榎木英介

一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事。病理専門医、細胞診専門医。科学技術政策、医…

榎木英介

一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事。病理専門医、細胞診専門医。科学技術政策、医療政策ウォッチャーです。

マガジン

  • インディ病理医・科学ジャーナリスト榎木英介の”機微”だんご

    フリーランスの病理医兼科学ジャーナリストである榎木英介が、病理、医療業界や博士号取得者のキャリアパス、科学技術と社会に関する「機微」な話題を語ります。組織に属しない「インディペンデント(インディ)」ならではの忖度ない意見や他では公開できない情報を惜しみなくつづっていきます。 榎木の作った“機微だんご“、うまいかまずいか。まずは試しておくんなさい。うまかったらお仲間になっとくれ。 マガジン購読すると単品購入よりお安く記事を読むことができます。

記事一覧

固定された記事

死にたい人へ

 ある文章が私の心に突き刺さった。  この文章だ。  ああ、似てる、と思った。私自身、死のうと思ったことがあるからだ。  この件は、何度か書いているし、ツイート…

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榎木英介
8か月前
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新型iPadどうする?デジタルガジェット放浪記6

 デジタルデバイスはながらく試行錯誤の日々だった。  ようやくここ数ヶ月は構成が定まり、なんとかやっている。  しかし、ちょっと悩むことがあった。視力の衰えで、…

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榎木英介
7時間前

病理医と訴訟

 病理医は医療の世界では若干異端というか、医師っぽくない職業だ。  患者さんに日々接するわけではない。その代わり顕微鏡を日々使う。  そんな「一般の」医師とは違…

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榎木英介
1日前

医師の関門

 回り道して医学部に入り医師になって20年。先日その総括を書いた。  色々あったけど、少なくともドロップアウトせずなんとかやっている。  最近X上で自分よりキャリ…

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榎木英介
2日前
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氷河期世代対策の「終戦」?

 日経新聞が就職氷河期世代に関する論考を経済教室に掲載している。  非正規雇用の割合が多いことによる健康不安、低賃金など、課題は多々ある。  そんななか、近藤教…

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榎木英介
3日前

氏か育ちか再論

 最近あるnoteが大きな話題となった。  最初の記事だけを紹介するが、連続ものの記事には、生活保護家庭から東大に進学し研究者になるまでの凄まじいまでの苦闘が描かれ…

榎木英介
4日前
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謙虚になるべき理由

 遠回りして医師になって20年。52歳になった。  遠回りした理由については、もう何度も書いているので、ここでは触れない。  なんとか医学部に入ってからも、いろいろ…

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榎木英介
5日前

偏差値で決めない医学部選び

 医学部医学科が入試においてはなかなか難関なのは周知の事実だ。  偏差値表などをみると、旧帝国大学や旧制六医専など歴史と伝統のある大学や、都市部にある大学が人気…

榎木英介
6日前
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医師20年の総決算

 この記事が出る5月6日で、医籍登録20年になる。  医師はこの医籍に登録されてはじめて医師と名乗れる。だから、医師国家試験合格発表直後に医師になった、とSNSに投稿…

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榎木英介
7日前
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ともに濡れること

 人を助けることは難しい。  人に助けを求めている人は、藁を持つかもうとするから、下手に手助けすると引き摺り込まれ、一緒に沈んでしまう。

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榎木英介
8日前

知の"民主化"に備えよ

 AIが仕事を奪う…。  そんな言説が広がり始めて10年ほど。その間生成AIの登場などいろいろなことが起こり、この2年ほどは未来予想にリアル差が増してきた。  次第に…

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榎木英介
9日前
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出典にあたろう

 SNS、とくにXを見ていて思うことがある。  メディアの記事を見てあれこれ言う人が多いのだが、政府の資料、大学のプレスリリースなど、出典が明らかにも拘らず、記事だ…

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榎木英介
10日前

KとAの12年戦争

 円安が進んでいる。  一時1ドル160円台になったが、その後150円台なかば前後となった。政府・日銀による市場介入が疑われている。  現在注目の的は神田眞人財…

榎木英介
11日前
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サブカルチャーと東大

 私は昔からいわゆるテレビっ子だった。  アニメは見まくっていたし、8時だョ!全員集合やオレたちひょうきん族も当然ファンだった。  トップテンやらベストテンやら、…

