からした火南/たかなん

純文学ずきの物書き。『チャオ!チャオ!パスタイオ』で第8回カクヨムWeb小説コンテスト…

からした火南/たかなん

純文学ずきの物書き。『チャオ!チャオ!パスタイオ』で第8回カクヨムWeb小説コンテスト・ライト文芸部門にて特別賞を受賞。1/13富士見L文庫より発売予定。ただいま予約受付中。 https://kakuyomu.jp/users/karashitakanan

マガジン

  • 写真集『たかなんのアルバム』~基本的に撮りっぱなし

  • 掌編小説集『いろごと/されごと』

  • 短編小説『ワタシは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』全06話

    渦巻く不安を晴らすためアームカットを繰り返すモエ。攻撃的なギターを奏でるサキと出会い、やがて二人は深くつながり合う。 しかし二人の距離は次第に離れ、モエは男を漁ることで寂しさを埋める。 嫌悪の対象である男性に、身勝手なセックスで乱暴に扱われることを望むモエは、やがてデザイナーを名乗る男と出会う。

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短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第01話 オルファの黄色いカッターナイフ

 ベッドの中で独り、耳をふさいでいる。  静けさに耐えきれず頭から毛布をかぶった。眠れない夜に聞く、静寂の音が嫌いだ。  もう三十分以上もこうしているだろうか。耳…

『チャオ! チャオ! パスタイオ』2024年01月13日KADOKAWA富士見L文庫より発売

第8回カクヨムWeb小説コンテスト・ライト文芸部門で特別賞をいただき、書籍化準備中の『チャオ!チャオ!パスタイオ 面倒な隣人とワタシとカルボナーラ』。 発売日が決定し…

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パスタ!パスタ!パスタ!~その01

掌編小説『武蔵野サイクリング』

 落葉樹の隙間から、初夏の日差しが肌を焼く。汗に濡れた肌を、土ぼこりを含んだ風が不快になでていった。  自転車をこぎ始めて間もないというのに、もう息が上がってい…

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第06話/最終話 ワタシは花瓶。呪文のように言い聞かせる。

 やがて男は鼻から舌先を離すと、ワタシをベッドの上で四つんばいにさせた。そして手の平ではなく、肘で体を支えるように命じた。結果ワタシは、高々とお尻を突き上げる格…

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第05話 ワタシとヤリたい?

 黒く染まったカサブタがはがれ始める頃、サキが部屋に来てくれた。  顔を合わせるのはもう、十日ぶりになるだろうか。ワタシたちはお互いのタトゥーを舐め合いながら、…

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第04話 たわれるように舞う二匹のジャコウアゲハ

 ひとしきり燃えたあと、シーツに包まってサキの腕に顔を埋める。  首筋に回された彼女の細い左腕はとても手触りが良くて、いつまでも撫でていたくなってしまう。手首か…

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第03話 罵られるだけでイッてしまうイヤラシイ女

 学食でお昼を済まし、午後の講義までの時間をどうやって潰そうかとぼんやり中庭を歩いていると、不意に背後から声をかけられた。 「モエ発見!」 「え? サキさん!?」 …

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第02話 耳をつんざく攻撃的な音色

 講堂に続く廊下を、独り歩いている。  みんなサークル活動に出払っているのだろうか、誰ともすれ違う事がない。講義が終わるといつもすぐに学校を出てしまうから、こん…

掌編小説『弱き者よ汝の名は女なり』

 鏡の前で呟きながら、右手の指先を顎に当てる。そして左手を右肘に添えて、思案に暮れるポーズをとってみる。  ついでに小声で、「キリッ」と擬音も添える。斜めに構え…

掌編小説『恋の始まりは晴れたり曇ったりの四月のようだ』

 不倫なんてまっぴらごめんだ。今だってまだ、そう思っている。  けれども、好きになってしまったのだから仕方がない。燃え始めた恋の火を消す方法なんて、ワタシは知ら…

からした火南とは……

 こんにちは、『たかなん』こと『からした火南』です。  小説を書いいます。純文学を書くことが多かったけど、いまはエンタメ小説を書いてます。  『チャオ!チャオ!…

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ダンス&阿波おどり

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新宿の風景

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街角の風景2

掌編小説『アタイを異世界へ連れてって』

 ねぇねぇ、ちょっと聞いてくださいよ。  なに? また愚痴かって? いや、まぁ、愚痴と言えば愚痴のようなモンなんですけどね……。いいからほら、座って、座って。  …

