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何度も読み返したい素敵な文章の数々vol.10

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2017年8月の記事一覧

承認欲求のための結婚ってはなし

承認欲求のための結婚ってはなし

たまたま、他人の結婚観に触れる話を聞いた。

結婚自体、年若い人と、ある程度の年齢とではそもそも向かい合い方が違っている。
今回聞いたのは、ある程度の年齢の話のほう。

「結局、今回のお話はナシって事になったんですけどね」
第三者的な立場でそれを見ていた人が言うには、結果はそうだったんだけれど、そのお断りに至るまでの短い時間の事を見聞きしただけで、いろんなことを考えたそうな。
私もその話を聞いて、

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本屋が潰れるのは結局本屋のせいだ

本屋が潰れるのは結局本屋のせいだ

本屋が町からなくなることに対する危惧については常に叫ばれているのだが、大手書店系列の仕事をしてわかったのは残念だけど本屋が潰れるのは本屋に60%責任があるのは避けられないという事だった。

Amazonのせいでもある、それは大きな事実だ。
でも30%くらいだ。

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鶏とお米のバリエーション

わたし、鶏とごはんのコラボレーションがとてもスキ。

海南鶏飯のような、あまり味のついていない鶏の炊き込みご飯から、鶏レバー、親子丼、鶏粥、どれも鶏の出汁とお米のコラボレーションが、とても好きなのです。

その好きな気持ちをただただ羅列したいと思います。

①海南鶏飯
はいなんぢーふぁんとか、カオマンガイとか、いろんな呼び名がありますが、シンガポールチキンライス。
本当は鶏肉を茹でた茹で汁でご飯を

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【号外日記】自分が文章を書くときになって初めて自分が何も知らないということに気づくのです。勉強はそこから始まります。

【号外日記】自分が文章を書くときになって初めて自分が何も知らないということに気づくのです。勉強はそこから始まります。

「ちはるのファーストコンタクト」をご愛読いただきまして、ありがとうございます。その感謝の気持ちを込めて定期購読者が増えるたびに「号外日記」を書いています。では、どうぞ。

noteの記事は、出張中と午前中からの仕事が入っているときを除いて毎日書くようにしています。書きだめをしていないので、午前中の時間が取れないときはきっぱりと書かないようにしています。

「それにしても毎日書くのは大変じゃないです

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夏の終わりと甲子園

夏の終わりと甲子園

二死一塁、三塁。カウントツーボール。得点は3-4。シングルヒットで追いつく正念場。ピッチャーが投げた第三球は真ん中低め、キャッチャーのミットに収まることなく放物線を描いた。逆転の3ランホームラン。

甲子園第一回戦、済美(愛媛)- 東筑(福岡)。職場の休憩室にあるテレビで、観客席が湧く様を眺める。5分だけのつもりが、気づけば30分も釘付けになっていた。

夏。野球。甲子園。
野球の思い出といえばパ

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知識と教養とセンスについて。

知識と教養とセンスについて。

「そこはやっぱり教養になっちゃうんだよなあ」

いけ好かない人間どもの会話と思われるだろうが、その結論に落ち着くことは多い。「あの人は、頭はいいんだろうけどねえ」みたいな会話の流れから。あるいは「彼もがんばってはいるんだけどねえ」みたいな会話のおわりとして。「なーにが足りないんだろね?」を考え、最終的に出てくることばは「教養」だったりする。なんとなくずるくてこわい結論だなあ、と思いつつも、ほかに言

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虹と、やさしさと

虹と、やさしさと

「見て、あっち、すごい空。」

母が指さす方を見ると、ただならぬ雰囲気の黒い雲が遠くの空を覆っている。

「怖い、怖い。降ってくるかな。」

最寄り駅まで、車で10分もかからない。しばらく走ると、また母が言う。

「あ、虹。」

運転席の母の向こうを見ると、青い空と白い雲を背景に、虹の足の部分だけがすっと空から地上へ降りてきていた。いや、地上から空へ伸びているのだろうか。その先は雲の中へと続いてい

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泣き叫ぶ。

泣き叫ぶ。

ア"ーーーァ"ーーッーーーア"ーーー!!

ヴァ"ーーーー、ゲホッ、ゴボッ、イィヤァ"ーーーー、ウィッ!!

ナ"ァ"ーーーーッ、ア"ァ"ーーーヴゥワァ"ーーーーオェッ!!

高田馬場での仕事を終えて、新宿渋谷方面の山手線へと乗り込んだ。先ほどの仕事のフォローメッセージをスマホで打ち終わるころ、ぼくら乗客を乗せた電車は「新大久保〜、新大久保ぉ〜」というコールとともに、次の駅に到着した。事件は起こっ

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図書館とデパ地下は似ている。

7月末まで下北沢で一人暮らしをしていたので、久しぶりに所沢の実家に帰りました。
感想としては「人が家にいると疲れるなあ」と。うーん、ひとりの方が絶対に楽です。

ただ、実家にいるメリットも感じました。一番大きいのは、本が置いてあることです。

実家のリビングには、家族各々が図書館で借りてきた読みかけの本が放っぽり出してあります。(みんな管理が悪い。)それが好きです。

置いてある本を読む訳ではあり

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「行けたら行く」を誠実に伝えたい!

「行けたら行く」を誠実に伝えたい!

日本人が思う信頼できない言葉ランキング――いったいどこの暇人がそんなバカなことを調べたんだ?――というのがあって、それによると「行けたら行く」というのはもっとも信頼できない言葉なのだという。

つまり「ほとんど行く気はない」と同義だというのだ。

それなら最初から「行かない」とか「いきたいけど難しい」とか言えばよいのに、いつのまにか「行けたら行く」が定着してしまった。でもこれは「おはよう」とか「こ

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なくした日傘

東京メトロで、手すりのところに日傘をひっかけておいたら、忘れてそのまま電車を降りてしまった。

落し物センターに電話をすると、預り所ははしっこの駅だという。そのとき、3日間しか東京にいない旅行者だった私は、取りに行くのを諦めた。

なくしたのは、買ったばかりの、真っ白な傘。縁のところに、赤や茶、青の糸で中欧らしい模様が刺繍されているのが気に入っていた。持ち手は藤を編んだみたいに作られている。
少し

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わたしがエッセイを書く理由

わたしがエッセイを書く理由

「なんでエッセイなの?」
「そもそも、エッセイってなに?」

エッセイを書いていることを話すと、このような反応をされることが非常に多い。

「エッセイスト」ってそれ単体で成り立つ職業ではまずあり得ないと、わたしは思っている。

俳優や歌手などの有名人や文筆家、起業や闘病などインパクトのある経験をした人、はたまたぶっ飛んだ私生活を送っている、あるいは並外れた文才を持ち合わせた人。エッセイストとして名

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奇麗な箱

奇麗な箱

「私はそれはもう、めちゃめちゃ奇麗な箱を持っているのですよ。ただの箱ではないです。まあ、あなたはご興味あるでしょう。なんせ、あなたのご趣味に関わることですから」
 50代後半に見える男は言った。
 この店長とは初対面だ。赤の他人である。
「僕の趣味はクラシックを聴くことです」僕は言った。でないとこの店に来ないだろう。
「それだけじゃないでしょう」その店長は言った。

 確かに、僕にはもうひとつの趣

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