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榎木英介
12日前
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忙しいから忙しい

 フリーランス病理医になって結構忙しい日々が続いている。  少なくとも、丸一日休みという日は、正月以来一日もない。土日祝を含め日々働き続けている。  ただ、これ…

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榎木英介
13日前

ストックとフローと働き方改革

 病理医は比較的働きやすい仕事だと思っている。  その真髄は、「ストック型」の仕事が多いことだと思っている。  ストック型とはなんぞや、ということだが、締め切り…

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榎木英介
2週間前
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死にたい人へ

死にたい人へ

 ある文章が私の心に突き刺さった。

 この文章だ。

 ああ、似てる、と思った。私自身、死のうと思ったことがあるからだ。

 この件は、何度か書いているし、ツイートもしている。

 他にも何個かあるが、とりあえずこくらいにしておこう。

 記事はぜひ読んでほしいなと思うが、重要なことを述べている。

 本当にその通りなのだ。何も見えなくなっている状態。これで全てが終わっているという絶望的な気持ち

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新型iPadどうする?デジタルガジェット放浪記6

新型iPadどうする?デジタルガジェット放浪記6

 デジタルデバイスはながらく試行錯誤の日々だった。

 ようやくここ数ヶ月は構成が定まり、なんとかやっている。

 しかし、ちょっと悩むことがあった。視力の衰えで、医学書をスマホで読むのが辛く、かつ面倒くさくなってきたのだ。

 ここで説明しておくと、フリーランス病理医は各地で仕事をするので、医学書は持ち運びできないとお話しにならない。常勤医だったら、職場に紙の本を置いておけばよいのだが。

 や

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病理医と訴訟

病理医と訴訟

 病理医は医療の世界では若干異端というか、医師っぽくない職業だ。

 患者さんに日々接するわけではない。その代わり顕微鏡を日々使う。

 そんな「一般の」医師とは違う感じがするからなのか、ときに「仲間外れ」にされているような感覚もある。

 ただ、そんな病理医にもいいところはある。

 時間の使い方に融通が利くのが大きい。患者さんに日々接しないことで、いわゆる「モンスターペイシェント」と接し、精神

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医師の関門

医師の関門

 回り道して医学部に入り医師になって20年。先日その総括を書いた。

 色々あったけど、少なくともドロップアウトせずなんとかやっている。

 最近X上で自分よりキャリアが短い医師や医学生の投稿をみるようにしているが、あらためて医師になってやっていくことが、決して簡単なことではないことを感じる。

 かなり難しい医学部の入試に合格したとしても、医師になることも簡単ではないし、医師になったあとのキャリ

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氷河期世代対策の「終戦」?

氷河期世代対策の「終戦」?