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第01話 オルファの黄色いカッターナイフ

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第01話 オルファの黄色いカッターナイフ

 ベッドの中で独り、耳をふさいでいる。
 静けさに耐えきれず頭から毛布をかぶった。眠れない夜に聞く、静寂の音が嫌いだ。
 もう三十分以上もこうしているだろうか。耳から手をはずそうとしたのだけれど、肘の関節が油の足りない機械のように悲鳴をあげて動かない。きしむ腕をゆっくりと伸ばして、ベッドの中からはいだした。
 照明は消したままだけど、窓から差し込む月明かりのおかげで部屋を見渡すことができる。半年ほ

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『チャオ! チャオ! パスタイオ』2024年01月13日KADOKAWA富士見L文庫より発売

『チャオ! チャオ! パスタイオ』2024年01月13日KADOKAWA富士見L文庫より発売

第8回カクヨムWeb小説コンテスト・ライト文芸部門で特別賞をいただき、書籍化準備中の『チャオ!チャオ!パスタイオ 面倒な隣人とワタシとカルボナーラ』。
発売日が決定しましたのでお知らせです。

『チャオ! チャオ! パスタイオ 面倒な隣人とワタシとカルボナーラ』
2023/01/13 富士見L文庫より発売!

やっと皆さんにお知らせできるところまでたどり着いた~。

アマゾン他でweb予約はじまっ

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掌編小説『武蔵野サイクリング』

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 落葉樹の隙間から、初夏の日差しが肌を焼く。汗に濡れた肌を、土ぼこりを含んだ風が不快になでていった。
 自転車をこぎ始めて間もないというのに、もう息が上がっている。
「榎本さん、ペース落としてくださいよぉ……」
 息も絶え絶えに声をかけると、彼女はチラリと振り返って逆にペースを上げた。向こうはクロスバイク、こっちはママチャリ……とは言うものの、女性のこぐ自転車に着いていけないようでは、さすがに情け

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短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第06話/最終話 ワタシは花瓶。呪文のように言い聞かせる。

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第06話/最終話 ワタシは花瓶。呪文のように言い聞かせる。

 やがて男は鼻から舌先を離すと、ワタシをベッドの上で四つんばいにさせた。そして手の平ではなく、肘で体を支えるように命じた。結果ワタシは、高々とお尻を突き上げる格好で四つんばいになった。
 男は壁の鏡に頭を向けるように命令すると、自分は後方の椅子に座った。男の位置からだと、高くかかげたお尻の穴が丸見えになってしまう。そう思ったらお尻にむずがゆさを感じて思わず身をよじってしまった。
「動くなと言っただ

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短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第05話 ワタシとヤリたい?

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第05話 ワタシとヤリたい?

 黒く染まったカサブタがはがれ始める頃、サキが部屋に来てくれた。
 顔を合わせるのはもう、十日ぶりになるだろうか。ワタシたちはお互いのタトゥーを舐め合いながら、久しぶりに一つになった。
 肌の温もりは不思議だ。いつも感じている孤独や焦燥そして自己嫌悪が、肌を合わせているときだけは無くなってしまう。サキと肌を合わせている時のワタシは、きっとワタシじゃなくて、サキと混ざりあった別の存在としてそこに在る

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短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第04話 たわれるように舞う二匹のジャコウアゲハ

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 ひとしきり燃えたあと、シーツに包まってサキの腕に顔を埋める。
 首筋に回された彼女の細い左腕はとても手触りが良くて、いつまでも撫でていたくなってしまう。手首から肘へゆっくりと前腕の内側を撫でると、指先が微妙な凹凸をとらえる。その凹凸は彼女の腕に描かれた蝶のタトゥーで、この蝶をを撫でたり、頬ずりをしたり、キスをしたりするのが好きなのだ。
「サキのタトゥー、好き……」
「可愛いでしょ。お気に入りなん

