火水イリイ

ひみ いりい。 文章を書く人、創作する人たちと繋がりたくてnoteをしています。

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  • 書き上げるまで

    何者でもない人が35万字の物語を書き上げるためにやった全ての努力。

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    1000文字前後の3分で読める物語

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書き上げるまで

 2023年冬。私はある物語を書き上げるために仕事を辞めた。  健康上、仕事上の問題もあったが、当時6割ほど構想が固まってきた物語に、あと少し労力を費やし、あと一歩踏み込むことができれば、絶対もっとよくなる、後悔しないと思ったからだった。  在職中と合わせ、通算で八ヶ月かけて物語は書き上がって、然るべき処置を取った。  分量としては本2、3冊分になる。35万文字程度だ。ここでは物語それ自体を話題にはしない。  いまここで重要なのは、私が何者でもない、ということだ。

    • モヤモヤをありがとう

      小説教室で赤をいっぱいもらった 一ヶ月ほど前に仕上げて提出した物語作品に、講師からの添削がやまほどついて返ってきた。  教室に初登校するまでに、講師の小説作品は一読しており、自分が馴染みにしている題材ではないものの作品世界に没頭でき、文章もぐいっと迫りくる感覚があって尊敬していた。その先生にここまでしていただけることが驚きで嬉しかった。  先生の作品で「ここがいい」とか、作風を把握しておけたというのは教室に臨むうえでいい選択だった。先生の目指す文学と、自分の目指す物語の差

      • 小説教室で1万文字の短編を書いた

         今月から月に1回小説教室に通う。  頻度としては少ないように見えて、毎月一本短編を仕上げて提出するので、心の中で占める割合は大きい。  小説教室に行こうと思ったきっかけは、長編を仕上げたからだ。  これまではいろんな本を乱読していたが、もっと「小説」を読みたいとか、「小説」のことがもっと知りたい気持ちが強く明確になったのは、自分でも一本作品を書き上げたことから生まれてきた。  「小説を書いてる人に会いたい」とも思った。 体験教室で早速発見があった 引き出しが増える・・

        • 論理による自由と、物語による自由

           なぜ私たちには物語が必要なのだろうか。なぜ論理やファクトの積み重ねだけでは生きていけないのだろうか。  研究成果とか、賢者による思索の体系を吸収しているだけでは、自分の中に余白がなくなっていくのはなんでだろうと、真剣に考えてみる気になったのは、短期間に学術書を詰め込みすぎて、文面を眺めているだけで吐き気が襲ってくるようになったからだ。  ああ、なんて、たいした頭脳じゃないないんだろう。それでも本という人類の知の結晶からは離れる気が起きず、知性を隙のないジグソーパズルのよ

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        書き上げるまで

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          26本
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          11本

        記事

          夜泣きのエッセイ

          作品を作る前の自分 現在は物語作品を「書き上げること」をテーマにマガジンを書いているが、作り上げるべき作品に取り掛かる前段階の自分には一定のパターンがある。  何を作るか、作りたいものの骨子もはっきりとはわからない状態の中で、「何かを言いたい」衝動が先にどんどん膨らんでいく。ある程度膨らみ切ったところで作品としてまとまりのあるものの構想が見えてくる。構想が見えてくると、他に何をしていてもそわそわし、発想のほとんどが作品の方に引っ張られていく。  「書き上げるまで」というマ

          夜泣きのエッセイ

          ダイアローグは最後に悩む

          ロバート・マッキー『DIALOGUE』で物語に磨きをかける さあいよいよ第三稿で物語に磨きをかけるか、というタイミングで、ロバート・マッキー氏のストーリーテリング三部作のうち未読だった『ダイアローグ』を読んだ。終盤になった理由は、我が心の師マッキー氏が、「ダイアローグを考えるのは最後」と語っていたことに忠実だったからと、単純に、本を買うのを躊躇するほど生活費が不安だったからだ。  三部作を揃えると一万円に届く。名著なだけに二次流通の値崩れも起こりにくい。  実際これらの本は

          ダイアローグは最後に悩む

          あこがれる文体と、「好きなことを仕事にするか」という命題への一次回答

          文芸誌を手に取った 遅いタイミングとは思いつつも、文学ムック「ことばと vol.7」を読んだ。2023年11月上旬に刊行済。「第五回ことばと新人賞」の受賞・佳作作品と選評が掲載されている。  先に断っておくと、私はこの新人賞に応募したわけではない。経緯としてはちょっと回りくどいが、私は朝日新聞ポッドキャストの熱心なリスナーだった。朝日新聞つながりで本の情報サイト「好書好日」も知っており、そのなかのインタビュー記事「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」で、ことばと

          あこがれる文体と、「好きなことを仕事にするか」という命題への一次回答

          限界を知って更新する

          テーマ設定の方法 第二作目を作るにあたり、一作目の方法論を踏襲している。書き上げることに関しては成功したからだ。  次の制作期間は、推敲完了を含めて四ヶ月と設定している。初めの一ヶ月はテーマ設定というか、四ヶ月という時間のなかで私が追いかける問いを設定するための時間に充てている。  テーマ設定とは出発点であり枠組みであると思っている。すでに知っていることだけを書くのではなく、書き上がった時には知らなかったことがある程度体系化されている状態を目指す。  このテーマ設定に

