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スポーツと精神医学(6): 野球観戦をするとうつ病が改善する?〜日本の研究を紹介〜

皆様、こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です。

日本の国民的スポーツといえば、はやり「野球」ですよね。

小生はサッカーをTVで観るのが大好きですが、子供の頃はサッカーよりも野球ファンでした。

父が読売巨人軍の大ファンだったので、その影響で小生も父と一緒にジャイアンツを応援していました。

なぜ唐突に小生が野球の話をし始めたかと言うと、昨年末の大掃除にこんなものを見つけたからです…!

原辰徳選手のテレホンカードとメタル君

原辰徳元巨人軍監督の若かりし頃のテレホンカードです!

永遠の若大将」というニックネームで呼ばれた原元監督、やっぱり小生の中ではこのイメージですね。

しばらくその存在を忘れていたこのカードを見つけたのも何かの縁と感じ、今回のnote記事では「野球」をテーマにした興味深い論文を解説いたします。

プロ野球はシーズンオフ中ですが、皆様も野球盤をしながらこの記事を是非ご高覧ください(野球盤、知らない人が多いかな😅)!


↓野球盤とはこんな感じのゲームです(懐かしい!)


【研究紹介】

Effect of watching professional baseball at a stadium on health-related outcomes among Japanese older adults: A randomized controlled trial. Kawakami R et al., 2019

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31099167/


<目的>

野球場でのスポーツ観戦が高齢者の健康に好影響を及ぼすかを検討する。

<方法>

65~85歳の参加者計58名を観戦群(n=29)と待機リスト群(n=29)に無作為に割り付けた(ランダム化試験)。
2ヵ月の介入期間中に21試合が行われた。
観戦群は球場で試合を観戦し、待機リスト群(対照群)はいつも通りの日常生活を送った。
観戦群には、2016年4月5日から6月2日まで(シーズン前半)、西武プリンスドーム(現メットライフドーム)でプロ野球の試合を無料で観戦してもらった。
この期間中、21試合が開催された。
参加者は月に最低2試合は観戦するよう指示されたが、制限なく好きなときに観戦するよう伝えられた。

尚、参加者の条件は以下の通り…。

1.介護者を必要としないこと、
2.野球観戦に介助を必要としないこと、
3.世帯内に他の参加者がいないこと、
4.認知症またはうつ病の診断を受けていないこと、
5.過去3年間に3回以上スポーツ観戦のためにスタジアムに行ったことがないこと、
6.週3日以上1日2時間以上の仕事やボランティアをしていないこと、
7.埼玉西武ライオンズのファンクラブに入会していないこと

健康関連のアウトカムは、実行機能と認知機能、健康関連QOL、うつ症状、主観的幸福感、身体活動であった。

<結果>

観戦者群では、待機リスト群と比較して抑うつ症状が有意に減少した(P = 0.016)。

<結論>

球場での定期的なプロ野球観戦は、高齢者の抑うつ症状を軽減するかも知れない。


【鹿冶の考察】

野球観戦のために定期的に球場に行くと、高齢者のうつ症状が改善する…!

なんとも素敵な結果ですね。

野球観戦でうつ症状が改善する理由として筆者らは、「熟練したアスリートのパフォーマンスを見ることは、観客の興奮や幸福感を高め、不安感を抑制するため」と考察しております。

確かに一流アスリート達のプレイを間近で見ればそのパフォーマンスに驚嘆し、興奮の坩堝とした球場の雰囲気に飲み込まれ一体感と幸福感を生む…!

さあ老後にみんなで野球場(ボールパーク)へ行こう!...と思った方、ちょっとまった!

いつものパターンですが、ここで本論文を批判的に考察したいと思います。


<本当に野球観戦の効果なのか?>

身体的に衰えを見せる高齢者が、歳と共に次第に外出する回数が減っていくのは明白ですよね?

そして外出機会が減ればメンタル的に悪くなるのも当然です。

要するに別に「野球観戦」でなくとも、とにかく外出する機会を増やせばメンタルヘルスを向上させるのでは…と思えるのですが、この点に関しては筆者達も否定はできていないようです。

「野球観戦」と「外出」を区別してその効果を見るのであれば、対象群として「定期的に外出する」群ももうけて3群で比較するべきと思います。


<実は野球観戦では幸福感は上がらない?>

詳細は省きますが、実はこの研究では「主観的幸福感」も調べております。

しかし、これについては野球観戦した群と非観戦群 (待機群)では有意差はなかったそうです。

…となると、筆者らの「幸福感により不安感を抑制する」という考察は間違っているような気がします。

しかし、この研究で主観的幸福感が増えなかった理由が実はあります!

それはこの研究を実施した2016年はライオンズは4位と低迷したことが原因ではないでしょうか…。

しかも研究対象となったか4月5日-6月2日におけるライオンズの成績は20勝24敗2分…、

このような成績では幸福感は上がらないですよね😅

要するにチームの勝ち負けによってメンタルは良い方にも悪い方にも影響する可能性があるのです。


<スポーツ観戦はメンタルに効果なし?>

なんだかここまで書くと、「野球観戦はメンタルに効果がない?」と感じる方もいるかもしれませんが、それは誤解です。

小生が言いたいのは「この論文では野球観戦自体がメンタルによいとは証明できない」ということなのです。

おそらくこの点はこの筆者らもわかっており、ディスカッションにおいても結局スポーツ観戦は被験者の生活空間(移動距離、外出頻度)を広げ、この生活空間の広がりが高齢者にプラスに働いた…、と述べております。

ということでスポーツ観戦自体がメンタルケアに無効という意味では決してありません。

高齢者のメンタルヘルス維持のためには、スポーツ観戦を含め行動範囲を広げることが重要」ということを再度アピールしたいと思います!


<原辰徳選手のテレホンカードと亡き父>

ところで小生が原辰徳選手のテレカを持っていることから、「さぞ鹿冶は原辰徳の大ファンなんだろう」とお思いかも知れませんが、実はあまり原辰徳選手には思い入れはありません(原選手ファンの方すみません)😅

小生はどちらかと言えば、中畑清選手やウォーレン・クロマティ選手のような明るく元気な選手が好きでした。

じゃぁ、何故テレカを持っているのか…?

このテレカは亡き父が知人から譲り受け、それを小生にくれたものです。

父親も別に原辰徳選手のファンではなかったのですが、なぜわざわざ譲り受けそれを小生に与えたのでしょうか…?

今となっては、テレホンカードが小生の手元にある理由を知る術はありません。

テレカに映っている原選手もちょっと困った顔をしているように見えてきました😅


【まとめ】

・野球観戦が高齢者のメンタルヘルスに影響するかを検討した研究をご紹介しました。
RCTの結果、野球観戦は高齢者のうつ症状を軽減することがわかりました。
しかし、この効果は野球観戦そのものではなく、被験者の生活空間が広がることによって生じている可能性が高いと感じます。
野球観戦だけでなく、外に出ることは高齢者の健康維持には有用です!
でも、せっかく外出するのであれば自分の応援するもののために出かけた方が継続できるかも知れませんね(いわゆる”推し活"による外出でもokと思います)。
手に入れた経緯は不明ですが、原辰徳選手のテレホンカード、大切にしたいと思います!

【参考文献など】

Effect of watching professional baseball at a stadium on health-related outcomes among Japanese older adults: A randomized controlled trial, 2019


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