kimura ryota

備忘録 短歌など

kimura ryota

備忘録 短歌など

マガジン

記事一覧

雑記「朗らかでない自分とどう付き合うか」

うぐぅと身体をねじり起こしてiPhoneで聴いていないPodcastを流すと、そのまま続く微睡に聴き慣れたパーソナリティの声がぬるっと混ざり込む。これまで見ていた夢の続きに…

kimura ryota
1か月前
5

短歌連作「生誕」

生活ってさ薔薇なのか命とかのことテレビで喋っているし はぐれないスピードを続けてんのはさチルいじゃんって衛星になる 折り紙の銀色じみてその後も雑なロマンスだった…

kimura ryota
1か月前
4

短歌連作「指先」

たそがれを白鷺がゆく相槌のかわりにあなたの手を握ってる 祝祭を恐れ草葉の陰で吐く あなたが入れるまぼろしの手指 고인물은 썩는다(コインムルンソンネンダ)まだ友…

kimura ryota
4か月前
3

反芻

名久井が指差したのは、積もった埃が形を成したような雑居ビルで、思わず怯んだ。階段の一段ずつに足跡が、それは新しく、残っていた。鉄の凹凸を見る。何度も、何度も通り…

kimura ryota
4か月前
4

短歌連作「slight sleep」

通過する音に紛れて(可笑しくない?)アリスは薬を飲まされている 頬の体温で割れてしまう茉莉花の匂い あなたの手記として燃えたなら 愚かさから逃げようよ ゲームセン…

kimura ryota
6か月前
7

短歌連作「rob/sub」

片翅をもがれて振れる鬼蜻蜓 実存は怪しくてこんなにも 高校の時知り合ってたらきっとマーブル模様だっただろうね うるさい9月 笑わなくなった従姉妹の右手には月の剥げ…

kimura ryota
7か月前
4

短歌連作「lucid/confused」

これは天使の方法ですからねと密やかに刺青を見せては 焼肉屋で同じ匂いになる ふたり 駅前のショーウィンドーに映る 腰掛ける 決まってそれは薄紅のハンカチ 初雪葛の蕾…

kimura ryota
8か月前
6

短歌連作「wake」

生傷のごとく短い八月のビデオテープに再生機能 未完とはゆれる海面 お茶の味変わっちゃったしもう帰ろうか 「猫いたよ」とかの連絡されて ああ 守ろうとしてくれたん…

kimura ryota
9か月前
6

雑記「歌い出しが凄い曲 10選」

歌詞優先で音楽を聴くタイプなので、「凄い…」と思わず唸ってしまった歌い出しについて、簡単な感想と一緒に、自己満足でまとめました。 個人的な意見なので、解釈や制作…

kimura ryota
1年前
15

短歌「Lucky Boy」

もう胸に電光掲示をつけてやりうっすらスマイルマークを流す この鍵は実家のだったと呟いて ごめんねって右耳下げていた 生活はこんなに美しかったっけ歯を磨くたび歯は…

kimura ryota
1年前
4

雑記「ハンバーグセットのライスってカピカピになったことしかないですね」

もうすぐで23歳になるのに、特技が「感傷に浸る」なのまずい気がしてきた。ずっと謝りたい人たちのことを思い出しているのも、良くない気がしてきた。気がしてきた、じゃな…

kimura ryota
1年前
7

雑記「帰省」

兄弟がいないから早く結婚して欲しいと父親に言われて、無理をしないで良い人を探しなさいと母親に言われた。二人とも俺のことしか考えていなかった。愛に産まれていた。 …

kimura ryota
1年前
6

あぶら

 振り返ってみれば、小原はいつもぎこちなかった。ぎこちないというのは、主に立ち振る舞いについてだが、広義なら小原の生活そのものを指していた。大きく出っぱった額に…

kimura ryota
2年前
6

最近の短歌詰め合わせセット④

一心に風受けきってきたんだね白菜を冷ますあいだのことば 見かけよりずっと穏やか特別な夜に埋まって帰らないひと 羊雲みたいなダウン着た彼もバスに乗り込む つまんな…

kimura ryota
2年前
6

最近の短歌詰め合わせセット③

女の子じゃなくてもきみに会いたいよ光仰ぐ真昼の交差点 無為に話し続けた夜があったことはつはつと霜柱踏み抜く 過程だけ愛し続けているからね張りぼての火を撃ち抜かれ…

kimura ryota
2年前
7

最近の短歌詰め合わせセット②

紛い物のフライパンで炒った卵の剥げたテフロンまで所有物 我学問は荒みぬ、自制心なしに綺麗な森で迷った挙句 クソ映画観たよ本当に最悪で泣けてきたなんで一人で観たの…

kimura ryota
2年前
3
雑記「朗らかでない自分とどう付き合うか」

雑記「朗らかでない自分とどう付き合うか」

うぐぅと身体をねじり起こしてiPhoneで聴いていないPodcastを流すと、そのまま続く微睡に聴き慣れたパーソナリティの声がぬるっと混ざり込む。これまで見ていた夢の続きに写されて、旧友や輪郭だけの登場人物に代わる代わるそれは化けていく。夢で俺はなんと答えていたんだろう。返答を待たずに会話は進んでいく、自分自身の意識のはずなのに。主体が不在でも夢は続き、断片的な記憶は残る。

