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『ジョーク・コント』名作古本ご紹介 ~ファンタスティックコントの源泉~

きっかけは古本との出会い

 赤ちゃんの人生初の人間的表情は、『笑顔』ではないでしょうか。
 『泣き』はかなり本能的ですが、『笑顔』はお母さんや抱き上げてくれた人に、ニコッと楽しい楽しい気持ちを伝えてくれます。社会との出会いに、笑い声を時にはあげて、心地よさそうに目を細め頬を緩ませています。
 では、文学、創作世界に、どれだけのお笑い系があるのでしょうか。少ないのではないでしょうか。
 『笑い』は、滑稽とは違い、瞬間的な感情表現です。タイミングよく意表を突く必要があります。短いジョークやコントの形式が、笑いに向いているように思えます。
 ユーモア小説の分野もありますが、今回はファンタスティックコントのきっかけとなり参考になった古本をご紹介します。皆様の読書のお役にたてば幸いです。本に付箋がついてるのは、読む時の私の癖なのでお許しを。

①『江戸小咄集1、2』『日本風流小咄集』宮尾しげを

 表紙に掲載した三冊ですね。これは読みやすいです。どのページも上下二段書きで、しかも改行がしてあります。
 江戸小咄は通常改行がしていないわけですが、現代人に読みやすいように編集されています。ことばもわかりやすく、お勧めです。
 前の二作は東洋出版、次は第二書房。「日本風流小咄集」は、世界風流小咄選集のうちの一巻です。

②「『少年倶楽部』の笑い話」選・解説杉山亮 

 講談社の逸品。古本屋の店頭に並べられていた発掘品です。大好きなので順番を繰り上げてご紹介。
 本作は『少年倶楽部』の愛読者である少年たちが応募したジョーク集です。『少年倶楽部』は大正三年から昭和三十七年まで刊行された月刊娯楽雑誌。エンタメ系で付録も充実していました。「鞍馬天狗」「怪人二十面相」など、ヒット作は多数です。でも、雑誌にこんな小咄が掲載されていたとは知りませんでした。
 子どもたちが、先生、両親、祖父母、兄弟姉妹、町の大人たちと交流する中で、子供の一生懸命な発想が、心地よい良質なユーモアを生みます。
 『少年倶楽部』のヒット小説を買い漁ったことがありましたが、この本は2004年に出版されたものです。

③『ブラックジョーク大全』『老いてこそユーモア』阿刀田隆

 前の本は講談社文庫、次は幻冬舎新書です。阿刀田隆氏のユーモア系作品集は多々あるのですが、とりあえず2作をリストアップ。
 特にブラックユーモアについては、好み、見方は分かれる面があるかと思います。前掲「『少年倶楽部』の笑い話」と比較すると分かりやすいです。外国のドライなジョーク集を意識したのかもしれません。
 ②では、子供と大人の関係の中、社会の利害損得に踏み込んでいないので、子供は大人たちの暖かい保護下で発想しているわけです。
 一方、本作は大人のジョークとコント、大人対大人の厳しい現実を抉り出す面があります。

④『ポケット・ジョーク(副題は様々)』植松黎 編・訳

 これは二十冊ぐらい発刊されているのでしょうか。角川文庫です。テーマ別に、世界のジョークを集めたものです。
 いったいどうやって収集したのでしょうか。
 副題は、本ごとに、禁断のユーモア・スポーツ・おまわりと泥棒・医者と患者・男と女・酔っぱらい・ギャンブル・トラベル・芸術家・動物・先生と生徒、などなど。
 あえて4番目に掲載したのは、外国のジョークがブラック系が多いため、③の記事と並べてみたかったのです。
 実はもう一つ最後にふれたテーマである「先生と生徒」が、「『少年倶楽部』の笑い話」に共通している可愛らしい発想が入っています。子どもの世界は万国共通なのでしょうね。

