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図書館

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図書館全般についての記事をまとめています。
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記事一覧

アイデンティティ崩壊した図書館の末路

アイデンティティ崩壊した図書館の末路

よくビールの新商品PRで「ふだんビールを飲まない方や、苦手な方にも楽しんでいただけるよう、ビール独特の香りや苦みを抑え、すっきりと飲みやすく仕上げました!」と謳っていることがあります。

私などはビール好きで、それもベルギービールのような個性的で味の濃いビールが大好きなので「だったらビールなんか飲むなよ!そんなにすっきりがいいなら水を飲め!」とつい思ってしまいます。
実際に飲んでみても、どうもビー

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図書館のお仕事紹介(18)予算折衝

図書館のお仕事紹介(18)予算折衝

世の中のたいていのものと同じく、図書館も運営するにはお金が必要です。

ただ違うのは図書館には無料の原則というものがあり、どんなにがんばって入館者数や貸出冊数やレファレンス件数を増やしても、それで儲かるわけではありません。
(※館種によっては利用料を徴収するところもあります)

そこで、財源としての所属組織から予算を獲得する、というのが重要な仕事になります。

もちろん私のような下っ端が予算折衝に

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図書館のお仕事紹介(17)貸出・返却

図書館のお仕事紹介(17)貸出・返却

「図書館の仕事って、カウンターで貸出返却してるだけでしょ?誰にでもできるんじゃないの?」
これは図書館に対するありがち誤解ナンバーワンですが、それに対して反論すると「いや貸出返却は仕事全体のごく一部で、ほかにもレファレンスとか受入・分類・目録・装備とか蔵書点検とか除籍とか展示とか修理とか…」と長くなるので、それがこの「図書館のお仕事紹介」シリーズを始めた動機にもなっています。
しかし、シリーズ17

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図書館のお仕事紹介(16)福袋

図書館のお仕事紹介(16)福袋

福袋といえばお正月の風物詩ですが、最近では図書館でも「福袋企画」を取り入れているところがありますね。
図書館員が選んだ数冊を外から見えないような袋に入れて、封をしたまま借りてもらい、中身は開けてみてのお楽しみ、というわけです。

私の勤め先でも、数年前から福袋企画を続けています。

数年間やってみてわかったのは、福袋には人間のハートに火をつける何かがあるらしいということです。

今まで誰も借りなか

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「歴史」というキーワードで歴史の本を探すとどうなるか

「歴史」というキーワードで歴史の本を探すとどうなるか

図書館内には蔵書検索用のPCが何台かありますが、ときどき利用者が検索結果表示画面を開きっぱなしで行ってしまうことがあります。
見つけしだい画面をクリアしていますが、図書館員としては、利用者さんがどういうキーワードで検索したのか気になって、つい見てしまいますよね。

ある日、学生さんと思しき人が例によって画面を放置したまま本を取りに行ってしまったので、見ると「歴史」というキーワードで検索していました

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図書館司書の適正年収とは

図書館司書の適正年収とは

私は当事者として、図書館司書の賃金が上がったらいいなともちろん思っていますが、年収1千万くらいだったらいいのにとは思いません。

そんなことになったが最後、図書館司書から女性が排除されるのが目に見えているからです。

たぶん「本は重いので女子には無理」とか「土日祝日も出勤だし育児と両立しにくいから」とかむちゃくちゃな理屈をつけて女性の採用が控えられるようになり、司書課程も男子で埋め尽くされて女子は

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図書館のお仕事紹介(15)巡回

図書館のお仕事紹介(15)巡回

半端な時間にちょっと手が空いたな、というときは、館内を巡回することにしています。

警備上の巡回は警備員さんがしてくれているのですが、図書館員の巡回は別の目的があります。

「巡回している自分の姿を利用者に見せる」ことです。

「図書館員だけど質問ある?」みたいな顔で、ゲーム画面のモブキャラ的に館内をうろうろしつつ、書架の乱れを直したり、困っていそうな人にお声がけしたり、問い合わせを受けたりするわ