 日経新聞が就職氷河期世代に関する論考を経済教室に掲載している。

 非正規雇用の割合が多いことによる健康不安、低賃金など、課題は多々ある。

 そんななか、近藤教授の論考は、氷河期世代にとって非常に厳しい現実を突きつけている。

 以下は絶望的な気持ちにさせられる。

 「終戦」の時が来つつあることを感じさせる。

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氏か育ちか再論

氏か育ちか再論

 最近あるnoteが大きな話題となった。

 最初の記事だけを紹介するが、連続ものの記事には、生活保護家庭から東大に進学し研究者になるまでの凄まじいまでの苦闘が描かれている。

謙虚になるべき理由

謙虚になるべき理由

 遠回りして医師になって20年。52歳になった。

 遠回りした理由については、もう何度も書いているので、ここでは触れない。

 なんとか医学部に入ってからも、いろいろあった。

 そんな経験から、遠回りして医師になった人たちにむけてメッセージ的な記事を書いた。

 以下の記事だ。

 この記事で書いたが、過去の華々しいキャリアは捨ててしまい、分からないことは頭を下げてでも謙虚な気持ちで教わること

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偏差値で決めない医学部選び

偏差値で決めない医学部選び

 医学部医学科が入試においてはなかなか難関なのは周知の事実だ。

 偏差値表などをみると、旧帝国大学や旧制六医専など歴史と伝統のある大学や、都市部にある大学が人気だ。

https://www.keinet.ne.jp/university/ranking/2024/kk10.pdf

 概ね歴史や立地と難易度に関係がみられる。ただ、受験生の人気が、必ずしも医学部の影響力と合っていない、若干ずれて

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医師20年の総決算

医師20年の総決算

 この記事が出る5月6日で、医籍登録20年になる。

 医師はこの医籍に登録されてはじめて医師と名乗れる。だから、医師国家試験合格発表直後に医師になった、とSNSに投稿するのは本当は間違っている。厚生労働省が申請してきた国家試験合格者を医籍に登録してはじめて医師を名乗れるわけだ。

 というわけで、ここで医師になってからの20年をざっくり振り返りたい。

 再受験や学士編入は医学部に入るまでか、あ

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ともに濡れること

ともに濡れること

 人を助けることは難しい。

 人に助けを求めている人は、藁を持つかもうとするから、下手に手助けすると引き摺り込まれ、一緒に沈んでしまう。

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知の"民主化"に備えよ

知の"民主化"に備えよ

 AIが仕事を奪う…。

 そんな言説が広がり始めて10年ほど。その間生成AIの登場などいろいろなことが起こり、この2年ほどは未来予想にリアル差が増してきた。

 次第に見えてきたことがある。

 当初のあらゆる仕事がAIに駆逐されるという話はどうやら間違いだと言われるようになってきたが、明らかに仕事が減るだろう仕事がある。

 それは…。

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出典にあたろう

出典にあたろう

 SNS、とくにXを見ていて思うことがある。

 メディアの記事を見てあれこれ言う人が多いのだが、政府の資料、大学のプレスリリースなど、出典が明らかにも拘らず、記事だけからあれこれ言う人が多いことだ。

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KとAの12年戦争

KとAの12年戦争

 円安が進んでいる。

 一時1ドル160円台になったが、その後150円台なかば前後となった。政府・日銀による市場介入が疑われている。

 現在注目の的は神田眞人財務官だ。

 灘中高→東大法学部のエリート街道を歩み、博覧強記のまごうことなき天才。

 どうやら次官にはなれず、財務官で終わるようだが、それでも財務省の主流を歩み続けた人。

 宇宙人とも称される言動はかねてより衆目を集めていた。

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サブカルチャーと東大

サブカルチャーと東大

 私は昔からいわゆるテレビっ子だった。

 アニメは見まくっていたし、8時だョ!全員集合やオレたちひょうきん族も当然ファンだった。

 トップテンやらベストテンやら、欽ドン!、欽ドコなど、流行りのテレビ番組は大抵見ている。

 80年代の歌謡曲はそこそこ知っていたりする。

 ファミコンは小学6年生、つまり発売の年1983年に我が家にやってきた。

 当時小学3年生だった弟は直撃を受け、確かロード

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忙しいから忙しい

忙しいから忙しい

 フリーランス病理医になって結構忙しい日々が続いている。

 少なくとも、丸一日休みという日は、正月以来一日もない。土日祝を含め日々働き続けている。

 ただ、これは自分が選んだ道なので、少なくともやらされている感はない。裁量権を行使しているので、基本嫌な仕事はやっていない。だからそこまで苦ではない。

 とはいえ、多少は義理人情の仕事があるし、仕事自体は好きでも、長い移動時間にながらスマホの人や

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ストックとフローと働き方改革

ストックとフローと働き方改革

 病理医は比較的働きやすい仕事だと思っている。

 その真髄は、「ストック型」の仕事が多いことだと思っている。

 ストック型とはなんぞや、ということだが、締め切りは決まっているものの、今すぐやらなくても良い、時間に縛られない仕事だと。

 今日中に、明日朝までに仕事を仕上げれば良い。それはそれで量が多い時など辛いこともあるのだが、今この時間にこれをやれということはない。

 一方、多くの医療職は

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