推敲していると基本的

もっとみる
短歌連作「生誕」

短歌連作「生誕」

生活ってさ薔薇なのか命とかのことテレビで喋っているし

はぐれないスピードを続けてんのはさチルいじゃんって衛星になる

折り紙の銀色じみてその後も雑なロマンスだった感じで

明滅を(暫く会ってなかったしせっかくだから)見といてやった

象の夢こわくて起きてスプーンで蜂蜜ねぶる夢のみじかさ

生誕はこれからも来る換金所のお姉さんが欠伸をしている間

ストップって言ってください次の日に来なかった人がや

もっとみる
短歌連作「指先」

短歌連作「指先」

たそがれを白鷺がゆく相槌のかわりにあなたの手を握ってる

祝祭を恐れ草葉の陰で吐く あなたが入れるまぼろしの手指

고인물은 썩는다(コインムルンソンネンダ)まだ友達が階段をのぼるのを待ちながら

社会から流氷をなぞりゆくここち 狂おしいほどピースの写真

心当たりがある人は手を挙げて逃げない鳩がいるバスプール

またはまばたきとなりたい脳内のwisdomは蝶のページ破れて

返されなかったピン

もっとみる
反芻

反芻

名久井が指差したのは、積もった埃が形を成したような雑居ビルで、思わず怯んだ。階段の一段ずつに足跡が、それは新しく、残っていた。鉄の凹凸を見る。何度も、何度も通り過ぎた人がいるという形跡が、登った先に店があるという確信へ姿を変えたとき、異様に怖かった。場所も、勝手に他人に暴かれる自分自身のことも。別に気づいて欲しい訳ではなかった。誰かに伝えておきたいなら、もうとっくに心の内から溢していたはずだった。

もっとみる
短歌連作「slight sleep」

短歌連作「slight sleep」

通過する音に紛れて(可笑しくない?)アリスは薬を飲まされている

頬の体温で割れてしまう茉莉花の匂い あなたの手記として燃えたなら

愚かさから逃げようよ ゲームセンターでゾンビを殺す車に乗ろう

梟の振りをしていて 微睡はイーハトーヴォへの道のりだから

眼を剥いて初冬の高架を闊歩する ここに台湾映画の画角

油塗れの手で星空を謳った inondation 一瞬そうだった

ハイネケン踏み抜いて

もっとみる
短歌連作「rob/sub」

短歌連作「rob/sub」

片翅をもがれて振れる鬼蜻蜓 実存は怪しくてこんなにも

高校の時知り合ってたらきっとマーブル模様だっただろうね うるさい9月

笑わなくなった従姉妹の右手には月の剥げた絵札 鯉が浮く

秋の停車場で萎びた朝顔を千切る 集団下校の匂い

Wedding cakeに満ちる水面の重み した/してくれた事柄

持ち去った季節を覚える義務があり 夜間急行は嘶き声で

それからの fuel 生活の記録と fo

もっとみる
短歌連作「lucid/confused」

短歌連作「lucid/confused」

これは天使の方法ですからねと密やかに刺青を見せては

焼肉屋で同じ匂いになる ふたり 駅前のショーウィンドーに映る

腰掛ける 決まってそれは薄紅のハンカチ 初雪葛の蕾

困惑を押し付けられて 枕には柔らかい羽はひとつもなかった

明日から他人だという 注がれたソーダ水が酸っぱくてたまらない

君が必要とする時いなくなるつもりだから too time too time

たましいのかたち知らないけ

もっとみる
短歌連作「wake」

短歌連作「wake」

生傷のごとく短い八月のビデオテープに再生機能

未完とはゆれる海面 お茶の味変わっちゃったしもう帰ろうか

「猫いたよ」とかの連絡されて ああ 守ろうとしてくれたんだよね

夕暮れの眩しさ握りしめる 俺ジーンズ似合うねって言われたい

知っている街のバス 知らない街で頼むのは辛い麺類ばかり

ウーロン茶、う・う・ろんちゃって粒立てて 笑うところまだ分かんないよ

満席の居酒屋チェーン 歌っても踊っ

もっとみる
雑記「歌い出しが凄い曲 10選」

雑記「歌い出しが凄い曲 10選」

歌詞優先で音楽を聴くタイプなので、「凄い…」と思わず唸ってしまった歌い出しについて、簡単な感想と一緒に、自己満足でまとめました。
個人的な意見なので、解釈や制作背景が違っていたらすみません…。
表現の自由・多様性の時代を、言い訳にしています。