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図書館員はブルシットジョブではないが、上へ行くほどブルシットになる

図書館員はブルシットジョブではないが、上へ行くほどブルシットになる

「ブルシット・ジョブ」と呼ばれる無意味な仕事については、2020年に上記の本が出版されたとき大きな話題になりましたし、いろいろと議論もされたので、いまさら私が述べることもないのですが、自分の仕事に当てはめると、大きくうなずけるところがあります。

まず私の勤め先を組織階層順に表現するとこうなります。

A. えらい人(局長級。いわゆる事務方のトップ)

B. 中間管理職(課長級)

C. 正

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図書館のお仕事紹介(14)利用案内・利用者教育

図書館のお仕事紹介(14)利用案内・利用者教育

利用案内と利用者教育は、広い意味ではレファレンスサービスの一種かと思いますが、単独で紹介されることがあまりないので、項目を立ててみました。

図書館員の使命として「利用者の時間を節約する」ということがあります。
「この本が見つかりません」「探し方がわからない」といった問い合わせについては、こちらが探して本を持ってきたほうが早いので、そうすることも多いです。

ただあえて「利用者が次から自分で見つけ

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翼のあるものは飛びたがる

翼のあるものは飛びたがる

よく求人広告で「誰にでもできる簡単なお仕事です♪」みたいなものがあって、見ると今働いている図書館より時給が良かったりします。
もちろん広告が大噓で、実際は超過酷な仕事、という可能性もありますが、仮に広告どおりだったとして、じゃあ転職しようか、とはなりません。
「誰にでもできる簡単な仕事」というのはかえって拷問じゃないかと思うからです。
むしろ「そこそこの知能が前提で、それなりの努力と研鑽が不可欠、

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図書館のお仕事紹介(13)修理製本

図書館のお仕事紹介(13)修理製本

昔から書籍修理には興味があり、製本教室に通ってみたことがあるのですが、そこでわかったのは「自分は不器用過ぎて製本家になれない」ということでした。
専門知識以前に「定規にカッターをあててまっすぐ切る」「紙に糊を塗って貼り付ける」といった工作の基本がまともにできないのですね。もともとモノはつくるより壊すほうが得意で、家電なども触っただけで壊すので「手から破壊のビームが出ている」疑惑もあり、家人からデス

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図書館のお仕事紹介(12)展示

図書館のお仕事紹介(12)展示

今回は、図書館業務にしては華やかな部類と言える展示についてご紹介します。

ふだんの業務で一番多いのは「新着展示」ですね。新しく入った本をすぐに配架せず、新着本コーナーに展示します。

もうひとつは「テーマ展示」です。よくあるテーマは季節行事(ひな祭りとかクリスマスとか)、推薦図書、人物関連、時事問題、貴重書や郷土資料の紹介などでしょうか。

作業の流れとしては「展示テーマを決める」→「資料の調査

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人にはどれだけの蔵書がいるか

人にはどれだけの蔵書がいるか

「図書館の人って、自宅にもさぞたくさん本があるんでしょうね?」と言われることがあります。

もちろん人によります。本の山に埋もれて暮らしている人もいれば、そもそも本好きではなく自宅に本などない、という人もいます。

ちなみに私は、自宅の蔵書を数えてみたところ、漫画や雑誌を入れても、430冊くらいでした。日本人の平均値より多いかもしれませんが、本好きとしては少ないのではないでしょうか。

自室に天井

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倍速視聴派におすすめの読書法

倍速視聴派におすすめの読書法

最近は映画などの映像を早送り再生で観る人がいるというので、すこし前によく話題になっていました。

個人的には、もともと動画が苦手で子どものころからテレビより本、映画やドラマより漫画派で、映像表現にそれほど思い入れがないこともあり、倍速視聴がとくに「けしからん」とか「作品への冒涜だ」とは思いません。ご本人が観やすいように観ればよいと思います。

ただ効率という観点で言うと、倍速視聴が得策なのかは疑問

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