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読書日記。

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読書日記集です。
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読書日記その555 「謎の独立国家ソマリランド」

読書日記その555 「謎の独立国家ソマリランド」

10年くらいまえ、ノンフィクションの本でおもしろい本はないかとネットで検索したら、旅・紀行もののオススメで本書があった。とりあえず購入してみたものの、そもそもソマリランドに興味はなく、また500ページという分厚さに負けて、本棚にしまったままずっと放ったらかしにしていた。

しかし普段の読書生活においてノンフィクションを好んでいると、いやでも著者である高野秀行氏の名は目に入ってくる。誰も行かないよう

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読書日記その554 「逆説の日本史 18 幕末年代史編 Ⅰ」

読書日記その554 「逆説の日本史 18 幕末年代史編 Ⅰ」

本書は著者の推測が多分にあるため、自分で調べて考える必要がある。本書にある内容を、ネットやほかの著者の本と見比べたりして、自分の見解を確立するのが良いのでは。

そういう意味では、本書は歴史を考えるきっかけになるのでとてもいいと思う。また通説や常識にとわられない史観がおもしろいし、文章もとても読みやすいので、息抜きに読むには最適だ。ま、大河ドラマや歴史小説を読む感覚で本書を読むのがいいと思う。

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読書日記その553 「小村寿太郎 近代日本外交の体現者」

読書日記その553 「小村寿太郎 近代日本外交の体現者」

小村寿太郎も陸奥宗光と同様に、不遇な時期での人との出会いが転機となる。陸奥にとっての転機は坂本龍馬と伊藤博文との出会いだったが、小村はその陸奥宗光と桂太郎であろう。

翻訳局という閑職にいた若き日の小村は、陸奥によってその才能を見いだされる。小村の卓越した語学力と豊富な知識が陸奥の目にとまり、公使館参事官として清国への勤務を命じられる。これは小村にとって初めての外国勤務となり、そして飛躍のきっかけ

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読書日記その552 「陸奥宗光 日本外交の祖の生涯」

読書日記その552 「陸奥宗光 日本外交の祖の生涯」

陸奥宗光の出身は紀州和歌山。幕末明治維新の中心が薩長土肥のなかで、紀州藩出身の陸奥は異端な存在だったにちがいない。それは海援隊での陸奥は、ほかの隊士から嫌われる存在だったことからもわかる。まぁ、陸奥の性格も多分にあるのだろうけど。

しかし坂本龍馬だけが陸奥の才能を見抜き、自分の右腕として抜擢する。これが陸奥の人生での最大のターニングポイントとなるのだ。まずは陸奥の存在が龍馬の目にとまることがなか

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読書日記その551 「文化大革命 上巻」

読書日記その551 「文化大革命 上巻」

毛沢東というたったひとりの人間のエゴで、中国全土が大混乱をきたし暴徒化する。その規模と激しさにはおどろきを隠せない。

それにしても共産主義というのはじつに聞こえがいい。平等・財の分配・格差のない世界。「これは革命だ!我らに正義あり!」「旧社会をぶっ壊せ!」「ブルジョワ階級をぶっ潰せ!」毛沢東をはじめその取り巻きは、このような言葉で若者たちを煽動していく。

とりわけ信じがたいのが、子どもや学生の

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読書日記その550 「フェルマーの最終定理」

読書日記その550 「フェルマーの最終定理」

最初に本書を手にしたのは10年くらい前。レビューでは数学がわからなくても大丈夫とあったので購入した。しかし当時のボクは本を読み慣れてないこともあって、聞き慣れないカタカナやワードに戸惑い、すぐに断念した。

それからだいぶ年月がたち、今年の夏ころになんとなく読め始めた。がしかし、思った以上に数式の説明が多くてちんぷんかんぷん。またまた断念。

ところが先日、なに気にYouTubeを観てたら「中田敦

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読書日記その549 「明治維新の正体」

読書日記その549 「明治維新の正体」

本書は表紙に徳川慶喜の写真が使用されているように、どちらかというと徳川幕府寄りの内容だ。世の小説やドラマはどうしても勝者である薩長寄りのものが多いなかで、本書の内容はとても興味ぶかい。

著者は、幕府が条約をむすんで開国したことによって、日本の独立と平和が守られたという。確かにそうである。日本と列強との力の差は歴然で、ここで突っぱねていたら戦争となり、アヘン・アロー戦争での清国と同様にボロボロにさ

