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小説の感想

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大好きな本を読んで考えたことについて。いつでも思い出せるように。
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『天才はあきらめた』山里亮太著 ー人生に効く名言盛りだくさんのバイブルー

『天才はあきらめた』山里亮太著 ー人生に効く名言盛りだくさんのバイブルー

自己否定は努力をやめる言い訳でしかない。

今や天才芸人とも言われる南海キャンディーズの山里亮太さん。

大女優の蒼井優と結婚し、順風満帆の人生にも見える彼だが、そこには地獄のような努力の日々があった。

自分の醜さも交え、死にものぐるいで笑いのために奮闘する芸人としての人生を綴った自叙伝。人生に効く名言盛りだくさんのバイブルです。

***

つい諦めてしまいそうになることがある。

大きな失敗

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『坂下あたると、しじょうの宇宙』町屋良平著 ー芥川賞作家が描く現代詩案内ー

『坂下あたると、しじょうの宇宙』町屋良平著 ー芥川賞作家が描く現代詩案内ー

頭の中にあるものを外に出したいと思うときってありませんか?

例えば本を読んでいると、ある1文がふと現れて、自分の感情をぐわーっと頭まで押し上げてしまうような瞬間。

「どういうことだ?」
「ああ、こういうことかも!」
「そういえばこういうことあったな」
「あれでも、このパターンだとこういう考え方もできるな?」
「うーんわからん!」
みたいな。

目は次の文を追いつつも、全然違うことを考えてしまっ

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読書感想『成瀬は天下を取りに行く』宮島未奈著 ―なんでもやってみようと思える元気がもらえる1冊―

読書感想『成瀬は天下を取りに行く』宮島未奈著 ―なんでもやってみようと思える元気がもらえる1冊―

いつから結果を気にして何もできなくなったんだっけって思う。

大学受験で自分の限界を知ったから?
社会人になって意味のないことより、結果だけを求めてしまうようになったから?

結果を残せるかわからないけど、やりたくなったからやってみようって思えなくなったのは何が原因だったんだっけ。いや、原因なんてなくて、いろんなことの積み重ねなのかもな。

最近は何かをやろうと思うと、いつもできなかったことばかり

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【書評】『往復書簡 初恋と不倫』坂元裕二

【書評】『往復書簡 初恋と不倫』坂元裕二

”ありえたかもしれない悲劇は形にならなくても、奥深くに残り続けるんだと思います。
悲しみはいつか川になって、川はどれもつながっていて、流れていって、流れ込んでいく。悲しみの川は、より深い悲しみの海に流れ込む。”

誰かの身に起こった悲劇が、苦痛が、あるいは怒りが、どうして自分の身に起らないと言い切れるのか。ぼくにはわからない。そんなものを想像してしまう度に、ぼくに耐えようのない恐怖が襲う。

『往

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【書評コラム】信用と孤独。ぼくたちはいつだって少し不在だ。

【書評コラム】信用と孤独。ぼくたちはいつだって少し不在だ。

飲み会の時に、突如孤独な気持ちになることってありませんか?

たいていの場合はトイレから戻ってくる途中から見える座席で、楽しく話しているところを見た時とか、途中でふと酔いが冷めてしまった時。

そういう時に、ああなんとなく自分はここにいなくても大丈夫なんだなあってぽつんと取り残されたような気持ちになるんですよね。

そういえば、孤独って1人でいるときより、誰かといるときのほうが感じやすい気がします

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【書評コラム】手に入らなかったものに縛られる人生との向き合い方

【書評コラム】手に入らなかったものに縛られる人生との向き合い方

人生における喜びと悲しみを思い返してみると、手に入ったものと手に入らなかったものに分けられる。

そして、手に入らなかったもの中でも記憶に残り続けるのは、身近な人が自分の欲しくてやまないものを手に入れたと知ってしまったものである。

好きだったけど振られた相手とか、行きたかったけど試験に受からずに諦めた学校とか、自分が手に入れられなかったものは他の誰かが手に入れてしまう。

そんな思い出が僕にもあ

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【書評コラム】事実だけでは判断できない物事について

【書評コラム】事実だけでは判断できない物事について

「親の責任って、どこまでなんでしょうね。とくに子供が成人していたら」

1年ほど前のこと、テレビを見てたら芸能人の親を持つ子供が犯罪を犯して捕まるという事件があった。
その後、親が謝罪会見で「この度は息子が……」と涙ながらに謝罪の言葉を並べていた。

僕はこのとき、子供は成人しているしなぜ親が謝らなくてはいけないのか、責任は自分で取るべきだ、と思っていた。

しかし島本理生さんの『ファーストラヴ』

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読書感想『明け方の若者たち』―ねえ、今思い通りの人生を歩んでる?