⑤『世界の紛争地ジョーク集』その他 早坂隆 

 こちらは中公新書ラクレです。シリーズでもタイトルは色々です。
 世界だけでなく日本のジョーク集も多いのが特徴かもしれません。「日本の戦時下ジョーク集太平洋戦争篇」「同 満州事変・日中戦争篇」「世界の日本人ジョーク集」「続・同」「同 令和編」など。世界では「世界の紛争地ジョーク集」「世界反米ジョーク集」『100万人が笑った「世界のジョーク集」傑作選』などど著書多数。
 ドライなジョークの味が満載。前後の記事も、読みごたえがあるのが特徴でしょうね。大変な取材力です。ブラックジョークは外国のジョークには定番のようです。

⑥『頭がよくなるユダヤ人ジョーク集』烏賀陽正弘、『紳士淑女のジョーク全集』井坂清、『笑いとユーモア』織田正吉


 類書ですね。前の書籍はPHP新書、つぎは、さくら舎です。このタイプは色々あります。「大学教授の・・・」とかです。世界のジョーク集の一つだと思います。
 最後の「笑いとユーモア」は、笑いをウィット・コミック・ユーモアに分類した技術書の面があります。

⑦『江戸小咄』『同 続』『江戸小咄女百態』『にっぽんジョーク集 遠くて近きは・・・の巻』『同 金にうらみは・・・の巻』興津要

 

 大物登場。私にとってはですが。講談社文庫です。
 「江戸小咄女百態」は旺文社文庫です。興津要氏は江戸のお笑い著書多数です。小咄は原文を尊重されている面で改行もなく古語もありで、読みにくいかもしれません。江戸の風俗、世相を知るのによいでしょう。
 お勧めは「にっぽんジョーク集」二冊。これは読みやすいです。小咄集から選んで、読みやすく編集されています。タイトルは「江戸ジョーク集」でもよいのではと思います。
 興津要氏の「古典落語」は何冊もありです。ただし、今回のコント・ジョークという短い作品とは異なりますので、説明は省きます。参考までに下記に写真を掲載します。「上」「下」「続」「続々」「続々々」「大尾」と続く副題だけでも、笑ってしまいます。

⑧ 『小咄十種 全』国書刊行会

  本書は大正六年の刊行です。江戸小咄をまとめたものです。100年前の古本でも十分読めます。アマゾンでは見つからず、タイトルを検索したら「日本の古本屋さん」に出て来ました。
 なんと私が昔通った小学校のすぐ近くの古本屋でした。こんど寄ってみようかな、なんて思った次第です。

⑨『冗談十年』『続 冗談十年』三木鶏郎

 

 昭和29年の本です。駿河台書房。三木氏は多才な作詞・作曲・コント・シナリオ、自由自在。当時の世相を豊かな発想で風刺しまくりです。ちょっと、現在の作家世界では見当たらないタイプでしょう。
 戦後の世相を濃厚に反映しているだけに、違和感はあるでしょうが、面白いです。

➉『お笑い10行小説』『同 Ⅱ』柿井優嬉

 本書は古本ではありません。東京図書出版です。興味を持ったのでご紹介します。柿井氏は理科系の方なのでしょうか。数字に対するこだわりは凄いです。一冊は157作。しかも、すべて10行で一貫しています。
 日常の中で、閃いた現代小咄をまとめたもののようです。

最後に『現代ユーモア文学全集』をご紹介

 さて、以上、今回ご紹介した書籍では、ユーモア小説はとりあげていません。あくまでも、短いジョーク・コントの関係書籍です。また、評論もあるのですが割愛しました。
 とはいえ、ユーモア小説の関係で、実は全集があることを、ここでご紹介しておきます。タイトルはなんと『現代ユーモア文学全集』です。私の認識不足で、日本文学にこんな全集があるのかと驚いた次第です。
 ただし、全集の「現代」とは、昭和29年のことです。駿河台書店。
 その一冊を紹介します。いずれは読みたいと思いますが、まだ先のことでしょう。タイトルもなんと「コント名作集」

 中身は、お笑い系の短編、ショートショートのようです。
 どうも文学系は泣き叫ぶタイプが多いように思えます。笑いの好きな私なりに、ネットも含めて古本屋巡りをしているうちに、出会った作品群をご紹介した次第です。
 私が勝手に読んでいる「ファンタスティックコント」との特色については、いずれ記事にしたいと思っています。
 とりあえず、私にとって、「古本は宝の山だ」ということで本記事を終わります。ご参考になれば、幸いです。




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