令嬢改心1-2:流石に反省して下さい、殿下。(3/3)

「物事には、時と場所というものがございます。内々の場であれば笑って流す事も出来ましょうが、何故、わざわざ公の場で、我が主に恥を掻かせるような事をなさいましたか? それは今後を見据え、お二人で話されればよい事ではなかったのですか?」
 わざとのように静かにゆっくりと。私の話が続くにつれ殿下の視線はきょろきょろと忙しなくうろつくようになり、最後には降参だというようにソファへ座り込み、両手を挙げた。

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令嬢改心1-2:流石に反省して下さい、殿下。(2/3)

私はソファで茶を飲む殿下をじっと眺めると、徐に声を上げた。
「それにしても、リュカ殿下。先程は随分と、若いご令嬢と騎士ごっこを楽しまれておられたようですが……」
「うっ」
 私の指摘に、殿下は気まずげな顔をしてその夏空のように明るい青の目を逸らす。
「殿下、繰り返しますが、どんなに気が進まない縁談であろうと、王命を覆す事など出来ません」
 そう言い切り、お茶で喉を潤しつつ殿下を見れば、殿下はぼそぼ

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令嬢改心1-2:流石に反省して下さい、殿下。(1/3)

「さて殿下。私が人払いした理由はお分かりで?」
「……僕と一対一で話したいからだろう? 先程の行いは、どういうつもりかと」
 ソファに座った第八王子殿下は、些か憂鬱そうに金茶の癖毛をくしゃりと乱すと、溜息を吐く。それに頷き、私はテーブルに二人分のティーカップを並べてこう続けた。
「正解です。意外でございました。騎士ごっこの余韻で、てっきり反発なさるかと思いましたが」
「お前な……僕を何だと思ってい

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令嬢改心:1-4 突然ですが、事件です。(4/4)

しかし、言われてみれば、だ。
 確かに、この騒動の中心人物であるご令嬢は、何故かひどく大人びたドレスを纏っていた。
 小柄で幼い顔立ちの彼女が纏う青色のドレスは、裾を絞った細身のラインで、大輪の白百合の刺繍が首からぶっつり落とされたかのような画となっている。それが妙に不吉というか、決まりが悪いというか。おかしな風に見えてしまう。
 高く結われた髪に挿された百合の形の髪飾りも、先のドレスも――高身長

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令嬢改心 1-1:突然ですが、事件です。(3/4)

ヴィオレット様は普段から、王都や高位貴族達の夜会に招かれては、名高い貴族の方々との宮廷言葉の高度な応酬――嫌みとも――を操るばかりに、新人令嬢の拙い反応が楽しくてならないらしいのだ。
 まあそれが、身分差を利用した嫌がらせでないのかと言われれば、実際そうなのだろうが。
 何せ我が主人こと、公爵家のご長女でいらっしゃるヴィオレット様は、数年前に夜会デビューしてからこちら、権を競う事を趣味となさってい

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令嬢改心:1-1:突然ですが、事件です。(2/4)

いささか冷めてしまった場を盛り上げるべく、楽団には小粋な音楽を演奏させ、メイド達に皆様にお代わりの飲み物を配るよう言いつけ、と。色々と手配を終えて私が場に戻ると、お二人はまだ、睨み合い――いや、ヴィオレット様は笑顔であるから一方的に第八王子殿下が睨み付けているだけなのだが――が続いていた。
 しかし、そろそろこの場の膠着に決着を付ける気になったのか、ヴィオレット様が朗らかと声を上げる。
 それがま

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令嬢改心:1-1 突然ですが、事件です(1/4)

あらすじ:
「ヴィオレット、今日こそ君には反省して貰う。君のその鼻持ちならない性格が矯正されるまで、僕、第八王子リュカの意思でもって――君との婚約式を延期する!」
公爵家主催の夜会の途中、執事エルネストが仕える主人、意地悪公爵令嬢ヴィオレットは第八王子リュカに婚約延期を言い渡されると、自らを否定された公爵令嬢が倒れてしまった。
数時間後、目を覚ました公爵令嬢は別人のように庶民的な性格に変わっていた

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Watcher #5

アルコール依存

ドラッグ

治療薬

トラウマ

断眠

統合失調症

認知症

てんかん

代謝性疾患

幻覚の原因を検索してみたが、どれも自分に当てはまらない。

代謝性疾患は、糖尿や高血圧など、生活習慣病のことだった。

それらに幻覚の症状があるなんて、知らなかった。

統合失調症は、自覚がない場合とかあるのか?

それにトラウマも、「忘れているトラウマ」とか言われたら、どうしようもないな

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【連載】訪問者6(魔法仕掛けのルーナ24)

(このシリーズがまとまっているマガジンはこちら)

「ごめんなさい……」
 おずおずと言いながら姿を見せたのは、アレクと同じ年頃——二十歳そこら——と思われる女性だった。丈の長いゆったりとした白衣で首元から膝下までをすっぽり覆っている。左右に分けた赤毛のお下げ髪は、ほどくと腰まで届きそうだ。
 小柄な彼女はアレクを見上げながら、ずり落ちたメガネをそっと直した。
「所長は留守なので、ご用は伺えないの

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【連載】訪問者5(魔法仕掛けのルーナ23)

(このシリーズがまとまっているマガジンはこちら)

「さて、行こうか」
 ジョージが立ち上がって歩き出した。足取りには確固とした自信が感じられる。
 アレクは彼を追いながら、背中に声をかけた。
「魔法使いのいるところに向かってるんですよね?」
「そうだよ。俺とフリードの共通の友人がこの先に住んでるんだ。彼女もフリードのことを気にかけていたから、きっと君の力になってくれるはずだ。
 ……この街にいる

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