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短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第03話 罵られるだけでイッてしまうイヤラシイ女

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第03話 罵られるだけでイッてしまうイヤラシイ女

 学食でお昼を済まし、午後の講義までの時間をどうやって潰そうかとぼんやり中庭を歩いていると、不意に背後から声をかけられた。
「モエ発見!」
「え? サキさん!?」
 唐突に肩を組まれて驚いてしまったのだけれど、相手がサキさんだと知って安堵した。同時に先日の軽音の部室での出来事がよみがえって赤面してしまう。
「さん付けとか堅苦しいな。呼びタメでいいよ」
 他人を呼び捨てにしたことなんてないワタシは、

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短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第02話 耳をつんざく攻撃的な音色

短編小説『わたしは花瓶。呪文のように言い聞かせる。』第02話 耳をつんざく攻撃的な音色

 講堂に続く廊下を、独り歩いている。
 みんなサークル活動に出払っているのだろうか、誰ともすれ違う事がない。講義が終わるといつもすぐに学校を出てしまうから、こんな時間に廊下を歩くのは久しぶりだ。慣れない雰囲気に戸惑ってしまう。
 廊下の窓の外に、大きな銀杏の木がある。夕日を浴びて金色に輝きながら、はらりはらりと葉を散らしている。風に吹かれて、何枚かの葉が窓から舞い込んできた。一枚を拾い上げ、指先で

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掌編小説『弱き者よ汝の名は女なり』

掌編小説『弱き者よ汝の名は女なり』

 鏡の前で呟きながら、右手の指先を顎に当てる。そして左手を右肘に添えて、思案に暮れるポーズをとってみる。
 ついでに小声で、「キリッ」と擬音も添える。斜めに構えて、上目づかい。鏡の中のワタシ、けっこう凛々しい……。

「行くべきか、行かざるべきか、それが問題だ」

 まてまて、ハムレット王子を気取ってみたところで答はでない。
 それにわたしゃハムレットなんかより、オムレットの方が好きだね。ふわっふ

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掌編小説『恋の始まりは晴れたり曇ったりの四月のようだ』

掌編小説『恋の始まりは晴れたり曇ったりの四月のようだ』

 不倫なんてまっぴらごめんだ。今だってまだ、そう思っている。
 けれども、好きになってしまったのだから仕方がない。燃え始めた恋の火を消す方法なんて、ワタシは知らない。障害が大きいほどに強く燃え上がるのが、恋の炎というものらしい。パッサパサに乾いていたワタシの恋心はきっと、音を立てて盛大に燃え上がることだろう。

 仕事から帰り、ジャケットも脱がずにベッドに倒れ込む。前のオトコと暮らしていた時は手狭

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からした火南とは……

からした火南とは……

 こんにちは、『たかなん』こと『からした火南』です。
 小説を書いいます。純文学を書くことが多かったけど、いまはエンタメ小説を書いてます。

 『チャオ!チャオ!パスタイオ』という小説で、第8回カクヨムWeb小説コンテスト・ライト文芸部門において、特別賞をいただきました。
 書籍版は、2024年01月13日 KADOKAWA富士見L文庫より発売です。

 主に『カクヨム』というカドカワが運営する投

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掌編小説『アタイを異世界へ連れてって』

掌編小説『アタイを異世界へ連れてって』

 ねぇねぇ、ちょっと聞いてくださいよ。
 なに? また愚痴かって? いや、まぁ、愚痴と言えば愚痴のようなモンなんですけどね……。いいからほら、座って、座って。
 えっと、何だったかな……そうそう、昨日ね、お仕事に出かけたんですよ、お仕事。
 何の仕事かって? わたしゃ死神ですからね。そりゃ、人の魂を抜くのがお仕事ですよ。
 えぇ、そりゃもう、できる死神ですからね。スッと魂を抜けば、コロッと死んじま

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