①ところで君の音楽の趣味の少し偏屈なところが好きだった(andymori「誰にも見つけられない星になれたら」)

いや偏屈なのお前だろ!という意見はさてお

もっとみる
短歌「Lucky Boy」

短歌「Lucky Boy」

もう胸に電光掲示をつけてやりうっすらスマイルマークを流す

この鍵は実家のだったと呟いて ごめんねって右耳下げていた

生活はこんなに美しかったっけ歯を磨くたび歯は永らえて

運命があればいいのに辛いなら車海老だって剥いてあげるよ

月は武器 声は振動に過ぎなくて無理に話さなくてもいいから

歯並びが綺麗じゃないしクリスマスソング歌えるから恥ずかしい

おれは詞にあのこは北に行きついておなじ運河を

もっとみる
雑記「ハンバーグセットのライスってカピカピになったことしかないですね」

雑記「ハンバーグセットのライスってカピカピになったことしかないですね」

もうすぐで23歳になるのに、特技が「感傷に浸る」なのまずい気がしてきた。ずっと謝りたい人たちのことを思い出しているのも、良くない気がしてきた。気がしてきた、じゃないね。良くない、むしろ悪い。

社会人になってから変わったこと。ティッシュを高くてデカいコンビニに売ってるやつに変えたこと。ヨガ・サウナ・瞑想とかしないと体がもたないこと。一万しないご飯のお会計にビビらなくなったこと。煙草の本数が増えたこ

もっとみる
雑記「帰省」

雑記「帰省」

兄弟がいないから早く結婚して欲しいと父親に言われて、無理をしないで良い人を探しなさいと母親に言われた。二人とも俺のことしか考えていなかった。愛に産まれていた。

親友と海に入った。海の中で全裸になった。有名な漁港で食べた海鮮丼が微妙だった。車に戻って「不味かったな」と言って悪い顔をして笑った。そいつは帰りにコンビニのサーモン丼を食べていた。車で有吉のサンドリを聴いて死ぬほど笑った。

地元の友達と

もっとみる
あぶら

あぶら

 振り返ってみれば、小原はいつもぎこちなかった。ぎこちないというのは、主に立ち振る舞いについてだが、広義なら小原の生活そのものを指していた。大きく出っぱった額には、常に汗をじったりと滲ませて、それを隠すように長い髪を伸ばしていた。
 電車を間違えた、と連絡が来る。僕は改札の前で待つのをやめて、駅に併設する小さな本屋に入った。新刊のコーナー、文芸書、建築雑誌を眺める。本屋への興味が尽きかける瞬間に、

もっとみる
最近の短歌詰め合わせセット④

最近の短歌詰め合わせセット④

一心に風受けきってきたんだね白菜を冷ますあいだのことば

見かけよりずっと穏やか特別な夜に埋まって帰らないひと

羊雲みたいなダウン着た彼もバスに乗り込む つまんない朝

楽しかったよ薄緑のプレートにカッサータの欠片こぼれてて

にぶい夢 裸足で踏み抜いた鏡に女の笑みひとつふたつみっつ

コンデンスミルク必死で絞ったら鋏を持ってきてくれたのに

最近の短歌詰め合わせセット③

最近の短歌詰め合わせセット③

女の子じゃなくてもきみに会いたいよ光仰ぐ真昼の交差点

無為に話し続けた夜があったことはつはつと霜柱踏み抜く

過程だけ愛し続けているからね張りぼての火を撃ち抜かれても

まだジュース飲んでていいよじんわりとつばさ生え揃ってきてごめんね

切符まだ買わなくていい飛びあがる冗談めいたきみのくるぶし

ヨークシャーテリア飼おうかお互いのリュックをどこかに預けたときに

もういちど商店街に向かうからみず

もっとみる
最近の短歌詰め合わせセット②

最近の短歌詰め合わせセット②

紛い物のフライパンで炒った卵の剥げたテフロンまで所有物

我学問は荒みぬ、自制心なしに綺麗な森で迷った挙句

クソ映画観たよ本当に最悪で泣けてきたなんで一人で観たの

手土産のクッキー缶をぶら下げて髪を染めてみたら気づくかな

全身の写真を見せて顔だけを拡大された 地獄にいけよ

solitude まだよく分からないままに青山ブックセンターにいる

くちびるの色素沈着 愛おしいほどナンがでかいイン

もっとみる