思うのだが、健康診断を

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ボクの「ヒゲ脱毛攻略法」

ボクの「ヒゲ脱毛攻略法」

「ヒゲ脱毛は痛いのですか?」と聞かれることが多い。が、よく考えてほしい。痛くない訳がなかろう。「新幹線ってやっぱ速いの?」と聞いているようなものである。愚問であるように感じてならない。

ではどのような痛みなのかといえば、僕がはじめて脱毛(医療脱毛)をするときにクリニックの若い女医からの説明をまるパクリで答えると、「輪ゴムではじいたような痛み」である。脱毛を経験したことのない君たち諸君からすれば、

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殺気立ったクレーマー処理

殺気立ったクレーマー処理

「おい、お前何か俺に用あんの?」
男性客が僕に近づいてくる。その距離は10m、7m、3mと、どんどん縮まる。そして彼は完全に僕のパーソナルスペースへ土足で乗り込んできた。

大学1年生から、修士課程に進学した現在までの5年間、僕はスポーツ屋でアルバイトをしてきたが、こんなこと、はじめてだ。

この時点から20分くらい前に遡ろう。僕は店長に話しかけられた。

「あのお客さん、ちょっとやばいかも」

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お前を殺すまでは眠れない

お前を殺すまでは眠れない

扉を開くと奴がいた。僕の部屋で、悠々自適にくつろぐ奴は珍しく赤茶色の衣を羽織っている。

大概、奴を見たときはゾッとするものだが、寝る直前ということもあって今から「駆除」しなくてはならないというダルさが勝る。

ここまで読んでもうお気づきかもしれないが、奴とは某Gのことである。人間から最も嫌われている虫といっても過言ではないゴキブリのことだ。

そんなに高頻度で出没するわけではないから、奴と出会し

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俺のワックスを勝手に使うな

俺のワックスを勝手に使うな

いつもより減りが早いような気がした。気のせいだろうか、僕が毎朝髪に塗布しているヘアワックスの重量が日に日に軽くなっているのだ。もちろん僕自身が使っているのだから必ず減るのだが、減り過ぎである。

「気のせい」が「確信」に変わったのはそのワックスが突如として姿をくらましたときのことだ。

僕自身何故かは分からないが、最近モノをよく失くす。だからこそモノには住所を定めて注意を払うようにしている。それな

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失われたモノを求めて

失われたモノを求めて

最近、物をなくすことが多い。
よく、「夏輝くんはしっかりしてそうだね」と言われるが、しっかり者であればスマホを旅先の広島で落とさないし(今度書く)、ワイヤレスイヤホンを1か月に2度もなくさない(今回のテーマ)。

1度目は、ワイヤレスイヤホンでタイに住んでいる祖母と電話をしたときだった。僕はタイ好き・祖母好きの人間なので、日が沈み、ナンプラーを使って本場のガパオライスを真似て作り、その後片付けをし

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真夏のハッピーバースデー

真夏のハッピーバースデー

あと数日で23歳になる。
もうこの歳にもなってしまえば、誕生日というのはめでたいこととは感じなくなる。

しかし、若かりし頃——というのは小中学生の頃は誕生日が来るのを楽しみにしていた。家族や親戚、祖父母から貰える誕生日プレゼントに心弾ませる、何とも幸せ者であったと思う。

無論、今年も家族、祖父母からは貰えるのだろうが、増えていく年齢に若干の恐怖を感じ始める時期である。

体毛は年々濃くなってき

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ヤジらず、ヤジりて、ヤジる、ヤジるとき

ヤジらず、ヤジりて、ヤジる、ヤジるとき

むかしむかし、僕が小学生くらいのときのことである。父に連れられて東京ドームへ行ったとき、ここは日本ではない、無法地帯ではないかと強烈な印象を覚えたことがある。

オッサンたちが飲む、八百円ばかしの黄金の水が彼らの体内へ入り込むと、その数分後彼らは狂ったかのようにグラウンドへ叫ぶのである。

「アホー!」
「馬鹿野郎ー!」
「何してんねん!ボケぇ!」

こんなこと、小学生が友達へ教室で言ってみようも

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この坂を登れば

この坂を登れば

横山展望台という所に行ったことがある。三重県は志摩にあるそこからの眺めは誰がどう見ても絶景で、英虞湾を一望できる景勝地である。

空は広くずっと先に水平線が長く続く。手前にある英虞湾の入り組んだ江の形がその絶景をより絶景にしていた。

「英虞湾」といえば中学校の社会の授業で習ったことがある。地理的分野で「リアス(式)海岸」について学習する際、その例として出てくる。

当時の僕からすれば「アゴワン」

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果たしてパーマはモテるのか

果たしてパーマはモテるのか

あのですね、別にモテたくてパーマをかけた訳ではないのです。ただ、こうも最初に弁解をしておかなければモテたくてパーマをかけた奴というレッテルを貼られ、今後僕が投稿するエッセイが読まれなくなってしまう可能性がある。

タイトルだけ見れば、煩悩の数が108個以上あるのではないかと思わんばかりの下心溢れる人間に映っているだろうが、僕は決してそんな人間ではない。

「夏輝さんは下心しかない」と揶揄されること

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LINEを絶対に返さない君 vs LINEを絶対に返させる僕

LINEを絶対に返さない君 vs LINEを絶対に返させる僕

このエッセイは僕が「上手く」やればお蔵入りになるだろう。しかし、僕が「上手く」やらず失敗に終わってしまったと判断したとき、これを世に公開する。一種の遺書のようなものだ。もしあなたがこれを読んで(しまって)いるのなら、心して目を通してほしい。

某日 8:00PM

人生初の合コンだった。今まで合コンというものに興味を持ったことはなかったし、なんなら別に今回も好んで合コンに参加した訳ではない。とはい

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マイ・ラスト入学式

マイ・ラスト入学式

これまでの人生において、何度か入学式を経験してきた。父・母と手を繋いで登校した小学校。両親、別に来なくていいよと思った中学校。入学式の存在意義を疑った高校。入れて嬉しかった大学。

大学へ入学したのは今から四年前。
18歳の未熟者がネクタイを結ぶのに苦戦して慣れないスーツに袖を通した。

思えばとても不安だった。学業についていけるのか、友人ができるのか、希望を胸に入学したけれど不安が常に付きまとう

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元カノとの遭遇

元カノとの遭遇

このバイトをはじめてかれこれもう5年目になる。文化系の僕がスポーツ店で5年も働いているとは、入社当初は思いもしなかっただろう。

僕がこのバイトをはじめたのは、とても未熟且つ青い大学1年生の春。今も青くて未熟者なのは重々承知だが、さらに淡いブルーな時期があった。

大学1年生になったばかりの5月か6月くらいだっただろうか。僕は高校2年生から交際していた一個下のカノジョに突然振られたのである。付き合

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