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【セリーグ短評】優勝した阪神の野球と、巨人のMLB風ベースボール

2023年のセリーグは阪神が毎年恒例となっている序盤から大逃げを敢行し、ほとんど失速することなくそのまま逃げ切ったシーズンとなった。阪神を独走させ、ペナントレースが早々と決着してしまった主因は常勝チームを作る責任を果たさなかった巨人に尽きるだろう。9月14日時点で唯一の2ケタ貯金「12」を1チームで献上している。こんな事態は少し前ならあり得なかったことだ。

先日、堅い守りと堅実な攻めを両輪とする守り勝つ野球は日本人が持っている不安遺伝子のタイプ「SS型」と相性が良いはずだ、とエッセイに綴った。振り返ってみると、阪神は先発・中継ぎ・抑え共に防御率の良い投手陣が充実していたし、ほぼ固定された内外野の守備レベルの高さが光っていた。打撃面ではホームグラウンドが広い甲子園であるため、ホームランの数こそ少ないものの四球や犠打、盗塁、隙のない走塁を駆使して小刻みに加点していくSS型野球を遂行した。これはある意味必然の優勝である。

一方、気になるのは眼前で阪神の胴上げを見せられる災難に遭った巨人だ。2022年は毎試合4,5点の失点をホームランと長打による高火力の打線でカバーする戦いをしていた。これではまるでMLBで見るようなベースボールで、全然成績が安定しない。こういった打撃戦は遺伝子のタイプ「LL型」が多いアメリカ人の方が相性が良い。巨人が常勝チームに戻るためには、第一に防御率を改善しなければならなかったはずだ。

しかし残念なことに、2023年は余り改善されたようには見えなかった。それどころか、先発投手が大炎上したわけでもなく、5回を待たずして継投する落ち着きのない試合を繰り返していた。中継ぎにかかる負担の大きさからして、今年も優勝争いができないことを予感させた。また、マシンガン継投が守備の時間をいたずらに伸ばし、試合再開までグラウンドで待たされている野手と観客の疲労を蓄積させることにつながった。勝負所となる夏場、特に屋外球場でそれをすればどうなるかは想像しただけで気が滅入る。守備時間の短縮は試合を有利に運ぶために重要なポイントだ。

先ほど触れたが、過半数(65%)の日本人は物事を不安視する遺伝子SS型を持っている。野球でいう具体的な不安とは守備時におけるピンチと失点であり、その間はずっと不安感によるストレスがかかり続ける。一言で言えば、日本人は失点することを嫌い、恐れる傾向がある。ならば、失点のリスクをなるべく排除できるような野球を目指せばいいことに思考が行きつく。

即ち、勝利への近道は試合を支配する好投手(及び正捕手)を整えることからはじまる。投手戦/ロースコアゲームを得意とする守備主体の日本野球は日本人の不安遺伝子SS型によって形作られてきたものであり、WBCやU-18優勝の要因にもなったと個人的に推察している。客観的に見て、現在の巨人は日本人に合わない野球スタイルをとっている。2024年は防御率を良化させ、優勝争いできるチームを作り上げてほしい。そのためにはぶっちぎりのホームラン数の長所を残したまま、日本人の性に合うSS型の野球に真摯に取り組むべきなのである。

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