読書感想『明け方の若者たち』―ねえ、今思い通りの人生を歩んでる?

「こんなはずじゃなかった」と思う夜を何度迎えただろうか。

社会人2年目、乗り慣れた有楽町線、繰り返す「お世話になります」、月曜から金曜までをひたすらにコピーアンドペーストする毎日。

入社したばかりの頃はガチガチに緊張していたことも、今では足を交互に出すくらいには簡単にできるようになった。

成長といえば聞こえはいいけど、こんなものを成長と呼んでいいのか、と思う自分がいる。

1年前のあの頃、ジ

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【書評コラム】誰が正しくて、誰が悪いのか。また僕たちは伊坂幸太郎に騙される。

【書評コラム】誰が正しくて、誰が悪いのか。また僕たちは伊坂幸太郎に騙される。

また騙された。

伊坂幸太郎の作品を読むたびにいつもそう思う。今回もダメだったか、と残念がりながらも、またやってくれたな、と称賛することになる。

ぼくは毎回、伊坂作品の1ページ目をめくる時、覚悟を決める。

「じっくり読み込んで、物語に隠された謎を解き明かすんだ!」と意気込む。そうやって人物の行動、セリフ、周りの状況、すべてに気を止めて読んでいるのだが、気づいた時にはもう遅い。すでに彼の術中には

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【書評コラム】起こせ、革命。手元のカードで戦うんだ。

【書評コラム】起こせ、革命。手元のカードで戦うんだ。

主人公になりたい、とずっと思っている。

なにも持っていない自分があることをきっかけに、激動の渦の中に巻き込まれたり、自分の過去の思いを原動力にして目の前の壁に立ち向かっていったり、そんな物語の主人公のような生活なら、人生はもっと価値のあるものになっていたはずだ、と思いながら流れていく日々を過ごしている。

だから他人の持っている、容姿や技術、背景を羨ましく思う。時にはずるいと思って妬んだりする。

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【読書コラム】忙しない日々にゆっくりとした時間と温かいスープを

【読書コラム】忙しない日々にゆっくりとした時間と温かいスープを

”昔の時間は今よりのんびり太っていて、それを「時間の節約」の名のもとに、ずいぶん細らせてしまったのが、今の時間のように思える”p50

今年ももう残すところ半年となり、その残りの第一歩である7月ですらすでに終わろうとしている。

今年は例年より時間の流れが早いように感じる。それも一度は終息の影を見せたが、また姿を大きく晒しだしている疫病のせいでもあるのだろう。

今までとは打って変わる生活様式に適

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【書評コラム】辛い事実を乗り越える人間の気持ちについて

【書評コラム】辛い事実を乗り越える人間の気持ちについて

隠されている事実や秘密は怖い。

それが明らかになったとき、良くも悪くも今のままではいられなくなる。

徐々に社会がシステム化されていっている現在、電車の到着時刻や目的地へのたどり着き方など、これからの行動を簡単に予測でき、ある程度決まった行動を容易に取ることができるようになった。

だからこそ隠されていた秘密や事実が明らかになることに不安を覚えるものも多いだろう。

どんなに予測していても、人間

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『ピンクとグレー』友人に嫉妬してまうことってあるよね。

『ピンクとグレー』友人に嫉妬してまうことってあるよね。

「そう。僕自身分からなくなっている。有名になりたくてもなれなくて、有名になったやつが苦しんで。僕はいったいどうなりたいのだろう。」

第164回直木賞候補作に加藤シゲアキさんの『オルタネート』選ばれたということで、気になってはいたけど読めていなかった本作を読了しました。

いや~めちゃくちゃおもしろかった!

エンタメ小説として、早く続きが読みたくなる展開に、一緒に過ごしてきたはずの友人だけが有名

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後悔ばかりを思い出してしまう自分へ『ボクたちはみんな大人になれなかった』

後悔ばかりを思い出してしまう自分へ『ボクたちはみんな大人になれなかった』

後悔をなかったことにするためには2種類のアプローチ方法がある。

1つ目は後悔を塗り替えること。
悔やんだことをもう一度行い、成功させることによって後悔そのものを良い記憶としてアップデートさせる。

2つ目は忘れてしまうこと。
過去の後悔ではなく、今ある幸せに目を向けて、悔いが頭を締めるスペースを極限まで減らす。

とは言ったものの、後悔をなかったことにするのはなかなか簡単じゃないし、それ相応の努

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