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読書日記その548 「ロシアについて  北方の原形」

読書日記その548 「ロシアについて 北方の原形」

これは司馬リョウ先生のロシア評だ。そして現在のロシアにもあてはまるようにも思える。本書を読むと、これらロシア人の性質の根底にあるのは、遊牧民族や西洋人による侵攻・虐殺という歴史の積み重ねからきてることがよくわかる。

ロシア人が東方シベリアの遊牧民族を制圧したのは16世紀に入ってから、イヴァン4世の時代だ。きっかけは小銃の発達である。それまでは馬上から弓を放つのが主流だったのを、イヴァン4世は小銃

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読書日記その547 「アヘン戦争から解放まで」

読書日記その547 「アヘン戦争から解放まで」

著者はポーランド人のジャーナリストだが生まれが北京で、生涯の多くを中国で過ごす。そんな本書はやはり中国側の視点で書かれている。しかし反日のような感情論ではなく、冷静な視点で書かれているので、中国側の史観を知るにはとてもいいと思う。

中国は清朝後期のアヘン戦争からおよそ100年という長い間、列強の侵略に脅かされてきたことがわかる。人口も多く、文明も発達し、眠れる獅子と恐れられていたアジアの大国も、

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読書日記その546 「桜の森の満開の下・白痴」

読書日記その546 「桜の森の満開の下・白痴」

新潟出身の坂口安吾の作品集。坂口安吾の作品に登場する女性は、どれも妖しさを秘めていてどこか影のある女性ばかりだ。とりわけ「桜の森の満開の下」にでてくる「女」は、妖艶と残忍さを併せ持つ魔性が強烈な印象を与える。

しかしボク個人的には「続戦争と一人の女」が印象にのこる。戦争が題材の作品はだいたい戦争の悲惨さをものがたるものだか、本作の主人公の女は戦争をよろこぶのだ。これがおもしろい。「夜の空襲はすば

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読書日記その545 「ワグネル プーチンの秘密部隊」

読書日記その545 「ワグネル プーチンの秘密部隊」

著者は2019年までワグネルに所属し、シリアの内戦でワグネル傭兵部隊の指揮官として活躍した人物だ。当時のワグネルは極秘の部隊で、戦線での取材や映像にも映ってはいけない徹底ぶりだったようだ。

ワグネルは基本的には、いわくつきの人間の集まりだ。しかし中には著者のようにしっかりと軍事訓練を積んだ者もいる。そんな軍事を知った者が指揮をとる命知らずの集団は、戦場ではかなりの戦果をあげたようだ。

本書でも

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読書日記その542 「近藤勇白書 下」

読書日記その542 「近藤勇白書 下」

うん、よかったッ!近藤勇の最期って描きかたによっては残念な印象になるので、本書ではどう終わるのか非常に興味があったのだ。その点で本書では、幕末を駆けぬけたひとりの漢(おとこ)の清々しい最期で終わっていてとてもよかった。

上巻では時勢の荒波へ乗り出し、突き進んでいくイキイキした姿。それとは対照的に、下巻は劣勢のなかで総長として苦悩する姿が描かれている。自分の信じた孝明天皇は崩御、将軍慶喜は政権を返

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読書日記その541 「三流シェフ」

読書日記その541 「三流シェフ」

本書のタイトルに「三流シェフ」とあるが、著者・三國シェフは長きにわたり日本のフランス料理界を牽引されてきた超一流のシェフだ。三國シェフは本書で帝国ホテルの故・村上シェフを神と呼んだが、われわれの世代からしたら三國シェフこそが神である。

約30年前、20歳のボクは東京のフランス料理店でコック見習いとして働いていた。勤めていたレストランはなかなかの有名店で、ボク自身は三國シェフにお会いしたことはなか

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読書日記その540 「近藤勇白書(上)」

読書日記その540 「近藤勇白書(上)」

試衛館時代〜新選組結成〜芹沢鴨静粛〜池田屋事件〜禁門の変

狂瀾怒濤の風雲うずまく幕末。おのれの正義をつらぬきながら一心不乱にかけぬけた若者集団「新選組」の局長、近藤勇のものがたりだ。新選組といえば土方歳三、沖田総司、斎藤一や永倉新八がよく描かれるが、局長である近藤勇はなぜか影がうすくなる。本書はそんな近藤勇を中心に描かれた数すくない作品だ。

池波先生の描く近藤勇。それは厳しさと優しさの両方をか

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