          限界を知って更新する

          第三稿。テーマやオマージュとのすり合わせ

          テーマをどう設定するか 35万文字の物語を作り終えて、2作目に取り組み始めている。次は10万文字以内で仕上げたいものだ。ただし1作目を補完するような物語にしたいとは考えている。  つまり根源的なテーマは変わっていない。根源的に語りたいテーマとしては私は狂信的と言っていいほどに「掴んで」いる。少なくともそう思い込んでいる。  ただその超大テーマを語るための、派生的なテーマは変えられる。切り口をどうするか考えるために資料をあたる。  他の人はテーマ探しをどんなふうに行うの

          第三稿。テーマやオマージュとのすり合わせ

          なぜ、物語で主人公を成長させなければいけないのか

          成長物語とストーリーの関係 「主人公と成長」というテーマで記事を書いてみようと思い立って、しばらく考え込んだ。  ストーリーには成長物語が多くある。子供が大人になる。未成熟が成熟する。それだけに私が結論として言いたいことは理解を得にくいかもしれない。もしくは熟練者にとっては自明なことだと思われてもしかたない。  つまり、「なぜ、物語で主人公を成長させなければいけないのか」というタイトルは、「物語で主人公は必ずしも成長する必要はない」というふうに書き換えることもできるからだ

          なぜ、物語で主人公を成長させなければいけないのか

          タイプした原稿は紙に印刷するか

          デジタルシフト vs プロトタイピング 以前の職場はほぼペーパーレスになっていた。会議から契約書の文面チェックに至るまで、全てパソコンの画面上で行うということに5年以上慣れていた。  しかし、その前のプロダクトデザイナー時代はプロトタイピングとして常に手作業があった。パソコン上で描いたものを出力してみたり、サンプルを作ってみるという作業が当たり前にあった。  それらはいずれゴミになる。作ることは未来を創ることに繋がっていると否定はしないが、ゴミを作ることとも紙一重だと知っ

          タイプした原稿は紙に印刷するか

          推敲で発揮される創造性

           私が師と仰ぐある牧師がいる。高齢だがご存命である。私は今でこそ北海道に帰ってきたが、東京にいる頃はコロナが始まるまでは毎週彼のメッセージを聞きに、教会に出かけていた。  教会に行きはじめて知ったが、「メッセージ」とは、それまでは「説教」だと思っているものと同じような位置付けだ。教会に集う人達はみな「メッセージ」と言うので、時代のどこかで呼び方が変わったのだろう。もしかしたら教派によっても違うのかもしれない。  「メッセージ」にも種類があることを知ることになった。つまり

          推敲で発揮される創造性

          自分の中心にある物語

          職業が一語という威力 「作家」と名乗るための方法論は広がっているように見えて、スタンダードは紙で商業出版されたかどうか、ほぼ一択なのではないだろうか。  少なくともリアルの本屋に、他人の資本の力で、自分の文章が収められた本が並ぶというのは、作家にとっての一つのマイルストーンのような気がする。  名刺に書いてあった時に、肩書きは短いほどいいという不文律がある。以前記者の方と名刺交換したとき、肩書きにただ 記者  と書いてあって潔いしかっこいいしで、頼もしく感じたことがあ

          自分の中心にある物語

          第二稿。「これが何か」をすぐに知ることができても、「何でないか」には文脈の理解が必要だ

          多いようで多くない 「火水イリイ」アカウントでnote投稿を開始する前にも、漫画投稿用アカウントを作っていた。エッセイ用アカウントも作ったことがある。  「火水イリイ」は作家や作家志望、編集者からの情報が集まるアカウントに育ってきたが、漫画投稿用の時には周りは漫画作家で溢れ、エッセイ用はビジネス関連やライフスタイル系の情報が集まった。俗にいうフィルターバブルである。  「世の中に文筆家がこんなに多いのか」と自分が埋もれているような気がする。しかし実際は多くない。皆が同じ方

          第二稿。「これが何か」をすぐに知ることができても、「何でないか」には文脈の理解が必要だ

          自分が生み出したキャラクターを全員愛せるか

          クリエイティブな人と瞑想の相性 漠然と、クリエイティブな人は瞑想と相性がよさそうな通念がある。  私は、座って何もしないタイプの瞑想が苦手だ。瞑想アプリを使っていた時期は、もっぱら入眠用に活用していた。  瞑想しているうちにすぐに眠くなるし、それより以前に何も考えないということができない。  「人は何も考えないことができる」というのを知ったときには、35、6歳になっていた。最近だ。むしろ、何も考えないことができる人がおり、そういう人の方が多いと知った時の衝撃と言ったら

          自分が生み出したキャラクターを全員愛せるか

          物語制作中の進捗管理に近道はないが、ご褒美作業の要素もある

          子供の頃からブレない夢を持った自分でいたかったか もっと早く、できるなら十代のうちから、願わくば小学生から、自分の将来の夢だとか一生の仕事に目覚めて、追いかけていたかったか、それにはYESとNOで回答できる。 YES・・・もっと早くに自分が打ち込むべきことに目覚めて、作ることと共に生きたかった。この場合でも、私はそこそこ上手くやったかもしれない。もっと文学属性の強い人とか、ゲームのシナリオライターとかになっていたかもしれない。 NO・・・今だからこそ書ける言葉がある。自

          物語制作中の進捗管理に近道はないが、ご褒美作業の要素もある